News 2003年9月11日 01:10 AM 更新

ミューチップや格安“異星人”ICタグ――「5円チップ」が見えてきたRFID(2/2)


前のページ

 Coil-on-Chipは、同社独自の「ス−パ−EF2 (Electro Fine Forming)」技術によって、2.5ミリ角のチップ表面にアンテナを一体形成したRFIDチップだ。半導体ウェハーにメッキ技術で直接アンテナを形成する点は同じだが、ミューチップが“金”なのに対してCoil-on-Chipは“銅”でメッキする点が異なる。

 「シリコンと銅は化学反応で相反するため、半導体の製造工程で銅を使うのはタブーとされていた。半導体のプロではないメディアメーカーである我々だからできた発想。銅メッキ技術自体は、グループ会社で作っているロータリーシェーバーの外刃を加工する技術を応用した」(同社)


6インチウェハーに一体形成されたCoil-on-Chip。半導体製造ではタブーの銅メッキを採用できたのも同社ならでは

 ミューチップと同様に、アンテナ一体形成によるコストメリットや耐久性が特徴だが、読み出し専用のミューチップと違い、最大10万回の書き換えにも対応する。書き換え可能で耐久性に優れた点が評価され、セガの業務用ゲーム機などアミューズメント機器向けにCoil-on-Chip搭載カードが採用されている。


セガのアミューズメント機器向けにCoil-on-Chip搭載カードが採用

 8月に発表されたばかりの大容量タイプCoil-on-Chip「ME-Y2000シリーズ」は、従来容量(128バイト)の32倍にあたる8Kバイトの大容量メモリーを搭載。半導体プロセスの微細化によって、チップサイズは従来品と同じ2.5ミリ角に収めた。

 「大容量化によって、例えばゲーム用カードでは、従来サーバ側で管理していた対戦履歴などもチップそのもので管理できるほか、ユーザーの個別情報もカード内に取り込むことも可能。カードそのものが進化していき、トレーディングカードとしての価値も出てくる」(同社)

 アンテナ外付けタイプに比べて約半分のコストとチップ自体も安いのだが、リーダー/ライターも独自の自社チップに特化したものなので、専用設計によって安い部品を使えるため、世界規格に準拠したRFIDリーダー/ライターと比べて機器コストも1/3になる点も強みだ。

「5セントRFID」で世界市場を狙う“異星人”

 ミューチップやCoil-on-Chipとは少し違うアプローチで“5セント(5〜6円)RFID”を狙うのが、米国Alien Technologyだ。同社国内総代理店の東レインターナショナルのブースでは、米国発“異星人”の最新技術が紹介されていた。

 Alien社はRFIDチップの低コスト化を、独自の製造技術で成し遂げている。

 従来、半導体ウェハーからICチップを切り離すのにはダイシング手法が使われていたが、Alien社ではチップ間の切断幅をより少なくできるエッチング手法を採用。これにより、数百マイクロメートル角の微小なICチップがダイシング手法よりも数多く取得できるほか、ピラミッド状にチップが形成される点がその後の高速実装のポイントとなる。

 FSA(Fluidic Self Assembly)と呼ばれる同社の独自工法は、この微小チップをエンボスフィルムの凹みへ液体とともに大量に流し込むことで、フィルム基板上に高速に連続実装することができるのだ。凹みに入らなかったチップは回収されて再び流し込まれるため、チップロスもない。

 1個ずつチップを実装していく従来工法(フリップチップ)では秒間2〜3個程度が実装速度の限界だったが、FSAでは秒間30〜40個の実装が行えるという。


液体とともにチップを流し込むことで、秒間30〜40個の実装が行えるFSA(Fluidic Self Assembly)

 そのほか、ICチップを実装したフィルムに電極をスクリーン印刷する「ストラップ工法」や、紙ベースにアンテナを印刷してストラップを貼り付ける「ソースタギング」といった製造手法によって、低コスト化を行っている。

 「生産量が年間数百億個レベルに達すれば“5セントRFID”も十分可能。すでにAUTO ID Centerのクラス1タグ認定を取得しているほか、さまざまな周波数に対応しており、全世界展開によるスケールメリットによってコストダウンのめどは立っている。64ビットメモリーは1000回の書き換えが可能なので、サプライチェーンなどで繰り返し使うことで、1回あたり数銭〜数十銭という超低コストで利用することもできる」(同社)


ブースでは、RFIDチップ搭載カードを来場者に“タダ”で配って低コストをアピール

関連記事
▼ “金のアンテナ”内蔵がもたらす大きな未来――日立「新ミューチップ」
▼ 実用段階にきた粉末状のICチップ
▼ 君は本物の君?体を張った自動認識

関連リンク
▼ 自動認識総合展

[西坂真人, ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページ | 2/2 | 最初のページ