発電所にトラブルはつきものだが、7月に入って大型の設備で7件発生:電力供給サービス
全国各地で梅雨が明けて、いよいよ夏の電力需要が増加する時期を迎えた。今夏は関西と九州を除いて供給力に余裕があるものの、需要がピークになる期間に大型の発電設備が運転を停止してしまうと停電の危険性もゼロではない。7月に入ってから全国で7件のトラブルが発生している。
現在のところ運転停止の影響度が最も大きいのは、電源開発(J-POWER)の2カ所の火力発電所である(図1)。長崎県の「松浦火力発電所2号機」(出力100万kW)が3月から運転を停止していて、8月中旬に仮復旧で40万kWの発電を再開する。さらに徳島県の「橘湾火力発電所1号機」(105万kW)も7月9日に運転を停止して、復旧は8月上旬になる見通しだ。
いずれも石炭を燃料に利用する火力発電所だが、松浦2号機は1997年に運転を開始して18年目であり、橘湾1号機も2000年の運転開始で15年目である。石炭火力発電所としては比較的新しい設備にもかかわらず、肝心の真夏を目前に大きなトラブルが発生してしまった。
このほかに7月に入ってからだけでも、北海道電力の「伊達発電所2号機」(石油、35万kW)、中部電力の「碧南火力発電所4号機」(石炭、100万kW)、北陸電力の「福井火力発電所三国1号機」(石油、25万kW)、関西電力の「姫路第二発電所5号機」(天然ガス、60万kW)、中国電力の「俣野川発電所1号機」(揚水、30万kW)、九州電力の「相浦発電所2号機」(石油、50万kW)が運転停止か出力抑制の状態に陥った。
前年の2013年度にも9つの電力会社すべてで火力発電所が運転を停止したが、需要のピークと重なることはなく、電力が不足する事態には至っていない。もし需要のピークと運転停止のピークが重なってしまった場合には、地域によっては予備率を20%も減らすことになり、おそらく大規模な停電が発生している(図2)。
今夏の見通しでは、需要が最大になる想定の8月に関西と九州の予備率が3.0%まで低下する。万一の対策として企業の自家発電設備などから供給力を積み増したが、それでも需要のピークとの差は九州で74万kW、関西で107万kWである。
ほかの地域でも東京と東北を除いて供給力の余裕は100万kWを下回る(図3)。北陸では22万kW、四国では24万kWしかなく、大型の発電設備のうち1基が運転を停止してしまうと供給力が不足する状況だ。
電力会社の需給見通しは保守的に立てられているため、実際の供給力にはもう少し余裕があるものの、発電所のトラブルによる電力不足の懸念は残る。こうした問題は原子力発電所が再稼働しても変わらない。
むしろ原子力のほうが運転停止から再開までに長期間を必要とすることから、さらに影響は大きい。現在のような大規模な発電所を中心とした集中型の電源構成に問題があるわけで、地域分散型への移行が急がれる。
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