News 2003年10月31日 09:48 PM 更新

Auto-IDのセキュリティスタンスが来週発表される見込み

NETWORKERS 2003で導入された来場者入退場システムの説明で登場したAuto-ID Centerボードメンバーは、セキュリティに関するAuto-IDのスタンスをまとめたドキュメントが来週にも公表される可能性を明らかにした。

 10月29日から31日にかけて行われた「NETWORKERS 2003」。その来場者の受付案内システムとして導入されたのが、Auto-ID Centerの協力をうけてPowerPlayが開発したRFID利用の入退場管理システム。

 31日には会場で、このシステムの紹介とデモンストレーションが行われたが、その説明役として登場したのが、Auto-ID Centerのボードメンバーの中村修慶応義塾大学助教授だ。


NETWORKERS 2003の会場受付に設けられた、来訪者カード受け渡しカウンター。事前登録をしている来場者には、ここでRFIDタグを組み込んだカードが渡されて、セミナー会場やスケジュールなどの案内サービスを利用できるようになる。カードの説明を行っているのが慶応義塾大学助教授の中村修氏


セミナー会場入り口に設けられた、受講者受付の管理システム。カードのタグから受講者を識別、ネットワーク上のホストPCにあるデータベースに対して受講予約の確認と受付済みの入力が行われる


参照データを外部のマシンに持たせるAuto-IDでは、ローカルマシンに大きなストレージを必要としない。そのため、このような無線LANアダプタとPDAの組み合わせでも、立派なAuto-ID端末として利用できる


会場に設けられたスケジュール案内システム。RFIDから、利用している来場者の名前をチェック。その名前から登録しているセミナーと開始時間、今いる場所からセミナー会場までの道順を表示している

 奇しくも「Auto-ID Center最後の日」(11月1日からEPC Globalが立ち上がり、Auto-ID CenterはAuto-ID Labsに改編される)に、Auto-IDシステムを紹介することになった中村助教授。

 EPC Globalの業務概要と目的については、10月27日に記者発表が行われているが、きょうのシステム説明の時間でも、EPC Globalの説明が行われた。

 Auto-IDがRFIDで利用するコード体系の全世界的な策定や調整は、今後、全世界的組織であるEPC Globalが行うことになっている。EPC Globalは欧州を中心に活動を行っている国際EAN協会と、北米を中心に活動を行っているUCC(Uniformed Code Council)が協同で運営する非営利団体。

 中村氏は、EANとUCCによる協同運営のメリットとして「これまでのコード策定では、欧州のEANと北米のUCCがことあるごとに対立してきた。しかし、この両者が手を組んだEPC Globalなら、全世界的なコード体系をスムーズに策定できるだろう」と語っている。

 27日に行われたEPC Globalの記者発表会に出席した経済産業省の新原浩朗氏は「早急に日本発のコード体系をまとめて、世界標準の規格として公開すべし」と発言している。これは「日本がコード体系を作り上げて国際標準として広めよう」というメッセージに取れなくもない。

 コード体系におけるEPC Globalと日本の関係について、中村氏の説明では「EPC Globalによる、ワールドワイドのコード体系策定活動の枠組みに、当然日本も入っていく。その枠組みの中で協調しながら決定していくことになるだろう。そこで決定したコードにしたがって、各国のローカルコードが策定されるようになる」となっている。

 ただし、日本国内におけるIDコード発行作業については、「流通システム開発センターがIDを発行することになないだろう。EPC Globalが提供するIDを使うようになると思うが、実際に誰がIDが発行するのか、ということはまだ決定していない」(中村氏)。

 なお、RFIDでEPC Globalを中心となって発行するID以外に、ユーザーがローカルで独自に利用できるコード枠について、中村氏は「仕様を論議する過程で、プライベートIDの必要性が意識されるようになってきた。現在、その枠組みに関して可能かどうか検討をしている段階である」と述べている。

 Auto-IDのもう一つの懸案が、消費者団体からRFIDの最も重要な問題として指摘されている、プライベート保護セキュリティ対策だ。

 もともとAuto-ID開発のスタート段階において、利用局面は流通段階における商品管理に限られていた。ID情報も小売段階でKILLコマンドを使って消去することになっていたのだが、マーケティング業界から、アフターセール段階でも活用できるように要望があってから、にわかにAuto-IDでもプライベート情報の保護に目を向けるようになった。

 「それがセキュリティの立ち遅れの原因になっている」と中村氏が述べるように、Auto-ID内部でもセキュリティは重要な問題として認識されている。しかし、「1〜2年での実用化開始」という主張にもかかわらず、27日の記者発表でも具体的な対策については、なにも明らかにされていない。

 この指摘に対して、中村氏は「現在、内部で作業を進めている」と発言。すでに、セキュリティの具体策をまとめたAuto-IDの「セキュリティスタンス」に関するドキュメントがEPC Globalから各国のAuto-ID関連スタッフに配布され、現在ローカライズ作業を行っていることを明らかにした。詳細は言及しなかったが、来週中にも内容を公開する可能性を中村氏は示唆している。

 同じRFIDを利用するユビキタスIDセンターについて、中村氏は、両者の相違や長所短所についても言及している。

 「高機能化させて、チップをPCのように使うのがユビキタスIDセンター。Auto-IDはチップをとにかく安くするために、チップでできることはシンプルに抑えている。複雑なことはネットワークで接続しているホストのデータを利用すればいい」(中村氏)

 ただし、ユビキタスIDセンター方式が、センサーを利用した「環境認識」でシステム制御を行う機能をサポートしているのについては、「アフターセールを意識したAuto-IDでもセンサーを取り入れたシステム制御を意識している」とする方針も中村氏は示している。

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[長浜和也, ITmedia]

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