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孫社長、“後継者”に元Google幹部アローラ氏を指名 「世界のソフトバンクに」 海外ネット企業に集中投資へ

「世界のソフトバンクに生まれ変わる」と孫社長は宣言。元Google幹部のニケシュ・アローラ氏を代表取締役副社長に昇格させ、実質的後継者に指名した。

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孫社長(決算会見のストリーミング中継映像より)

 「世界のソフトバンクに生まれ変わる」――ソフトバンクの孫正義社長は5月11日の決算会見でこう述べた。そのための一歩として、元Google幹部のニケシュ・アローラ氏を代表取締役副社長に昇格させ、実質的な後継者に指名。アローラ氏の力も借り、世界のインターネットの企業への投資を加速する。

 ネット事業のグローバル展開加速に向け、社名変更を行う。ソフトバンクは、7月1日付けで「ソフトバンクグループ」に変更。投資先である世界中のグループ企業を統括する役割を明確にする。ソフトバンクモバイルの社名はソフトバンクに変更。固定通信やネット接続サービスまで事業領域が拡大したことを踏まえて変更する。

「大企業に成り下がりたくない」 世界のネット起業家とともに挑戦へ

 ソフトバンクは創業以来、PCソフト流通や、米Yahoo!など世界のネット企業への投資、固定・携帯通信などさまざまな事業を手がけてきた。2006年にボーダフォンを買収して以降はモバイル通信事業に精力を傾け、「この10年間、通信のインフラに九十数%の精力を使った」と孫社長は振り返る。

 一方で、「インターネットへの投資や戦略的グループ形成に使った精力と時間は2〜3%。趣味のように続けていた」とも。ソフトバンクモバイルや米Sprintの通信インフラ事業が落ち着いた今、改めて「インターネットに集中投資していたかつての状況に戻し、世界のソフトバンク、インターネットのソフトバンクになるという展開をもう一度加速したい」という。

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アリババの業績推移

 「日本の企業の海外展開は難しい」とし、国内で成功したビジネスモデルを海外に持ち出すのではなく、海外の企業への投資を続け、グループを拡大する戦略だ。

 すでに中国のEC最大手Alibaba、フィンランドのスマートフォンゲームメーカーSupercell、インドのEC大手Snapdealなど海外の多数のネット企業に出資しているが、今後は投資をさらに加速させる。「いままでは日本のソフトバンクが海外の会社に投資を行っているという立場だったが、“世界のソフトバンク”が日本にも大きく事業を展開しているという立場になりたい」。

 「大企業に成り下がりたくはない」とも。「大企業に成り下がることは最大の屈辱であり、最大の失敗である」――創業から30年以上経てもベンチャー精神を持ちつづけ、挑戦を続けるために、世界中の野心的な起業家たちとともに革新的な事業にチャレンジしていきたいという。

元Googleのアローラ氏を「実質的後継者」に

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ニケシュ・アローラ氏

 ネット事業のグローバル展開加速に向けたパートナーが、米Googleで上級副社長兼CBO(最高事業責任者)を務め、昨年9月に同社のバイスチェアマンに迎えたニケシュ・アローラ氏だ。

 アローラ氏は6月に代表取締役副社長に昇格し、「創業以来初めて、英文の役職で言う“President”の座を譲る」という。「アローラ氏を実質的な後継者に指名したのか」、という質問に対して孫社長は「答えはイエス。彼が最も重要な後継者候補だ」と述べ、大きな期待寄せていることを明らかにした。

 孫社長はアローラ氏について、「Googleという世界最大のネット企業を実質的に切り盛りした経験があり、テクノロジーやビジネスモデル、人脈は私をはるかに上回る才覚を持っている」と評価。アローラ氏は世界中の人脈を生かし、米国や欧州など海外のネット業界の人材のスカウトも行っているという。

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コメントするアローラ氏を見つめる孫氏

 アローラ氏と孫氏は、日本やシリコンバレーで顔を合わせたり、電話やメールで密接にコミュニケーションし、議論を戦わせているという。「朝起きたら真っ先に電話するのが彼、寝る直前に電話をかけるのも彼。おかしいんじゃないかというぐらい仲良くやっている」。

 アローラ氏は「孫社長とより深く知り合う中で、彼は(Google共同創業者の)ラリー(・ペイジ)やサーゲイ(・ブリン)と同じビジネスイノベーターであると思った」と持ち上げる。ただ「孫さんが電話をかけてくるのは、妻はあまり喜んでいない」とも。「面白いネット企業に資金を供給するなど、必要な燃料を投入していきたい」と意気込みを述べた。

 代表取締役副社長の宮内謙氏は代表権のない取締役となり、国内の通信事業を統括する。

SIMロック解除でも市場は「ゼロサムゲーム」 電力小売りへの参入は

 5月にSIMロック解除の義務付けが始まったことに伴い、NTTドコモ、KDDIはSIMロック解除の手順を発表したが、ソフトバンクモバイルはいまだに方針を発表していない。

 孫社長は同社のSIMロック解除方針について「総務省の方針通りに行う予定」と話すにとどめる一方、義務化に伴う市場への影響については、「ほとんどゼロサムゲームではないか。大きな変動が急激にやってくる状況は、しばらくの間考えにくい」と展望した。

 来年4月の電力小売全面自由化を前に、同社が東京電力と提携し、通信と電気をセット販売する――との報道もある。孫社長は「報道で噂されていることについて直接のコメントはできないが、電力の自由化は、ソフトバンクにとってのビジネスチャンスととらえている。通信と電気代は、毎月固定的な費用として支払う2大インフラ。1つの支払いで済ますことできるのは大きなチャンスがあるのではないか」と述べた。

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