電力を「空気」でためる蓄電システム、風力発電の出力変動の吸収に活用へ:蓄電・発電機器
再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、出力変動を吸収する蓄電システムの開発も加速している。神戸製鋼所、早稲田大学スマート社会技術総合研究所、エネルギー総合工学研究の3者は、電力を圧縮空気として貯蔵する蓄電システムの開発に着手した。
神戸製鋼所、早稲田大学スマート社会技術融合研究機構(以下、早稲田大学)、エネルギー総合工学研究所(以下、IAE)の3者は2015年6月19日、長寿命かつ信頼性と環境性に優れた「断熱圧縮空気蓄電システム」の開発に着手したと発表した。
同蓄電システムは電力を圧縮空気と熱として貯蔵する。放電する必要がある場合には貯蔵した圧縮空気と熱を使い、タービンを回して発電する仕組みだ。汎用機器で構成が可能なシステムであり長寿命で燃料電池のように希少物質を使用する必要がなく、出力とエネルギー貯蔵量を自由に組み合わせられるといったメリットもある。
断熱圧縮空気蓄電システムの開発目的は、再生可能エネルギーの出力変動の抑制や電力需要のピークシフトといった平準化への利用だ。実証運転では風力発電設備に接続する(図1)。風力や太陽光などの再生可能エネルギーを利用する発電設備は、天候よって出力が大きく変動する。受電力は需要と供給を常に一致させる必要があり、これが崩れると周波数が不安定になり停電を引き起こす可能性がある。そのため電力を一時的に貯蔵して出力変動を吸収する蓄電システムが求められており、さまざまな技術開発が進められている。
今回の開発において神戸製鋼所は、スクリュー圧縮機、スクリュー発電機、熱貯蔵タンク、空気貯蔵タンクなどから構成される機器の製造を担当する。早稲田大学は断熱圧縮空気蓄電システムを最適に制御するアルゴリズムおよびソフトウェアの開発を行い、IAEは風力発電の出力変動の緩和や計画発電を実現するためのシステム設計、実証運転、評価を行う。
断熱圧縮空気蓄電システムの開発は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「電力系統出力変動対応技術研究開発事業」の一環として実施される。3者は今後、2016年度にMW(メガワット)クラスの実証機の試運転を行い、2017年度以降の実証運転の継続と商品化を目指すとしている。
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