News 2003年7月15日 09:13 PM 更新

“プロジェクタWOOO”作戦始動――日立、ホームシアター向け本格参入第一弾

日立製作所が、家庭向け液晶プロジェクタの新製品を発表。プラズマTVに代表される映像機器ブランド“WOOO”を冠し、開拓途上のホームシアター市場に本格参入する。

 家庭向けで国内トップシェアを誇る「プラズマTV」をはじめ、「液晶TV」「DVDカム」など家庭用高画質映像機器に冠されてきた“WOOO”ブランドが、今度は「プロジェクタ」へとラインアップを広げた。

 日立製作所は7月15日、静音性や設置性を重視した家庭向け液晶プロジェクタ「“WOOO”PJ-TX10J」を発表。ホームシアター市場に本格参入した。業界初の2倍ズームレンズを搭載し、家庭内での設置自由度を向上させている。8月下旬から発売し、価格は22万円。


家庭向け液晶プロジェクタ「“WOOO”PJ-TX10J」

 “プロジェクタWOOO”の第一弾となるPJ-TX10Jは、「投写性能」「機能面」「設置・配線」を大幅に改善している。これは、同社調査による家庭用プロジェクタに対しての不満点の上位にきているものだ。

 すでに家具などが置かれており、プロジェクタ設置スペースの確保が難しいリビングなどで利用されることの多い家庭向けでは、業務用以上に設置の自由度が求められる。同社は家庭用にも使える小型液晶プロジェクタ向けの機能として、2000年に業界初の短焦点レンズを、2002年には業界初のフレキシブル1.5倍ズームレンズを搭載するなど、独自光学技術を生かしてプロジェクタの設置自由度を向上させてきた。

 PJ-TX10Jでは、新たな光学技術として光学2倍ズームレンズを業界で初めて搭載。同社お得意の短焦点レンズとの組み合わせで、80インチの大画面で最短2.1メートルから最長4.2メートルまで、設置スペースに合わせた幅広い投写距離を自由に選択できる。


短焦点&2倍ズームレンズによって、幅広いスペースで同じ大画面を楽しめる

 「個室利用で一番多い80インチ画面の場合、他社の短焦点モデルでは2.4〜2.9メートルという非常に狭い範囲でしか設置できない。また、長焦点モデルでも3.1〜3.9メートルと1メートル弱の自由度しかなく、長焦点ゆえに狭い部屋には置きづらい。新製品では2倍ズームの短焦点レンズを搭載することで、2メートル以上の設置自由度を確保。4畳半から12畳以上まで幅広いスペースで80インチの大画面を楽しめる。また投写距離を変えずに、画面面積の1〜4倍までの拡大や1〜1/4の縮小も可能」(同社)

 また、光学式の「レンズシフト機能」を搭載し、スクリーンに対しての上下左右のずれを補正できる。本体のレンズ横に装備されているダイヤルを調整することで、垂直方向で上下1画面分、水平方向でスクリーン中心から1/2画面分の画面移動が可能。レンズを直接シフトさせる光学式なので、電子回路による台形歪み補正に比べて画質劣化もほとんどない。


レンズ横のダイヤルを調整することで、光学的に画面のズレを補正できる「レンズ補正機能」

映像に集中できる“人のささやき”以下の静音性

 PJ-TX10Jのサイズは、350(幅)×121(高さ)×285(奥行き)ミリと、手のひらに乗るA5サイズまで登場している近年の超小型データプロジェクタから比べるとやや大きめ。だがこれも、家庭向け製品には不可欠な「静音性」を極限まで追求した上でのサイズなのだ。

 PJ-TX10Jには、大風量の大型ファンを使った新冷却システムを採用し、ファンノイズを大幅に削減。“静音モデル”とうたう他社製品が35デシベル前後なのに比べて、人のささやきレベル(30デシベル)を下回る25デシベル(静音化モード時、輝度20%減)にまでノイズを抑えたほか、通常モードでも28デシベルとクラス最高水準の静音性を確保している。排気は、前面排気方式を採用。


大風量ファンを使った新冷却システムで、人のささやきレベル以下の静音性を実現。排気は、前面排気方式を採用

 そのほか、1/60秒ですべての走査線を送るプログレッシブ(順次走査)表示が行える「プログレッシブLSI」を採用したほか、24フレーム/秒の映画ソースを60フィールド(30フレーム×2)のNTSC信号でスムーズに再現する「フィルムモード」や、映像ノイズを低減する「3次元Y/C分離回路」など、動画を高画質で楽しむための機能を数多く搭載した。


PJ-TX10Jの背面部

LCOS採用は来年発売モデルから

 液晶パネルは高開口率の3原色透過型ポリシリコンTFT0.55インチワイドVGAパネル(16対9、解像度854×480ピクセル)を採用。輝度は700ANSIルーメンでコントラスト比は800対1となる。

 「明るい部屋でのプレゼンテーションなど利用シーンが異なるデータプロジェクタではより高輝度が要求されるが、暗所で映画を楽しむといった利用が多い家庭向けでは、輝度よりも色再現性や動画性能が重要。今回の新製品で使っている光源も、もともとは1200ANSIルーメンの実力があるものだが、その余力を色再現向上にまわしている」(同社)

 今回の新製品では、液晶パネルに同社独自の反射型液晶デバイス「LCOS(Liquid Crystal on Silicon)」は採用されなかった。高開口率/高解像度/高コントラスト/高速応答性と、継ぎ目のない滑らかな映像がLCOSの特徴だが、まだ液晶パネル自体が高価で、現在は「CP-SX5600J」(89万8000円)などハイエンド向けの採用にとどまっている。

 「液晶プロジェクタのWOOOシリーズとして、今年から来年にかけて計3モデル以上をラインアップしていく予定。普及タイプの今回製品に続いて、来年初頭に高機能タイプを発表し、その次にハイエンド向けとしてLCOS採用モデルを予定している」(同社)


PJ-TX10Jには、ユーザー設定をワンボタンで指定できるマイメモリーボタンなどを備えた使いやすいリモコンを標準装備

 60インチクラスの低価格なスクリーンと組み合わせれば、実売で20万円を切る価格でプラズマTVを上回る大画面のホームシアターシステムが構築できる。設置の自由度も向上し、ファンノイズも大幅に低減されるなど、家庭向け機能も充実した。「休みの日に大画面でDVDの映画を思いっきり楽しみたい“週末ホームシアター派”」などには、プラズマTVの半分以下で購入できる今回の新製品は有望な選択肢の一つになりそうだ。

関連記事
▼ 日立、家庭用液晶プロジェクタに参入
▼ 10万円切る家庭向け製品の布石?――エプソン、低価格データプロジェクタ
▼ エプソン、液晶プロジェクタ新製品2機種を発表――ホームシアター市場に本格参入

関連リンク
▼ 日立製作所
▼ 日立AV WORLD

[西坂真人, ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.