News:アンカーデスク | 2003年6月16日 03:22 PM 更新 |
(前号からの続き)
で、結局筆者はどうしたかというと、バイオのデスクトップ、PCV-RZ62を買ったのである。もちろんSonicStage Mastering Studio(以下SMS)を使うためにだ。
EDIROLのUSBオーディオインタフェース「UA-5」は、ソニーの宮崎さんのインタビューの帰りに、新宿はピックカメラで最後に残っていた1個を“瞬間ゲット”。死なばもろともというか(違います)、毒を食らわば皿までというか、破滅の道へまっしぐらという気がしないでもない。
実は筆者、メーカー製のデスクトップPCを買うのはこれが初めてである。MacやAmigaはメーカー製しかあり得なかったのだが、ことWindowsマシンに関しては、一番はじめから自作して、それから今まで延々7〜8台は自作してきた。
もちろん今回の購入は、現在のメインマシンがCG仕事などをやるには少々力不足になってきたのでそろそろ新しいマシンを、と計画していた背景はある。しかし最近は自作のためのパーツ情報を集めるのがおっくうになってきており、またNECから水冷式の静音モデル「VALUESTAR TX」が出たので、こっそり121wareで見積もりを取ったりもしていたのである(理由はこのコラム参照)。
自作派がメーカー製PCに興味を持つかどうかは、自作じゃ無理っぽいアーキテクチャーを持っているかどうかは大きなポイントだ。確かに水冷式は自作用にもキットが売られているが、これはどちらかというとクロックアップ時の発熱対策あるいは“人柱”という側面が強く、その技術を静音化に応用するという方向性ではない。
筆者は以前からデスクトップPCの騒音を問題にしており、これを水冷技術で成し遂げたVALUESTAR TXには、少なからぬ興味を抱いていた。
しかしSMSの存在が、それを押さえてバイオ購入の決定打となった。
そして現在、SMSのクオリティーを思う存分堪能している。「一日一マスタリング」と大書して飾りたいぐらいである。今なら額に彫られても、あんまり怒らないかもしれない。楽しい、楽しいッスよ、宮崎さん! これは“本体ごと”買っても、全然悔いのないソフトだ。
何がそんなに楽しいのか
若い頃というのは、だいたい誰しもお金がないものだ。若い頃から現在に至るまでお金がないケースもあるが、まあ比較の問題である。そんな若い頃に聴いた音楽というのは、オーディオ装置に大したお金をかけられるわけもなく、せいぜいラジカセか、良くてミニコンポ止まりだったろう。
しかし若さとはめげないもので、音が悪い分を「きっとこんな音なんだろうな」と想像力で補完していたようなところがある。そしてそれからウン十年経過した今では、その補完部分が頭の中で相当美化されており、あらためてCDを買い直して聴いたりすると「あれ? こんなショボかったっけ?」と思うこともしばしばだ。
またオーディオ装置のせいではなく、本当に元から音が悪いというケースもある。ジャズやクラシックと違って、特に70年代頃のロックでは、HiFiであることが“マスト”ではなかった。
筆者の体験した例では、GENESISの「A Trick of the Tail」以前とか、TOTO「宇宙の騎士」とか、KANSAS「暗黒への曳航」といったアルバムは、作品としては名盤だが、今冷静に聞き比べてみると、録音状態は同じ時代の他のものよりも劣っていると感じる。
この場合は単に音が悪いといっても、その実態はいろいろである。言葉通りS/Nが悪いものもあれば、低音・高音の不足、ダイナミックレンジの不足なども、音が悪いという表現の範囲に属するものだろう。
[小寺信良, ITmedia]
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