「平成生まれの社員はやる気がない」「デジタルネイティブは異質」は本当か? 「さとり世代」の生みの親、原田曜平さんに聞く

2017年03月27日 10時00分 更新
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 「最近の若いヤツが考えることは分からん」――いつの時代も企業内で言われてきたことだが、近年では特にその傾向が顕著なようだ。1980年代以降に生まれて社会人になった層は、米国では「ミレニアル世代」などと呼ばれ、幼いころからデジタルツールに親しむ彼らならではの特徴があると言われている(関連記事:若者は“○○な職場”にイライラ!? 日本の「ミレニアル世代」が求めるものは)。

 いま、若者世代に何が起きているのか。新卒売り手市場が続いている今、企業が優秀な若者をより多く採用し、活躍してもらうにはどのような環境が必要なのか――2013年ユーキャン新語・流行語大賞の候補語 「さとり世代」の生みの親、博報堂ブランドデザイン 若者研究所リーダーの原田曜平さんに聞いた。

若者の「欲がない」「やる気がない」のは日本だけじゃない

――最近の若者を指す「ミレニアル世代」「さとり世代」などの言葉は浸透しつつあります。一方で、いわゆる“おじさん世代”が彼らに対して抱くイメージは実態と異なる点もあるように思います。企業は今の若者たちを、どのような存在だととらえるべきでしょうか。

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博報堂ブランドデザイン 若者研究所リーダーの原田曜平さん

原田さん 若者がと言いますが、実はいつの時代も世代間ギャップはあるんです。戦後を見ても、団塊世代、バブル世代、白け世代、団塊ジュニア、そしていまの「さとり世代」などが生まれていますよね。

 でも実際、団塊ジュニアまではあまり大きな違いはありませんでした。文化的差異が他国に比べると比較的少ないので、少しの変化でも「大きい」と感じやすかっただけだと考えています。しかし、さとり世代は今までとは違うのかなと。

――どういうことですか?

原田さん 団塊ジュニアまでは、高度成長期、バブル期など日本が盛り上がっていく様子を見ていますよね。だから上昇志向が強いところは共通していました。しかし、さとり世代は「欲がない」と言われている。上昇志向が弱いんです。

 バブル崩壊後、失われた20年など日本が下向きになっている様子を見て育ってきているから、当たり前ですよね。

――今までは「欲がある」のが当たり前に共通していたけれど、さとり世代には欲がないと。

原田さん そうですね。でも「いまの若者はダメだ」とおっしゃるかたは、自社の新入社員など、身近な若者だけを見て語っているようにも感じていました。

 実はニューヨーク、パリ、ロンドン、ベルリンの若者も同じく、クルマや恋愛に興味を持たないと言われているんです。でも、日本だって地方に行けばクルマは必要ですよね。先進国の都心部に共通している特徴なんです。

――若者の欲がないのは、他の先進国でも同じような状況なのですね。

原田さん 例えば、中国は急激な成長を遂げてきましたよね。5年ほど前は「社長になりたい!」と言う若者が多かったのですが、最近、上海の若者たちにさとり化の傾向が見えてきました。これは日本や欧米諸国と同じく、国が大きく成長していく時期から成熟していく時期に変わると出てくる特徴なんです。

 日本では「ゆとり教育」を原因のひとつとして挙げる向きもありますが、若者に欲がないから低成長になっているのではなく、若者は成熟期に合わせて変化しているのではないでしょうか。

――成長率が大きい時代と比べて、成熟期は低成長が当たり前になっている。若者のマインドが変わったというより、時代そのものが変化しているんですか。

原田さん そう思います。だから、私は団塊ジュニアまでは「小さい変化」だと捉え、さとり世代は「大きな変化」だと考えているんです。

ビジネスシーンにも訪れる「若者世代」の変化

――その変化はビジネスシーンでも現れているのでしょうか。例えば「ミレニアル世代」という言葉が話題になっている米国などの調査レポートでは、ミレニアル世代は給料よりも、働き甲斐を大事にすると言われています。

原田さん 給料も大事です。お金はまず大事だと思います。

 でももはや、クルマを1台買えるぐらいでは喜びを感じないほどに、基本的な生活水準が豊かになっていますから。「年収1000万円もらう代わりに、頑張って働く」というのが通用しない時代になったのは確かでしょう。

 若者にとっては、年収は今の半分になっても、職場の雰囲気がいいほうが良いのかもしれない。昔の発想を捨てないと、人気企業が不人気企業に変わってしまうのかもしれません。

――昔の発想を捨てる、とは。

原田さん いままではヒエラルキー型が当たり前でしたよね。成長率が高ければ、たとえ上司から理不尽なことを言われても「自分も頑張って偉くなるぞ!」と考えられます。低成長だと、限界が見えてしまうから頑張れないのも当然なんです。

 いまの若者はヒエラルキー型を嫌がります。自分が偉くなっていくことにも興味がない。競争させて、権限を持つようになって……という発想がなじまないんです。

――それは若者特有の違いなのでしょうか。

原田さん 実は、若者はいち早く社会の変化を受けているんです。全世代に当てはまることを、若者が素早くキャッチして体現している。若者が馴染む組織というのは、いまの社会に適した組織であるケースが多いと考えると良いかもしれません。

若者にとって働きやすい企業環境 そのカギは……

――ではあらためてうかがいますが、若者にとって働きやすい企業環境とはどのようなものでしょうか。いわゆる平成生まれの若者世代とそれ以上のおじさん世代では、幼いころから親しんでいるツールにも違いがあると思います。

原田さん いわゆる団塊ジュニアから「インターネット世代」と呼ばれています。今の20代と30代の間に大きな変化があるかどうかは言い切れませんが、それ以上の世代とはだいぶ違いがあるのではないでしょうか。

