“男のかっこよさ”をシンプルに追求したい みっつばーさん:教えて! 絵師さん
「男キャラをかっこよく」がこだわりと話すみっつばーさん。絵を描き始めたのは高3――漫画家を目指した「遅い出発点」からここまでの歩みを聞きました。
個人的に大事な理由があり、突発的に高3の頭から漫画家を目指し始めました。それまでまったく絵を描いたことがなかった人間として、いかに出発点が遅いかだけは理解できましたので、なりふり構わず絵の練習をするためだけに学校に通い出しました。体育の授業以外は教科書も出さず、ノートもとらず、ひたすら絵の練習をするようになりました。もちろん先生には怒られましたが、頑なに描き続けていたので途中から諦められていたと思います(笑)。心労をかけてばかりでした、たまに思い出して恥ずかしくなります。
卒業後は芸術系の専門学校の漫画学科に進みました。2年間という短い期間でしたが、ここでは技術指導よりも同じ志を共有できる人に囲まれていた状況こそが何よりも貴重だったと思います。
卒業後は「週刊少年ジャンプ」へ本格的に漫画の投稿を開始し、結果的に新人賞をいただき、読みきりデビューを果たすことができました。ここから連載に向けてひたすらネームをきってコンペに出す日々を送ってましたが、バイトとの両立に疲れ果て一旦漫画家を目指す人生に区切りをつけました。その後2年間はまったく絵を描かなかったと思います
そしていよいよ正社員としての就職のお話をいただいた時に、これでいいのかと我に返りました。絵とはまったくかけ離れた職種だったので、ここまでやってきたことが途端に空しく思えたからです。
pixivのサービスが始まったのはちょうどこの頃だったと思います。pixivで作品を発表したことで徐々にお仕事をいただきはじめ、2011年の時点で完全に絵だけで食べていこうと決意し今にいたります。
現在は書籍のカバーイラストや挿絵を軸にイラストレーターとして活動しています。改めて漫画のお話もいただくようになり、編集さんと共にふたたび漫画の連載も目指すようになりました。
線画はアナログ、すべて2Bのシャーペンで描いてます。カラーはPhotoshop 6.0を使用してデジタルで。基本的には毎日何かしら絵を描いています、大体8時間くらいでしょうか。ありがたいことにお仕事を振っていただけているので……という面はもちろんありますが、どちらかというと「描くのが遅いから」という側面のほうが大きいかもしれません(笑)。もっとスピードを意識して精進します。週に1日は描くのを休んで休憩しているので、フリーランスではありますが一般のサラリーマンの方と同じような時間の使い方かなと。
こだわりは「男キャラを描く」ということ。現在日本では、イラスト、漫画、アニメ、すべてにおいて美少女絵が主流ですよね。特に男性作家は9割、もしくはそれ以上と思えるほど積極的にオリジナルの男キャラを描くモチベーションを持ち合わせていないのでは、と感じることもあります。日本の男性から男キャラをかっこいいと思える感性が消えてしまわないよう微力ながら支えたい、「かっこいい」を突き詰めたいという気持ちで描いています。藤原カムイ先生と岸本斉史先生、この両名から多大な影響を受けた事が自信の根幹だと言い切れます。
それから、デザインをシンプルにすることも意識しています。時代の流れ的に装飾過多なデザインが多くみられますが、自分はシンプルなデザインに魅力を感じるので、ここも時代に逆行してでもブレずにこだわり続けたいです。
自分の絵で1番好きなポイントは目です。今までの人生での自分の経験、境遇すべてを、目というパーツの絵柄やタッチに乗せているので、描くこと自体が好きです。
教えて! 自慢の1枚
Cream
現状一番のお気に入りはこのイラストです。自分にしか描けない、自分しか描こうとしない雰囲気の絵なんじゃないかと。パンクさがすごく気に入ってます。
オリンピック
ロンドン五輪の時に記念として描いたイラストです。構図とファッションに自分らしさをうまく落とし込む事ができたので「みっつばー」としてのアイコンになりえる1枚になったんじゃないかと思っております。
overtake
自分の絵は1番最初に引いた下描きの線が最も魅力があるんじゃないか――と常々感じていたので、実験的にペン入れせずに仕上げる事を前提に描き始めたイラストです。結果、納得のいくテイストに仕上がり作風の幅の広がりを感じました。
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