News 2003年12月19日 11:57 PM 更新

バイオノート505エクストリーム「モック物語」(2/2)


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 この時点で、キーボードを手前に配置したモックと、キーボードを奥に配置した従来タイプモックの2パターンをデザイナーの森澤氏に提示。それをうけて、森澤氏がデザインモックを作成したわけだが、「すでに、その時点でキーボードが手前にあるモックしか出てこなかった」(辛島氏)と、森澤氏が考案したデザインモックの段階で、基本的なレイアウトとサイズがほぼ確定している。

 キーボードの手前配置のほかにも、森澤氏のキーコンセプトである「筐体と一体化したキーボード」を表現するボタン形状のキートップもデザインモックには盛り込まれている。この段階では、キーボード部分で筐体に段差を設けるなど、「一体化したキーボード」をよりはっきりと表現するためのデザインも採用されている。

 なお、この段差は「液晶パネルを閉じたときに隙間が空いてしまって、内部のキーボードが“歯”のように見えてしまうため」(辛島氏)製品版では廃止されてしまう。

 このモックが森澤氏から出てきたとき、設計陣の反応は「ボタン形状のキーボードデザインは、ユーザーに不評ではないかと心配だった」(辛島氏)という。

 「過去に同様なキーボードを採用したPCの実績や、たまたま設計者の家族が所有していたキッズ用PCのキーボードがボタン形状だったこともあって、最初は非常に不安だった。不思議なもので、見た目の印象がキータッチの感触にも影響してしまう」(辛島氏)ということで、キーボードにまつわる不安はかなり大きかったらしい。

 結局、キータッチに関する不安は、キーボードが未塗装で(そのため、筐体と微妙に色が異なっていた)工作精度が低い手作りの試作機レベルでは解消されず、製品版と同様に塗装された量産試作機が出来上がった段階で、ようやくキーボードの一体感と満足のいくキータッチの感触を確認できるまで消えなかったらしい。



森澤氏から上がってきたデザインモック。ほぼ製品版に近いフォルムが固まっている。ベースの決定が早かったことは、森澤氏へのインタビューでも語られていたが、それでも、細部で製品と異なる部分が数点確認できる

 キーボード以外に森澤氏がこだわったもう一つのキーコンセプト「バッテリーの一貫性を表現」するために、製品版でバッテリーユニットの両側に実装されるACコネクタと電源ボタンは、デザインモックではまだ反映されていない。 実をいうと、このACコネクタに電源ボタン、そしてPCカードスロットの搭載方法など、この段階では、未確定な部分が多数残っていたそうだ。

 とくに、設計陣のなかで問題になったのがバッテリーユニット両端の配置。森澤氏は「バッテリーの一貫性」を表現するために、「片方にはACコネクタ、もう片方には電源スイッチ」の実装を強固に主張するが、「狭すぎてここにはもう入らないから、キーボードの上にあるフラットなところに電源ボタンを用意してもらおう」(辛島氏)と、部材や機構を詳しく解説してデザイナーを納得させようとしたものの、「結局なんとかしてしまいましたね」(辛島氏)と、この難しい問題を解決してしまった。


デザイナーと開発陣の意見交換を経て作成された製品レベルのモック。開発工程としてはほぼ完成に近い状態で、これを参考にしながら今度は生産ラインとの打ち合わせに入ることになる。この時点でPCカードスロットの本体内蔵が決定しており、そのためデザインモックより奥行きがやや長くなっている。


製品モックで実際の製品と異なっているのが底面の形状。緩やかな段差を設けて、手前を薄くしようとしているが、スティックデバイスのユニットが箱状に飛び出てしまっている。「カーボンを使うとこのような加工ができなかったため、製品では底面全体を緩やかな球面で覆うようにした」(辛島氏)

 さて、今回は「デザイナーが主張する世界を開発陣が苦労して実現する」という流れで、モックの変遷を見てきたわけだが、「筐体内部のチップレイアウトも筐体のデザインに大きく影響している」(西野氏)のだそうだ。

 そこで、次回は実際に製品に使われている基板を見ながら「MDサイズの基板開発物語」を紹介することにしたい。

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[長浜和也, ITmedia]

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