「肩こりは幽霊が原因」 WELQの“トンデモ記事”ができるまで 調査報告書で明らかに
「肩こりの原因、幽霊のことも?」――WELQに掲載されていた“トンデモ記事”がどう作られたのか、第三者委員会の報告書によって明らかになった。
「肩こりの原因、幽霊のことも?」――ディー・エヌ・エー(DeNA)が運営していたヘルスケア情報サイト「WELQ」にはこんな記事も掲載されており、「非科学的だ」などと批判を浴びていた。3月13日、同社が公表した第三者委員会による調査報告書で、この記事が生まれた経緯が明らかになった。
報告書では、WELQ運営陣が、検索エンジンからの読者流入を狙う「SEO」(検索エンジン最適化)を過度に意識するあまり記事の合理性をおろそかにしていた様子や、マニュアルで「コピペ」を厳しく禁じた結果、ライターが参照元の内容を安易につなぎ合わせて内容を改変してしまい、不正確な情報を発信していた様子などが明らかにされている。
調査報告書の概要をまとめた記事
「肩こりは霊が原因」どう生まれた?
昨年11月ごろ、WELQに掲載された肩こりの対処法に関する記事に「幽霊が原因のことも?」と書かれており、「非科学的だ」などの批判が起きていた。
報告書によるとこの記事は、WELQチームの記事構成案の作成担当者が、Google検索で「肩が痛い」というキーワードで検索したところ、予測キーワードの1つに「霊」と表示されたため、「肩こりの原因」をテーマにする記事の小見出しの1つとして「幽霊が原因のことも?」という項目を含んだ構成案を作成。この案に従い、クラウドソーシングのライターに記事を執筆してもらったという。
第三者委員会は報告書で、「記事構成案の作成に際し、SEOの観点が過度に重視された結果、記事内容の合理性がおろそかになっていた」と指摘。「医療記事を閲覧するユーザーは、深刻な病状を抱えて悩み、すがるような思いで閲覧していたことが想定される。DeNAは、SEOを意識した記事作成を重視するあまり、ユーザーに対する配慮を欠いた記事が掲載される可能性があることを真摯に受け止めるべきだ」と指摘している。
「死にたい」記事、作成の経緯も
また、「死にたい」と検索すると上位に表示されていたWELQの記事に、転職サイトの自己分析サービスのアフィリエイト広告を掲載していたことが批判を浴び、同社が広告を削除したこともあった。
報告書によるとWELQチームは、この記事の前にも「死にたい」をテーマにした別記事を掲載しており、「内容が不適切」と外部から指摘を受けていたが、特に対応しなかったという。
その後、この記事を作成・公開し、転職サイトのアフィリエイト広告を掲載した。広告掲載の担当者は「記事は自己承認力を高めるために自己分析を提案する内容。閲覧者には性格診断・分析を受けたいと考える人や、仕事について悩んでいる人も多いのでは」と分析し、広告を掲載したと説明したという。
第三者委員会は「このようなセンシティブなテーマを扱う以上、アフィリエイト広告の掲載の当否や内容について、事前に慎重な検討が行われるべきだった」と指摘している。
「日焼けに濡れタオル」 複数の記事“つぎはぎ”で不正確に
また、日焼けした後の対処法として、「濡れタオルで20分ほど冷やしましょう」と書かれた記事では、病院が運営するブログを参照元として記載していたが、参照元ブログを運営する医師から「自分のブログには濡れタオルで冷やすとは書いていない。引用が不正確」とクレームを受けていた。
報告書によるとこの記事は、別の病院のWebサイトからも引用しており、そのサイトには「タオルの上から氷のうを当てるとよい」と書かれていた。執筆したライターは、複数のWebサイトの記事をつなぎ合わせて「日焼けは濡れタオルで冷やす」という記事に仕上げたとみられる。
WELQチームは医療関連情報について、医師や公的機関による監修がある記事からのみ引用し、引用元を明示するようルール化していた一方、コピペを厳しく禁じるとともに、SEOを意識してできるだけ多くの情報を盛り込むことを求めていたという。このことが、“つぎはぎ”による不正確な記事につながっていたと第三者委員会はみている。
記事による健康被害が具体的に指摘されていた例も1件あった。WELQには「ムカデに噛まれた時の対処法」として、「43度以上、可能なら46〜50度ほどのお湯でシャワーを当て続け洗い流す」と書かれた記事があったが、「ムカデにかまれた患者が火傷を負って来院することが多い。この記事を読んだ結果と思われる」と病院関係者から問い合わせを受け、記事を削除していたという。
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