連載
» 2012年08月17日 11時15分 UPDATE

キーワード解説:キーワード解説「ゼロ・エネルギー・ビル/ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEB/ZEH)」

夏になると各電力会社は節電を呼びかける。特に国内のほとんどの原子力発電所が停止した今夏は、各地で消費者が厳しい節電を強いられている。「ゼロ・エネルギー・ビル/ゼロ・エネルギー・ハウス」は、年間に消費するエネルギー量がおおむねゼロになるという建物を指す。実現すれば、無理に節電する必要がなくなるかもしれない。

[笹田仁,スマートジャパン]

 ゼロ・エネルギー・ビル/ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEB/ZEH)とは、簡単に言ってしまえばエネルギーを消費しないビル、あるいは住宅ということになる。しかし、実際には内部で人間が活動する限り、まったくエネルギーを消費しない建物を作ることは不可能だ。そこで、建物で消費したエネルギー量を建物で発生させたエネルギー量で相殺することで「ゼロ」としている。

 ZEB/ZEHについては経済産業省の資源エネルギー庁が以前から検討しており、2009年には「ZEBの実現と展開に関する研究会」を8回にわたって開催した。その報告書「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の実現と展開について」は、ZEBを次のように定義している。

 「建築物における一次エネルギー消費量を、建築物・設備の省エネ性能の向上、エネルギーの面的利用、オンサイトでの再生可能エネルギーの活用等により削減し、年間での一次エネルギー消費量が正味(ネット)でゼロ又はおおむねゼロとなる建築物」。

 これだけを読んでもピンと来ないという人も多いはずだ。しかしこの文をよく読むと、建物のゼロ・エネルギー化につながるヒントが隠れている。少しずつ説明していこう。

 「一次エネルギー」とは、自然界に存在している形そのままのエネルギー源を指す。具体的には石油、石炭、天然ガス、原子力発電所で利用する核燃料、水力、太陽光、太陽熱などを指す。一次エネルギーに対し、電気やガソリン、都市ガスなど、人間にとって使いやすい形にしたものを二次エネルギーと呼ぶ。人間は主に二次エネルギーを利用しているが、二次エネルギー消費量を削減することは、一次エネルギー消費を抑えることにつながる。

 「建築物・設備の省エネ性能の向上」とは、建物の外装やガラスの断熱性能を高める、換気しやすい作りにする、空調に積極的に外気を利用する、照明器具などの機器の改良で機器が発生する熱を最小限に抑えるといった工夫を指す。つまり、電力などのエネルギー消費量を最小限に抑えながら快適に過ごせる建物を造るということだ。

 「エネルギーの面的利用」とは、エネルギー消費効率を1つ1つの建物単位で最適に制御するのではなく、隣接する複数の建物で形成するエリア単位で最適に制御することを指す。例えばコージェネレーションシステムなどの発電機器は1つ1つの建物がそれぞれ保有するよりも、隣接する複数の建物で共用した方がエネルギー利用効率が高まる。工場が排出する熱を、隣接する病院やオフィスで利用するという形態も考えられる。

 「オンサイトでの再生可能エネルギーの活用」とは、建物に太陽光発電システムや風力発電システムなど、自然エネルギーを利用した発電システムを導入し、そのシステムが発生する電力を利用することを指す。先に挙げたような工夫を重ねて、エネルギー消費を抑えたとしても、ゼロにすることはできない。そこで、建物に自然エネルギーを利用した発電システムを設置し、消費したエネルギー量以上のエネルギーを発生させ、そのエネルギーも利用することで、「年間での一次エネルギー消費量が正味(ネット)でゼロ又はおおむねゼロ」という条件を満たすわけだ。

 冒頭で紹介した報告書「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)の実現と展開について」では、ZEBを現実のものにするには長い時間がかかり、およそ20年後を視野に入れた取り組みと考えるべきとしているが、現実にはもっと速いペースでZEB/ZEHの実現に向けて各業界が動いている。

 経済産業省は2012年度予算で「住宅・建築物のネット・ゼロ・エネルギー化推進事業」を進めており、ZEB実現に大きく寄与する技術を取り入れたビルの建築主などに補助金を支給している。

 住宅向けには「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス支援事業」や「住宅のゼロ・エネルギー化推進事業」も進めている。これらの事業では「住宅が消費する一次エネルギー消費量をおおむねゼロにする」と、ZEB向け推進事業よりも高い目標を設定しており、この目標をクリアする住宅の建築主や施工業者に補助金を支給している。

関連記事:これを読めば「ゼロ・エネルギー・ビル/ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEB/ZEH)」がさらによく分かる!

