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アップルが作り出した2つの“魔法”――「iPad mini」と第4世代「iPad」を徹底検証発売直前!!(1/5 ページ)

2012年の冬商戦で最大ヒット間違いなしの「iPad mini」と第4世代「iPad」を林信行氏が徹底レビュー。どちらを買う? それとも、両方買う?

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iPad mini発売直前、触った瞬間に大ヒットの予感!!

iPad miniがついに登場。本体の小ささを感じさせるように、箱も非常にコンパクトで可愛らしい

 何年かに1度、見た瞬間に「あ、これは大ヒット間違いなしだ!」と確信する製品に出会う。iPad miniは、まさにそんな製品だ。

 こんな小さくて薄いものなのに、これまでのiPadとまったく同じに使えてしまう。1枚の板が、シリアスな仕事から、ちょっとした調べものや友人への連絡、そして本格的な趣味に至るまですべての欲求に応えてくれる――あの“iPadマジック”が、この片手サイズに凝縮されてしまったというのは、そのこと自体が今年最大の魔法のようだ。

 インターネットで文字情報だけを追っていても、なかなか分からないかもしれないが、ほとんどの人が、見た瞬間に心の中で「かわいい!」と叫び、持った瞬間、「軽い!」と小躍りしてしまうことだろう。

実際のiPad miniの魅力は文字情報だけでは分からないかもしれない。その代わりに、実物を見て、触れば一瞬で伝わってくる

 中には、インターネットの議論につられて「これはこれまでのiPadとどう使い分けるのか」とか「Retinaディスプレイじゃないのか」と頭を悩ませている人もいるだろう。そうした人の多くも、実物を見た瞬間、そんなことはどうでもよくなってしまい、「買うとしたら白モデルか黒モデルか」を考え始めるに違いない――iPad miniは、まさにそんな製品である。

 私が下で並べる文字だらけのレビューに惑わされるよりも、まずは1度、ぜひ実物を触って自分自身の体験談を語る側に回ってほしいと思う。もっとも、この記事が掲載されるのは、iPad miniの発売前日で、iPad miniはまだアップルストアの店頭にも並んでいない。

 そこで、販売開始までのカウントダウンの暇つぶしとして、やや“濃いめ”のレビューを書いてみることにする。

ジョブズが反対していたデバイス!?

 インターネットには、モノごとを目ではなく頭を通して見る人が多い。本当は実物を触ったことすらない人たちが立てるウワサや、スペックシートの比較だけで、モノの価値を決めるなんて実はかなり「どうかしている」発想だ。「彼は東大法学部卒で次男だから」とか「彼女はミスキャンパスで、お茶とお花に加え、お料理も勉強しているから」と、本人に会うこともなく結婚を決める人がいるだろうか。

 中にはスティーブ・ジョブズ氏が7型タブレットに反対していたから、という話が一人歩きして「ジョブズだったら、こんな製品は出さなかった」と主張する“にわかジョブズ評論家”も多い。本当のジョブズ氏を知っている人にとっては、それも笑止千万だろう。

iPhone 5と同じ2色のカラーバリエーション

iPhone 5並べてみると背面の処理などが非常によく似ている

 かつてジョブズ氏が「反対していた製品」「出さない」と言っていた製品のリストを挙げると、まずは音楽プレーヤーもそうだし、タブレット製品も該当する。

 2000年ごろ、市場シェア5%ほどのマイナーPCメーカーだったアップルが、今の地位にあるのは、2002年にWindows版のiPodを出したおかげだ。これによって初めて世の中の95%側の人も、「アップル」というブランドに注目をしてくれた。

 しかし、このWindows版iPodを出すことに反対していた張本人がジョブズ氏だった。筆者も2001年、アップル本社で行われた発表会で、ジョブズ氏が「そんなもの(=Windows版iPod)を出す必要が本当にあると思うか?」と記者の質問に答えるのを直に耳にしている。

 さらには今のiPhoneやiPadの大成功の大きな要因となっているのが70万本以上あるiPhoneアプリ、そして27万5000本あるiPad用のアプリだが、このように他社がiPhone用アプリケーションを開発することに一番反対していたのもジョブズ自身だった。

 それを押し切ってApp Storeを成功させた優秀なスタッフがいたからこそ、今のiPhoneやiPadが、そしてアップル自体があると言っても過言ではないだろう。そんなことも知らずに、“ジョブズ通”を気取る人がいたら、ぜひその人がそれ以上恥をかかないうちに、そっと本当のことを教えてあげて欲しい。

小さな箱にもこれまでのiPadらしさ。 iPad miniのパッケージの中身

 ジョブズ氏が本当に求めていたのは「最良の製品」であり、彼がたまに発していたダメ出しは「その製品は、本当に十分な議論を尽くして、その結論に達したのか?」という禅問答の投げかけに過ぎない。

 iPad miniが本当にジョブズ氏の求めた製品だったかどうかは、製品のどうでもよさそうな細部に至るまで、きちんと議論が尽くされたかという1点に尽きる。そして、それでいて、そんな裏の議論がどうでもよくなってしまうほどの美しさと魅力を備えているかどうかだ。

 後者については、是非ともこの記事に載せた写真を通して感じ取ってもらうとして、一応、前者についても説明しておこう。


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