> レビュー 2003年12月17日 01:34 PM 更新

インクジェットプリンタ絵作り大研究――第2回「自動修正機能時の絵作り」(3/3)


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PIXUS 990i:補正効果は控えめ

 キヤノンのドライバに実装されているオートフォトパーフェクトは、エプソンのオートフォトファイン!と似てはいるが、決定的に異なるところが一つある。それはオン/オフが設定できるだけで、効かせ具合や補正する写真のタイプ(風景や人物など)を選択する機能が存在しないことだ。

 そのためか、その効果は控えめで、オートフォトファイン!ほどのドラスティックな変化はほとんど起きない。自動補正の判断が間違っていた場合に大きなダメージがないように、との配慮なのかもしれない。

 またキヤノンの場合、絵作りに関しては自動補正では行わず、ドライバのデフォルトの色を変えることで行っているようだ。エプソンがオートフォトファイン!の中に、EPSONフィルム調という項目を作ったのとは対照的である。オートフォトパーフェクトは、元データのちょっとした露出不足を補正するといった目的が強い。


右が無補正、左がオートフォトパーフェクトで出力したもの【拡大表示

 キャンギャルの例では、多少黒浮きしている衣装の色が補正され、より黒くハッキリした描写になっているのがわかる。しかし単なるレベル補正ではないようで、肌色に関してはむしろ明るくなっている。中間調はほぼそのままであり、トーンカーブをうまく自動調整することで違和感なく補正を行っているようだ。ホワイトバランスや色に関しては、不自然に入れ替わっているところはなく、ほとんど処理が行われていないように見える。


上が無補正、下がオートフォトパーフェクトで出力したもの【拡大表示

 子供の写真は、元々のデータが低コントラスト。オートフォトファイン!の場合は、人物写真であることを判別しているのか、コントラスト強調をかけずに人物向けの補正を加えていたが、オートフォトパーフェクトではコントラスト補正が自動的に行われ、ホワイトバランスもわずかに調整が働いているようだ。ただし、人物写真の場合はコントラストを強調しない方がキレイに見える場合も多く、補正処理が正しいかどうかの判定は難しいところである。もっとも、それほど出しゃばった補正ではないため、並べて比べない限りは違和感を感じることはないだろう。


右が無補正、左がオートフォトパーフェクトで出力したもの【拡大表示

 この例でも、コントラスト補正は良好にかかっているが、露出補正も同時に行われているようで、若干明るい写真になってしまった。また、ホワイトバランスの補正も強めに効いてしまっているため、夕暮れの雰囲気が失われてしまっているのが残念である。この例だけでなく、コントラスト補正に関しては比較的正解となる場合が多いが、色調を整える処理と露出補正は、多少出しゃばり過ぎるきらいがあるように感じる。


上が無補正、下がオートフォトパーフェクトで出力したもの【拡大表示

 ここでも先のカモメの写真と同じような処理が行われている。アンダー気味の露出に関しては多少補正がかかっているが、この例では気になるほど極端な補正にはなっていない。むしろホワイトバランスやコントラスト調整がうまくいき、ヌケがよく見栄えのよい写真に仕上がったというメリットの方が印象に残る。


上が無補正、下がオートフォトパーフェクトで出力したもの【拡大表示

 あまり変わっていないように見えるが、オートフォトパーフェクトがかかった写真は、無補正時よりも色味が薄くなっている。この例では自動補正をかけない方がよい結果になるようだ。クマノミの体のディテールがきちんと描けているのは、補正が優秀なのではなく、レッドインクによる効果と思われる。元画像の状態がよい場合は、オートフォトパーフェクトをかけない方が、よい結果が得られることが多いようだ。


上が無補正、下がオートフォトパーフェクトで出力したもの【拡大表示

 エプソンの両機種では引き合いに出さなかったが、この夕景の写真ではオートフォトパーフェクトが目立って悪い方に作用していたため、その例として挙げておきたい(疑似輪郭も発生しているが、その点は前回触れているためここでは話題にしない)。こうした夕景の写真では、自動補正アルゴリズムが夕景であることを認識するのか、極端な露出補正は行われないものだが、ここでは明らかに誤った動作を引き起こしてしまっている。

 もちろん、同様の現象はオートフォトファイン!など他社の自動修正機能でも起こり得るが、オートフォトパーフェクトの自動補正アルゴリズムは、どの写真に対しても均等に作用する。内部の処理エンジンが多少古いのかもしれない。

 今年のキヤノン製プリンタは、絵作りが非常に巧妙で、たいていの写真はそのまま印刷するだけで、好ましい絵作りで出力されることが多いように思う。できればオートフォトパーフェクトはオフで使いたいところだ。なお、付属の写真印刷ツール「Easy-Photo-Print」は、デフォルトで自動補正がオンになっている。補正結果が気になるようなら、設定ダイアログでオフに切り替えておくことをお勧めしたい。

絵作りを楽しむ次なるステップ

 自動補正のパラメータが多いエプソンのドライバは、すべてのモードを比較できているわけではないが、設定モードによって結果が大幅に変化する点に注意したい。標準モードは比較的万能ではあるが、人物スナップに最適化されているように感じる。風景写真などでは積極的にEPSONフィルム調や「風景」モードを活用するとよいだろう。

 エプソン製プリンタに付属している「PhotoQuicker」には、オートフォトファイン!を適用した時に写真がどのように変化するかを画面上でシミュレートする機能がある。1枚づつモード選択する必要はあるが、レタッチを繰り返すよりはずっと楽に作業が行える。写真ごとに異なるモードを適用できるので、すべて自動で印刷することに飽きたなら、次のステップとして意図的に自動補正モードを切り替える使い方をしてみてはいかがだろうか。

 その点キヤノンの製品には、次へのステップアップが存在しない。オートフォトパーフェクトにパラメータが存在しないから、というのもあるが、VIVIDモードの設定によってどのように絵が変わるかを大まかにシミュレートするなど、市販の写真印刷ソフトに移行する一歩手前のステップを用意してほしいところだ。

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[本田雅一, ITmedia ]

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