富士山の景観を守れ、太陽光や風力発電設備の設置を規制へ:法制度・規制
静岡県富士宮市は市の約半分が国立公園の区域内で、富士山などをはじめとする豊富な自然環境を有している。同市はこうした自然景観と再生可能エネルギーによる発電設備の調和に向けて2015年7月1日に新たな条例を施行した。一部の太陽光および風力発電設備の設置が規制される。
静岡県富士宮市は2015年7月1日、世界文化遺産である富士山などの自然環境と再生可能エネルギーによる発電設備の調和を図るため、「富士宮市富士山景観などと再生可能エネルギー発電設備設置事業との調和に関する条例」を施行した。この条例により対象の発電設備を設置する電力事業者は届け出と承認が必要となった。
今回の条例で規制の対象となるのは、太陽光パネルの面積の合計が1000平方メートルを超える太陽光発電設備と、高さ10メートルを超す風力発電設備だ。これらの発電設備を設置する電力事業者は、事業着手の60日前までに市長への届け出と承認が必要になる。ただし太陽光発電設備については、建築物の屋根・屋上に設置するものは対象外となる。
さらに今回富士宮市は、地域を象徴する優れた景観を持つ場所や、豊かな自然環境が保たれており学術上必要な自然環境を残す地域を「抑制区域」として指定した(図1)。この抑制区域については原則として発電設備の設置が認められない。ただし一部の規制区域において、太陽光パネルの総面積が1万2000平方メートル以下の発電設備に関してはこれに限らない。
今回の条例では適用除外となる小規模な太陽光・風力発電設備についても、地域との調整や景観や安全上の視点から「小規模な再生可能エネルギー発電設備設置事業に関するガイドライン」を策定した。例えば太陽光パネルの色彩は、周辺の景観になじむよう明度・彩度が低いもの、もしくは黒や濃紺などで光沢や反射が少なく模様が目立たないもの使用するように推奨している。
富士宮市は市の約半分が富士箱根伊豆国立公園の区域内であり、その他にもさまざまな自然観光地を持っている。今回の規制はこうした観光資源を市民共通の財産として維持していくことが目的だ。2013年には同じく富士山を観光資源とする隣の富士市も、太陽光発電設備の設置自粛を要請する行政指導方針を施行している(関連記事)。
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