「ゼロ・エネルギー・ビル」に最高5億円の補助金、BEMSの導入が条件に

再生可能エネルギーの活用や節電対策によってエネルギーの消費量を実質的にゼロにする「ゼロ・エネルギー・ビル」の補助金制度が始まる。新築ビルで30%以上、既築ビルで25%以上のエネルギーを削減することが条件で、高機能なBEMS(ビル向けエネルギー管理システム)も必要になる。


消費電力実質ゼロの住宅に補助金、中小事業者を対象に国交省が事業計画の公募開始

発電装置を備え、電力会社からの受電量を極端に抑える「スマートハウス」が相次いで登場している。中には、必要以上の電力を発電し、余った分を電力会社に売電可能とするものもある。国交省は、住宅の消費電力を実質ゼロにする事業を公募で募り、選ばれた事業に補助金を出す。


先進の省エネ技術を取り入れた「ゼロ・エネルギー・ハウス」に補助金350万円

太陽光発電や蓄電池のほかに、床下冷熱や日射連動シャッターといった先進的な省エネ技術を取り入れた「ゼロ・エネルギー・ハウス」の補助金制度が進行中だ。住宅向けでは高額の1戸あたり最高350万円の補助金を受けることができる。


発電システムを共用しながら、光熱費ゼロも実現可能な二世帯住宅

太陽光発電システムなどを備え、自家発電が可能な住宅が増えつつある。旭化成ホームズは太陽光発電システムと家庭用燃料電池を共用しながら、光熱費ゼロも達成できる二世帯住宅を発売する。


個人個人の感じ方を分析し、快適に過ごしながら節電できる環境を目指す

インテルはノートパソコンを利用して温度、湿度、照度といった環境データを集める実証実験を始めた。実験の狙いは何か? 実験の結果をどういうことに生かそうと考えているのか? 実証実験の担当者に聞いた。


街全体が消費する電力量の1.7倍を発電、宮城県にスマートシティが登場

スマートハウスで構成する「スマートシティ」の実験や分譲が始まっている。積水ハウスは、街全体で消費する電力を賄うだけでなく、電力会社への売電も可能なスマートシティを作った。


節電、蓄電、発電で実現、電力自給が可能な駅

電力の自給を狙って、発電装置などをビルに設置する例が増えている。JR東日本は、駅舎の電力自給を目指して改修工事を進めている。


家庭で電力を売って光熱費がゼロに、太陽光発電を備えた住宅でHEMSが広がる

電気料金の値上げが迫る中、スマートハウスで光熱費をゼロに抑える家庭が増えている。太陽光発電システムを搭載した住宅は昼間に余った電力を高い価格で売ることができるからだ。HEMS(家庭向けエネルギー管理システム)と組み合わせた効率的な電力の利用法が広がり始めた。


光熱費はゼロで10万円の売電収入、スマートエネルギーハウス実験結果発表

家庭用燃料電池、太陽光発電システム、住宅用蓄電池といった発電、充電機器を装備した「スマートハウス」が注目を集めている。では、その効果はどれほどのものなのだろうか。大阪ガスと積水ハウスは共同で続けていた実験の結果を明らかにした。


太陽光+風力+LED、JR海浜幕張駅が電力を自給自足へ

JR東日本が電力を自給自足できる駅として展開する「エコステ」の第3弾として、京葉線の海浜幕張駅のリニューアルが決まった。駅の外壁などに太陽光パネルや風力発電機を設置するほか、コンコース内にLED照明や高効率空調機を導入して、発電と節電の両面を強化する。


発電所になるビルしか生き残れない、東芝など8社がフランスで実現

フランスなどEU各国のエネルギー利用目標は、日本や米国の計画に比べると意欲的だ。例えば、2020年以降に建設されるビルは全てエネルギーを生み出すビルにしようとしている。再生可能エネルギーや電気自動車、エネルギー管理システムを結び付けて未来の都市を実現する。


エネルギー自給目指す「スマートシティ」の分譲始まる、パナホームが街まるごとで

宅内でエネルギーの出入りをゼロに近づけるスマートホーム、街全体で試みるスマートシティ、いずれも実証実験や小規模な販売が続いてきた。パナホームは2012年2月から、50〜100戸規模の「ミニ」スマートシティーの販売を開始する。まずは堺市と芦屋市で取り組む。


テーマ別記事一覧

 エネルギー管理 


Copyright© 2014 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

スマートジャパン購読ボタン