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「地球のような惑星探したい」 Googleが明かす、AIで新惑星見つける方法

米航空宇宙局(NASA)のKepler宇宙望遠鏡のデータをAI(人工知能)で解析し、太陽系と同じ8個の惑星を持つ恒星系を2017年12月に発見したGoogle。その次なる挑戦は「地球のような惑星を探すこと」だという。

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 「次は、生命体を支える条件が整った地球のような惑星がないか探すことにチャレンジしたい」――米GoogleでAI(人工知能)技術を使って太陽系外惑星を探索するプロジェクトを担当するAIシニアソフトウェアエンジニアのクリストファー・シャルーさんは、こう話す。

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米GoogleのAIシニアソフトウェアエンジニアのクリストファー・シャルーさん

 シャルーさんは、米テキサス大学オースティン校の天体物理学者アンドリュー・ヴァンダーバーグさんと共同で太陽系外惑星の発見に成功し、その成果を2017年に12月に発表していた。

 今の目標は、地球のように生命が居住可能な惑星がないか探すことだという。8月23日にGoogle日本法人(東京・六本木)で開催された報道関係者向け説明会で、シャルーさんがAIを使った惑星探索の詳細や、現状の課題について語った。

AIで惑星を探索する方法

 惑星探索には、米航空宇宙局(NASA)のケプラー宇宙望遠鏡(09年に打ち上げ)が収集した公開データを利用するのが通例。惑星を見つけるには、時間軸に沿って恒星の明るさを計測する必要がある。

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ケプラー宇宙望遠鏡

 恒星を周回する惑星が恒星の前を通過するときは、一時的に光の一部が遮られるため、恒星の明るさが減少してまた回復する「ライトカーブ」と呼ばれるU字曲線がグラフ上に描かれる。

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ライトカーブ

 このライトカーブの波形が惑星が存在するかどうかを判断する“シグナル”になるが、「連星系や恒星黒点と呼ばれる天文学的な要因や、観測機器の問題などで明るさが落ちることもある」(シャルーさん)ため、惑星が存在すると特定するのは容易ではないという。

 従来、科学者たちは自動化されたソフトウェアを使ってケプラーのデータからシグナルを検出し、目視で惑星かどうかチェックしていた。その量は膨大で、SN比(信号雑音比)でしきい値を下回ったものは破棄していたが、これまで人の手で精査されたシグナル数は3万個を超えるとされる。

 シャルーさんらは、このしきい値を下回ったデータを機械学習を使って分析。特定のシグナルの波形が惑星によって生じるものである確率を予測するため、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を構築した。

 人間が惑星か否かを分類した1万5000件のケプラーの波形データを用意し、惑星のシグナルとそうでないものに見分けられるようにニューラルネットワークに学習させたとしている。

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1万5000件のトレーニングデータを用意

「Kepler 90i」発見 次の挑戦へ

 実際のケプラーのデータを機械学習モデルに読み込ませることで、「ケプラー 90i」「ケプラー80g」という2個の新惑星を発見できた。

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新惑星を発見

 ケプラー 90iは、ケプラー 90の周回軌道上に発見された8番目の惑星で、これによりケプラー 90は太陽系外で初めて見つかった8個の惑星を持つ恒星系になった。開発した機械学習モデルは、18年3月にオープンソース化して公開している。

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「ケプラー90」

 そして、次は地球のような生命が居住可能な惑星の探索にチャレンジしているが、3つの点から難航しているという。

 それは、(1)地球のような性質を持つ惑星は恒星からかなり距離があり、軌道周回の回数が少ないので分析の確度が担保できないこと、(2)惑星のサイズが小さいので、光度の低下が観測しにくいこと、(3)地球のような軌道を描く惑星が少ないため教師データも十分でなく機械学習モデルを構築しにくい、といった点だ。

 これらの課題を解決する一手段として、シャルーさんは音声合成アルゴリズム「WaveNet」に注目。「音とライトカーブの波形は似ているので、WaveNetを使ったアルゴリズムの改善もしたい」という。新たな宇宙望遠鏡を使った惑星探索も視野に入れている。

【2018年8月23日18時15分 地球のような惑星を探す上での課題の3点目の内容を修正しました】

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