プロジェクト開始から19年、紆余曲折を経て火力発電所が稼働:電力供給サービス
中部電力の「上越火力発電所」が4基の発電設備で230万kWの営業運転に入った。1995年に東北電力と共同で開始した最先端のガス火力発電プロジェクトだったが、電力需要の低迷により計画を縮小したうえで、両社が個別に開発を進めてきた。その間には発電設備の不具合や事故も発生した。
中部電力と東北電力は1995年に合弁会社の「上越共同火力発電」を設立して、日本海に面した上越市の工業地帯に火力発電所を建設するプロジェクトを開始した(図1)。
上越市がある新潟県は東北電力の営業エリアで、隣の長野県は中部電力の営業エリアに入る。中部電力は太平洋沿岸から遠い長野県に向けて供給力を増強することが目的だった。
プロジェクトの開始から実に19年を経過した2014年5月15日に、ようやく中部電力が単独で「上越火力発電所」の営業運転にこぎつけた。LNG(液化天然ガス)を燃料に使う最先端のコンバインドサイクル方式を採用して、4基の発電設備で合計230万kWの供給力を発揮することができる(図2)。発電効率は現在の火力発電では最高レベルの58%に達する。
ただし本来の発電能力は8万kW多い238万kWである。最初に稼働した1基に不具合が生じたために、暫定的に4基すべての出力を下げている状態だ。このほかにも稼働前の2009年には、送電線の敷設工事中に作業員の墜落死亡事故が発生している。さまざまな苦難を乗り越えて、日本海沿岸から長野県まで電力を供給できるようになった。
一方の東北電力は現時点でも建設工事を開始していない。先ごろ公表した2014年度の供給計画では、60万kW級の発電設備を9年後の2023年度に運転開始する予定になっている。当初は144万kWの計画だったが、半分以下の規模に縮小した。
しかも電力会社が2019年度以降に運転を開始する10万kW以上の火力発電設備は競争入札を義務づけられていて、上越で計画中の発電設備も対象に含まれる。2014年度中に実施する入札の状況によっては、計画の再変更も考えられる。
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