News 2003年11月13日 10:23 PM 更新

2004年は“電子書籍元年”に? ソニーが本格参入

ソニー系新会社が来春に電子書籍配信をスタート。松下も同分野への参入を表明しており、限定的にとどまっていた電子書籍も来年は動きが活発化しそうだ。

 電子書籍の周辺があわただしくなってきた。ソニーと大手出版・印刷会社ら15社が2004年春から電子書籍配信サービスを本格的にスタートすることを発表(関連記事を参照)。閲覧期間を制限する「レンタル方式」を採用することで、これまで普及のネックになっていた割高感をクリアする。松下電器産業も同分野への本格参入を表明しており、2004年は本格的な電子書籍元年になるかもしれない。


出資社の代表者。前列右端がパブリッシングリンク社長に就任した松田哲夫・筑摩書房専務、左から3番目がソニー常務の野副正行氏


松田社長は「本とコンピュータ」創刊に関わった。「本とデジタルコンテンツとの融合を考えてきた経験を生かしたい」

“レンタル”で安価に

 ソニーや講談社、新潮社などが設立した「パブリッシングリンク」は来春にポータルサイト「Timebook Town」を開設し、電子書籍配信を本格的にスタートする。

 サービスメニューは「Timebook Library」と「Timebook Club」の2種類。Timebook Libraryは好みの本を1冊ずつ閲覧できる通常サービス。Timebook Clubでは「文芸」「ビジネス」「新書」などカテゴリーごとに固定料金制の会員制クラブを設け、サイトが推薦する毎月5冊程度の書籍を閲覧できる。新作や書き下ろし作品の配信も計画している。

 利用にはそれぞれのサービス料金に加え、同社サービスのポータルサイトの月額会費が必要となる。

 ユニークなのは、従来の電子書籍で一般的な“1冊いくら”のダウンロード購入方式ではなく、閲覧期限を定めた“レンタル”方式を採用した点だ。Timebook Libraryの閲覧期間は2カ月間。料金詳細は未定だが、「レンタル方式を採用することで、従来のダウロード購入方式よりも安価にできる」(新会社の松田哲夫社長)。

 電子書籍は印刷や取り次ぎが不要になるため、リアルの書籍に比べ安価にできるのが売り。ただ「思ったより高い」という割高感が普及のネックになっていた。新サービスは料金を安価にすることで潜在需要を喚起したい考えだ。初年度に3万人、3年目までに10万人の会員を獲得し、3年目の単年黒字化を目指す。

「電子ブックの全フォーマットに対応」


参考出展されたPC用ビューワー

 電子書籍のフォーマットには、ソニーが開発した「BBeB」を採用する。XMLを活用することで画面展開も多彩にでき、テキストの音声読み上げなども容易に可能だという。著作権保護技術はソニーの「OpenMG」を導入。閲覧する機器をあらかじめ登録することで不正コピーなどをブロックする。

 専用ビューワーや端末向けだけでなく、先行する他形式のコンテンツも幅広く扱う方針だ。各種形式への変換作業も請け負い、出版社が複数形式に対応する手間とコストを減らす。

 同社の設立メンバーには、書籍のCD-ROM化などに取り組んできた新潮社ら大手出版社や全国紙2社などが名を連ねる。さらにコンテンツ企業に広く参加を呼び掛けており、出資社以外の大手出版社とも配信契約を結んでいるという。9月に発足した「電子書籍ビジネスコンソーシアム」の参加出版社からもコンテンツ提供を受ける予定があるといい、「あくまでオープンな電子書籍会社」(松田社長)だと強調する。

ソニーは電子ペーパー装備の専用端末を開発

 ソニーは新サービスに対応した携帯型電子書籍閲覧端末をサービスと同時に発売する予定。11月13日に都内で開かれた発表会に端末を参考出展した。


 端末の本体サイズは四六判ハードカバー本とほぼ同じで、「本の感覚で持てるものにする」(ソニーの野副正行常務)。ディスプレイ部は文庫本サイズ。モノクロ電子ペーパー(記憶型液晶)を採用し、高コントラスト比と広視野角が特徴だ。

 電子ペーパーの方式は明らかにしていないが、新会社設立に参加している凸版印刷は米E-Inkと共同で「マイクロカプセル型電気泳動方式」の電子ペーパー開発に取り組んでいる(関連記事を参照)。

 メモリースティックスロットを備え、コンテンツはメモリースティックかPCとのUSB接続経由でセットする。音声出力端子も装備した。製品版の詳細な仕様や価格は未定だとしている。

 当初はモノクロ静止画のみとなるが、将来はカラー化や動画・音声コンテンツの提供も予定。携帯電話やPDA向けコンテンツの提供も視野に入れている。


ページ繰りボタンや電源ボタンは左部と下部2カ所に配置。さらに左部には文字サイズ、入力モード、変換、登録ボタン(辞書用か?)を、下部には本棚、辞書、メニュー、戻る、決定ボタンとジョグダイヤルを備える。ローマ字とひらがな、数字に対応したキーボードも搭載している


下から見た様子。厚さは2センチを切ると見られる。左からDC IN、ヘッドホン端子、音量調節ボタン、スタンバイ機能付き電源ボタンを搭載。この角度からでも文字がよく見え、視野角は「180度に近い」(説明員)


メモリースティックスロットを右上に備える

本格普及の兆しが見えてきた?

 電子書籍分野では、松下電器産業が配信事業に本格参入(関連記事を参照)。早くから電子書籍に取り組んできたイーブックイニシアティブジャパンや東芝らと「電子書籍ビジネスコンソーシアム」を9月に設立した(関連記事を参照)。

 松下は当面、独自形式とイーブック方式の2種類を採用する。ソニー系新会社との互換性はなく、両者とも「オープン」を強調しつつ、デファクトスタンダードをめぐる駆け引きが本格化しそうだ。さらに松下の専用端末「ΣBook」はSDメモリーカードを採用しており、電子書籍端末にメモリカード標準争いが同分野に飛び火してくる。

 フォーマットの乱立が普及にブレーキをかける懸念もある一方で、大手企業が本腰を入れることで端末価格の低価格化やコンテンツラインアップの充実が進んで一般ユーザーへの浸透に弾みがつく可能性もある。いまだ限定的な普及にとどまる電子書籍だが、出版不況の活路を探る出版社側の思惑も絡み、2004年は電子書籍をめぐる動きが活発になりそうだ。



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関連リンク
▼ ソニーのニュースリリース

[岡田有花, ITmedia]

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