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コラム

「イメージと違う」「提案がない」デザイナーとのすれ違いはなぜ起こる?

現場では依頼主とデザイナーのすれ違いが問題となることも。

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ガジェット製品のデバイスにも多くのデザイナーが関わっている

 企業のマーケティングを手伝うエスプライドが5月27日「企業活動とデザインに関する調査」を発表した。調査テーマは「デザイナーとデザイン依頼主のすれ違いを埋めるコツ」で、これまでデザインの発注を行なったことのある中小企業の経営者もしくは役員100人と、企業のデザインの仕事に従事したことのあるデザイナー100人にアンケートを実施した。(調査期間:2016年4月8日〜11日)

 調査では、デザイナーに「デザイン依頼を受ける際に困ることは?」と質問。回答したデザイナーのうち57%が「望むデザインに対するイメージが不明瞭なこと」を挙げた。また「具体的にこうして欲しいという指示がない」と回答したデザイナーは42%に上り、多くのデザイナーが依頼内容が不明確で具体的ではないことに困っているという結果になった。(複数回答 n=100)


57%が「望むデザインに対するイメージが不明瞭」と回答

 一方、デザインを発注した経営者または役員は「依頼する際に不満に思うことは?」という質問に対し「依頼した内容以上の提案がない」と答えた人が54%、「指示通りのデザインにならない」が33%に上った。


依頼した内容以上の提案が欲しい経営者・役員

依頼主と“すれ違う”デザイナーの悩み

  • 制作費を理解してもらえない。
  • 要望事項が何度も変更があり、それに伴う工数や費用、日程遅延が生ずることへの理解がない。
  • お任せといわれていたのにイメージが違うと変更させられた。
  • 当初の希望されているイメージが途中から大幅に変わってくる。
  • 依頼主のミスで破棄になる商品を請求させてくれなかった。
  • 当初の依頼内容を確認したにもかかわらず、納品後にクレームを出してきたり、支払いを拒むことがあった。

 (※エスプライド「企業活動とデザインに関する調査」より)

 なぜ、このようなデザイナーとデザイン依頼主の“すれ違い”が起こるのだろうか。双方のすれ違いを防ぐコツについて、この調査を行ったエスプライドグループFULAの広報である鈴木まりなさんに話を聞いてみた。

「なるはや」はダメ? お互いが不幸にならないためのポイント

 広報の鈴木さんによると、デザイナーと依頼主双方にとって最初のヒアリングが最も重要だという。

鈴木 まず、デザイナー側は依頼主であるクライアントに対し、取り決めをきちんと交わすことが後々の作業に大きく影響します。追加で注文をもらった場合、報酬はどのようになるのか、最初の段階で話し合う必要があります。納期も「なるはや」ではなく、一般顧客であるエンドユーザーが満足するためのデザインに、どれくらいの時間がかかるのかちゃんと話し合いましょう。

 日本のデザイナーは、海外のデザイナーとはまた違う立ち位置であり、どうしても「頼まれる側が弱くなってしまう」と鈴木さんはいう。デザイナーは追加発注となったケースも考えて、最初に折り合いをつけておくことがポイントのようだ。

鈴木 依頼主は、デザインで達成したい目的やゴールを明確にしておかないと、イメージが先行しただけの“制作物”がデザイナーから納品されてしまいます。「〇〇の商品を出すから△△のためにデザインをお願いする」のように、何のためにデザインを頼むのかちゃんと伝える義務があります。目的やゴールがはっきりしていれば、デザイナーと依頼主が進む方向が一緒になるので、双方のすれ違いを防ぐことが可能です。

デザイナーと依頼主、両方“本気”じゃないとダメ

鈴木 また、依頼主は「頼んだ、よろしく」とデザイナーに任せっきりにするのではなく「自分ができないクリエイティブを手伝ってもらう」ということをはっきり意識しなくてはいけません。納品物が世に出たときにお客さんにどのような気持ちになってもらいたいのか、クリエイターに“本気度”を伝えることが、幸せなデザインを生む鍵です。

―― デザイナーと依頼主、両方“本気”じゃないとダメなんですね。

鈴木 はい。デザイナーも経営視点を持って、ゴールを目指すためにどのようなデザインが必要なのか、要素をはっきりと依頼主に提示する力が求められます。ときには、目的達成のために「その内容では消費者に受け入れられません」と注意したり、依頼主のイメージを打ち砕いたりするアドバイスがあっていいと思います。


85%の依頼主(経営者・役員)が「経営視点を持つデザイナーに依頼したい」と回答

 どうしても、頼まれるほうが弱くなってしまうというデザイナーだが、それについても鈴木さんはこのように話す。

鈴木 デザイナーの中には「価格交渉がうまくできない」と悩んでいる人も多くいます。でも、依頼主も「デザインの価格が適正なのか分からない」と悩んでいるんです。この問題は、発注したデザイン費用が妥当なのかどうか、判断することの難しさが関係しています。しかし、「利益」や「安さ」にひかれてしまった関係では、依頼主に追加料金が発生したり、デザイナーも料金をもらえずに作業したりと、後々のデメリットとして襲い掛かることもあります。目的重視の関係で一緒に仕事をすることが望ましいです。

デザインの中で暮らす私たち

 鈴木さんは「依頼主とデザイナー、お互い納得したものが完成することで、より効果が望みやすいデザインに育つ」と話す。

 依頼主はイメージをより具体的に目的を持ってデザイナーに伝え、デザイナーは経営視点を極めて依頼主に提案することがポイントだと分かった。今回紹介したようなポイントが、デザイナーと依頼主双方にとって、良い商品を生むヒントになることを祈りたい。

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