News:アンカーデスク 2003年7月18日 09:13 PM 更新

忘れていたもう一つのセキュリティ(2/2)


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 不動産といえばマンションなどは数千万円の商売だが、そういうもののとっかかりを飛び込みの電話一本で済まそうとは、ずいぶん虫のいい話だ。だがそういうスタイルがいつまでもなくならないところを見ると、それなりに効果があるのだろう。どのようなルートで名前と番号が漏えいしたのか知る術はないが、相手はもはや間違い電話ではないのでかなりしつこいし、同時に社会的に見て良質な相手とは言えない。

 このような場合に、どのような自衛手段があるだろうか。とりあえず思いついたところから少しずつ実行してみることにした。今まで使っていた電話機は、単に留守番電話が付いている程度のものだったので、これをナンバーディスプレイ対応機種に変更してみることにした。

 調べてみると、ISDN回線ではそれ対応のTAを用意しなければならないことがわかった。数年前ならともかく、今どきTAなどは種類も少ない。NTT東日本のINSメイトシリーズがいくつかと、NTT-MEのMN128mini-SV1、それからNECのAtermシリーズの一部が対応している。

 また昨年7月からナンバーディスプレイのオプションとして「ネームディスプレイ」というサービスも始まっている。これは相手の電話番号だけでなく、登録されている名前も同時に表示する機能だ。

 ナンバーディスプレイだけでは、番号と名前を一致させるために、電話機の電話帳に番号を登録しておかなければならない。また特定番号の着信拒否はTAでも電話機でも設定できるが、それには一度電話を受けて、拒否すべき相手なのかを確認する必要がある。これはまことにウンザリする作業だ。

 しかしネームディスプレイならそういった手間も省けるだろうと思い、いっそのことその方向で動いてみることにした。意を決してTAと電話を購入し、116番にネームディスプレイサービスに申し込むと、およそ1〜2時間程度で使えるようになった。

 だがそれから1〜2日で、世の中そう甘い話はないことを思い知らされることになる。

抜本的な対策はない?

 ネームディスプレイの設定後、何本かの電話を受けたが、電話番号は表示されるものの、名前は全然出てこない。設定がされていないのかと思ってNTTに問い合わせてみたところ、番号が表示されるのには条件があるのだという。

 まず基本的に、個人名で登録されている一般加入電話は、デフォルトでは名前を出さないようになっている。例えば事業として使っている電話番号であっても、電話回線の登録が個人名であれば、名前が出ないのである。勝手に個人名と電話番号がセットでどこへでも表示されるのは問題がある訳だから、これはまあ当然の措置だろう。

 大きな会社では、各部署や各個人ごとに固有の電話番号を持っていると思うが、そういったものはいちいち発信者名通知の登録がされていないので、番号は出るものの名前が出ない。さらに携帯電話やPHSなどからの通話も、もともとそういうサービスの対象外なので、番号だけである。そうやって条件をつぶしていくと、もう名前が出る方が少ないんじゃないかとすら思える。

 名前が出るのは、事業者名で登録している回線だ。それもサービス開始時点に封書などで案内を送付し、名前を出すことに同意しているところに限られるという。一般加入電話で名前を出すようにするには、116番へ電話して、発信者名通知するように要請する必要がある。現在名前を出す手続きは電話1本で済み、料金などはかからない。また、どんな名前を出すかは自由に選択できる。

 このシステムは、ちゃんと働けばそれなりに便利なんだろうが、現状では迷惑電話対策としてどれぐらい効果があるのかまったくわからない。まあ追加サービス料金は月100円なので、どうなるかもう少し様子を見ることにする。とにかく、セールスなどの迷惑電話に対して取れる対策は、あまりにも少ない。またその対策機能がNTTにとっては一種の商品となっているという事実にも、ウンザリさせられる。

 電話による勧誘は、1996年の訪問販売法改正により、ある程度規制が行なわれている。例えば一度断わった人への再勧誘も禁止行為の一つで、違反すれば1年以内の電話勧誘販売に関する業務停止という罰則がある。

 とりあえずナンバーディスプレイの加入により、相手の番号は分かるようになった。一消費者が違法な電話セールスに対して、もう少し積極的な対策を行なうにはどうしたらいいか、これからゆっくり調べていくことにする。

小寺信良氏は映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。



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[小寺信良, ITmedia]

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