地下鉄の回生電力から60世帯分を駅に供給、3カ月の運用で効果を実証:省エネ機器
首都圏の地下鉄を運営する東京メトロが、電車のブレーキで生まれる回生電力を駅の構内で利用する取り組みを進めている。2014年6月に導入したシステムが3カ月間の運用で予定通りの効果を発揮して、一般家庭で60世帯分の電力使用量を削減することができた。
東京メトロは東京都と千葉県を結ぶ東西線の「妙典(みょうでん)駅」に、電車の回生電力を駅の構内に供給する「駅舎補助電源装置」を2014年6月に初めて導入した(図1)。6月14日の始発から運用を開始して、約3カ月間の実績で1日あたり最大661kWhの電力を供給できることを確認した。
この駅舎補助電源装置は電車がブレーキをかけた時に生じる直流の回生電力を受け取って、駅の構内にある電気機器で利用できるように交流に変換する仕組みだ(図2)。最大出力は200kWで、連続して電力を供給する場合は50kWまで、あるいは3分間のうち30秒間だけ200kWの電力を供給することができる。
妙典駅で実際に運用した結果、平日では1日あたり最大で576kWh、休日では最大で661kWhの電力量を記録した。一般家庭の電力使用量(1日あたり10kWh)に換算すると約60世帯分に相当する。
最大の電力量になった7月19日(土)の1時間ごとの電力量を見ると、始発が走る午前5時台から30kWhを超えて、午後11時台まで30〜40kWh程度の電力量を安定して供給していることがわかる(図3)。妙典駅では駅構内の照明や空調、エスカレータなどの電力に利用する。
電車の回生電力は他の電車が加速する時の電力として使うのが一般的で、直流のまま架線を通して送電している。それでも余剰分が生じて、通常は使われないまま熱として廃棄する。東京メトロは回生電力を有効に活用するために、駅舎補助電源装置の導入を決めた。2014年度中に妙典駅に続いて7つの駅に設置する予定だ。駅舎補助電源装置は三菱電機が開発した。
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