ネットやテレビ横目に「集中しない」 描き込みと余白のバランスがこだわり へびつかいさん:教えて! 絵師さん
細かいモチーフを使いながらもすっきりと整然と見えるへびつかいさんのイラスト。秘密は「描き込んでいない箇所」へのこだわりでした。
小さいころから絵が好きな子どもでした。当時熱中していたマンガやゲームのキャラクターを描くのが好きで、ノート、教科書、机などに落書きをしては、よく先生に怒られていました。中学の頃までは落書きに打ち込んで(?)いましたが、高校入学以降全く描かなくなりました。理由は特にないのですが、歳を重ねるにつれて自然と「自分とは関係がないもの」と考えて距離を取るようになっていたんだと思います。
描くことから離れたまま日々が経っていたのですが、大学4回生の時に転機が訪れました。当時アニメ界でゆるふわ軽音楽部アニメが一大センセーションを巻き起こしていたのですが、何気なくそのアニメのキャラクターデザインを見た私は衝撃を受けました。
「かわいすぎる……」
絵についての興味が再燃した瞬間でした。その後「pixiv」の存在を知り、早速ユーザー登録をして皆さんの素晴らしいイラストを眺めていました。そのうち自分でも描きたくなってきて、なんとなくペンを取るとこれが非常に面白く、気付いたら描き続ける毎日になっていました。最初はアニメ調のキャラクターイラストを描いていたのですが、徐々に方向性が定まってきて、今では妙にゴチャゴチャしたイラストを描いています。
普段はエンジニアとして働いています。空いた時間を利用して、趣味というかライフワークとしてイラストを制作しています。仕事で帰宅が遅くなることもありますが、毎日5分だけでも描くようにしています。……ストレスが溜まるので(笑)。描かない日はお盆と年末年始の帰省している数日間だけです。平均すると、平日は2時間程度、休日は5時間程度でしょうか。
作画はフルデジタルで行っており、マシンは「Windows 7」、ペンタブは「Favo CTE-640」、メインツールはラフから配色までSAIです。仕上げに「Photoshop」「Illustrator」を使って色味を調整したりロゴやモチーフを加えたりすることもあります。
自分の制作スタイルは「集中せずに描く」。常にネットをしたり、アニメや映画を見たりしながらなので、はたから見ればダラダラと余計なことをしながら手を動かしているように見えると思います(笑)。「集中しないと完成度が落ちるのでは」と、まれに聞かれることがありますが、個人的には集中しないほうがよいイラストが描ける傾向にあります。
集中してしまうと、自分の中だけにあるもので絵を完成させがちなので、いつも同じような構図やモチーフで描き進めてしまい、最終的に「似た絵、前に描いたな……」となってしまいます。違うことをしながら頻繁によそ見をしていると、ほどよく目を離しながら作品を客観的に見れますし、ネット上で偶然見つけたモチーフをその場で取り入れたり、面白みのある新規性の高いイラストになります。
影響を受けた人は、漫画家だと大友克洋さんです。オブジェクトのシルエットを強調し、キャラと背景を同じ筆致で描く点や、メカのデザイン、瓦礫の表現方法に影響を受けています。イラストレーターだとusiさん。中性的な女性のキャラクターデザインと、フラットな塗りの表現、バランスのよい配色が好きです。
イラストを描くようになって5年が経ちましたが、最近はボカロ楽曲用のイラスト、書籍の表紙、グッズ販売など幅広いお仕事をさせていただいています。これからも貪欲にいろいろな仕事を経験してみたいと思っていますので、制作のご依頼、心よりお待ちしております!
教えて! 自慢の1枚
押入れ少女
たくさんの色をうまく配置できたと思います。適度に日用品を散りばめて生活感を出せた点も良かったです。
negative generation
メカとケーブルを上手くマッチさせて、インパクトのあるシルエットが生み出せたと思います。
一人暮らし練習中
パースラインを引かず、太めの線で大胆に描き進めました。色を抑え気味にして、白を生かすことができた点も気に入っています。
一番大切にしていることは、「直感的に心地よさを感じるかどうか」。年齢や性別によらず幅広い層に「いい!」と思ってもらえるイラストを目指しています。具体的には「構図」「密度のバランス」「配色」「キャラクターデザイン」に気をつけています。
描き込みの丁寧さを褒めていただくことがよくあるのですが、私としては「描き込んでいない箇所」も見てほしいです。視線を上手く誘導させ、魅力的な画面を作るには、描き込んでいない“余白”の部分が重要で、そういった余白は意識的に「描いている」つもりです。不足のないイラストを描くのは何も考えずに描き込めばいいだけなので簡単ですが、過不足のないイラストを描くのは非常に難しく、逆に言えばそれがやりがいでもあります。
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