 ガラケー(従来型携帯電話)が一世を風靡した時代から、ケータイで学校の小論文とかを書く人が増えてきています。さらに言えば今では、大学生でもPCのタッチタイピングができないって人も多い。なぜかというと、彼らにとってはケータイやスマホのほうに慣れていて、そのほうが文章も打ちやすいからなのです。

――会社で配布されるITツールが肌に合わなくて、ストレスを感じることもあるかもしれません。

原田さん それは会社によもよりますよね。例えばファクシミリ(FAX)は、いまやスミソニアン博物館で歴史モノとして展示されています。先進国で、いまだにビジネスでFAXを使っているのは日本だけとも言われています。

 話を戻すと、ITツールへの感じ方については若者のほうが進んでいるという見方もできます。PCに関しては団塊ジュニアの世代のほうが詳しいかもしれませんが、スマホやタブレットで使うLINEなどのチャットツールについては若者のほうが詳しいでしょう。

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上がミレニアル世代、下がそれ以上の世代(ミライの働き方研究所調査より)

――ミライの働き方研究所が行った調査では、おじさん世代と比べて若者世代のほうが、会社で自分の基準に合わないITツールを使わされるとストレスがたまるという結果も出ました。こうした背景を踏まえると、若者の視点に合わせて“障壁感”を少なくし、フレンドリーにしていく必要があるのかもしれません。

原田さん 若者研究は、いまや企業にとって1つの人事戦略でもあります。優秀な若者を採用し、育てていくのは企業戦略として相当の部分を占めるはずです。若者をしっかりと研究していく必要性を、企業は無視すべきではないでしょうね。

企業は若者に「胸を借りる」べき

――ここまでのお話を踏まえると、若者に既存の常識を押しつけるよりも、むしろ若者から教えてもらうぐらいの姿勢が良いのかもしれません。

原田さん そうですね。いま新卒採用は売り手市場と言われているので、新卒に自分の会社を選んでもらわないといけないですよね。どうしたら選んでもらえるのか、会社の若手に任せるんじゃなく、おじさん世代も混ざって一緒に考えていくべきだと思うんです。

 毎晩遅くまで、休日も返上するほど働いてたくさんの給料をもらうよりも、少しの残業、休日もしっかり休んでほどほどの給料のほうが良い。そう考える若者が増えてきています。それを教えてもらわないといけません。

――いま若者はどんな企業で働きたいと考えているのでしょうか?

原田さん いま人気があるのは歴史のある大企業。例えば、銀行などです。日本は世界で最も歴史の長い会社が多い国。つまりは安定感のある企業が多い国なんです。

――なるほど。そうではない企業はどうすればいいのでしょうか。

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原田さん 安定感以外ということならば、知恵を絞らないといけません。

 例えばですが、自分たちから若者に「どんな魅力があれば来てくれる?」と尋ねてみてもいいと思うんです。若者に何が好きかを聞いたり、どんな人と働きたいか聞いてみたりして採用枠を考えてみるとか。実際、ある業種では「仲間と働きたい」と言う若者が多かったので、採用枠を個人ではなく“集団”に変えたそうです。

――若者を自分たちの経験や常識に合わせようとするから不満が生まれてしまう。上の世代が若い人に近づいていくことで、お互いの妥協点を見つけていくイメージですね。

原田さん 自分たちの経験、常識に合わせてもらうアプローチも間違いではありません。しかし全体論で言うと、今後、景気が良くなっても構造的に人手不足が続くんです。これは企業単体で対応できる話ではありません。

 いま企業にできることは、いち早く社会の変化やトレンドをつかみ、対応していくこと。若者を分析・研究すれば、その変化やトレンドがつかみやすいと言えるでしょう。いうなれば、若者に“媚びる”ぐらいの姿勢がちょうど良いのかもしれません。


若者のニーズをとらえ、適切な職場環境を

 若者たちは、今の社会の変化を映し出す“鏡”のような存在。だからこそ、企業は既存の環境や文化を押しつけるのでなく、若者たちの希望に耳を傾け、それに応えられるように変わっていくべき――原田さんへのインタビューでは、そんな1つの方向性が見えてきた。

 ことIT環境に目を向けると、インタビュー内でも触れたように、若年層はそれより上の世代と比べ、会社で自分の基準に合わないITツールを使わされるとストレスがたまるという調査結果も出ている。さらにIT企業のデルとインテルがグローバルで行った共同調査によると、ミレニアル世代の約80%が、職場選びや仕事を引き受ける際に「IT環境を考慮する」というデータもある。

 とはいえ、「若者」とひとくくりに言っても働き方は千差万別。すべての若者のニーズに応えられるIT環境があるわけではない。そこでデルが提唱しているのが、ビジネスパーソンの働き方をいくつかに分類し、それぞれに合わせたIT環境を用意すべきというアプローチだ(関連記事:あなたはどのタイプ? データでみる「5つの働き方」それぞれの悩みとは)。

 例えば、営業などの「外勤型」の人には薄型軽量のノートPC、社内のデスクや会議室などで動き回って働く「社内移動型」の人には2-in-1端末(ノートPCとしてもタブレット端末としても使える端末)――といったように、ワークスタイルに適したIT機器を選ぶことで、生産性アップとともにビジネスパーソンの満足度向上にもつながるという。

 優秀な若者を1人でも多く採用し、より高く貢献してもらうためには、「彼らが何を望んでいるのか」を無視することはもはやできない。このような考え方を取り入れることで、より魅力的な企業環境づくりを目指してみてはいかがだろうか。

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ニュース編集部/掲載内容有効期限:2017年4月26日

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