日本の省エネ技術を米国のデータセンターに、直流給電+太陽光+蓄電池の効果:省エネ機器
世界で最も多くのデータセンターが集まる米国で日本が誇る最先端の省エネ技術の効果を実証する。電力の損失が少ない高電圧の直流給電システムを中核にして、太陽光発電と蓄電池を活用しながら15%の省エネを目指す。電力消費量の大きい空調や照明も高電圧の直流で動作させる。
IT(情報技術)の研究で有名な米国テキサス大学のオースチン校の構内に「先端コンピュータセンター(Texas Advanced Computing Center、略称TACC)」がある。世界で最先端のコンピュータシステムが集まるデータセンターで日本の省エネ技術を実証するプロジェクトが始まる(図1)。
日本国内でデータセンターの省エネ技術の開発・運用に取り組んできたNTTファシリティーズが高電圧の直流給電システムをTACCの中に構築して、1年間かけて効果を実証する計画だ。実証システムは380V(ボルト)の高電圧による直流を使って、データセンター内のサーバーや空調・照明に電力を供給する(図2)。
サーバーをはじめ空調や照明を含めて通常は100〜200Vの交流の電力を受けて動作する。実証システムでは各機器が380Vの直流で動作するための設備を開発する予定だ。さらに太陽光発電システムとリチウムイオン電池を導入して、太陽光発電の電力量に応じて商用電力の利用量を制御する運用方法にも取り組む。高電圧の直流給電による省エネ効果に加えて、再生可能エネルギーを利用して環境負荷の低減を図る。
大量の電力を消費するデータセンターでは省エネ技術と再生可能エネルギーの導入が不可欠になっている。従来のシステムでは商用電力の交流を複数回にわたって直流に変換しながらセンター内の機器に電力を供給するため、変換のたびに電力が損失する問題がある(図3)。
一方で高電圧の直流給電システムを使うと、交流から直流に変換する回数が少なくなって電力の損失を減らすことができる。NTTファシリティーズの試算では給電の効率が15%向上する。テキサス大学の実証プロジェクトでも15%の省エネ効果を目指す。
省エネ効果の測定方法には「DPPE(Data center Performance Per Energy)」を採用する。DPPEは日本で開発したデータセンターの省エネ指標で、設備全体のエネルギー消費効率を総合的に評価するほか、再生可能エネルギーによるグリーン電力の利用度も反映させる(図4)。
経済産業省を中心にDPPEの国際標準化を進めて、日本の省エネ技術を海外に展開するための効果測定方法として普及させる方針だ。テキサス大学の実証プロジェクトにDPPEを適用することで、データセンターの本場である米国内の認知度を高める狙いがある。実証プロジェクトは2017年3月まで実施する。
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