セマンティック検索のHakiaがサイトをリニューアル
GoogleやYahoo!、Microsoftといった大手検索エンジンとの差別化を図ることが狙いだというが、実際のところは――。
セマンティック検索エンジンを手掛ける新興企業の米Hakiaがサイトをリニューアルした。GoogleやYahoo!、Microsoftといった大手検索エンジンとの、より一層の差別化を図ることが狙いだ。Hakiaの新しい検索エンジンは完全にタブ化されており、「信頼できるサイト」というタブには、専門家によって吟味された検索結果が表示されるようになっている。Microsoftが買収したPowersetや、Wikiaなどに続いて、HakiaもGoogleとは異なる検索体験をユーザーに提供しようと努力しているのだ。
リニューアルされたHakiaの検索サイトには、「ニュース」「画像」「信頼できるサイト」などのタブが追加され、従来型の検索アプローチとの差別化が図られている。従来型の検索アプローチとは、GoogleやYahoo!、Microsoftといった検索大手が検索エンジンの誕生当初から採用している、ただ青色でリンク先を表示するだけのアプローチのことで、同社はこれを「10 blue links」のアプローチと呼んでいる。
Hakiaはセマンティック検索技術を採用し、自然言語処理を活用することで、検索クエリーからより多くの意味を引き出そうとしている。
Hakiaの検索サイトの新しいユーザーインタフェースには、「すべての結果」「画像」「ニュース」などのタブのほか、同社の既存のソーシャルネットワーキングサービス(SNS)である「Meet Others」向けのタブも用意されている。この機能を使えば、ユーザーは同じような情報を検索している人たちと情報を交換したり、メールをやりとりしたりできる。
また新エンジンには検索キーワードをカテゴリー別に分類したページも用意されており(10 blue linksのアプローチを避けるため)、さらに便利なことには、「my Hakia」というカスタマイズ機能も用意されている。この機能を使えば、ユーザーはサインインして、自分の検索結果をパーソナライズできる。検索結果は縦3列の枠に分類して表示され、当然ながら、3つ目の枠は広告用となっている。
だが何と言っても、一番素晴らしい新機能は「信頼できるサイト」だろう。「これは通常の検索結果のほかに当社が独自に用意したものだ」とHakiaの社長兼COO(最高執行責任者)を務めるメレック・プラトコナーク氏は10月6日、わたしの取材に応じて語っている。
Hakiaは今年4月から、この「信頼できるサイト」機能について語っていた。この機能は、保健医療分野の検索クエリーについて、米医学図書館協会(MLA)が審査したサイトから、図書館員や専門家が吟味した検索結果を表示するというもの。このページでは、同じ領域の専門家たちの意見を受け付けるピアーレビューのプロセスが採用されたり、厳格な編集規制が設けられたりなど、正しい情報の提供と商業的な偏向の排除に万全が期されている。
狙いは、「ユーザーが本当に信頼できるサイト」を明確に区別して提示することだ。Wikipediaなどのサイトを介してユーザーが自分で情報を記録できるようになった今の時代、そうしたクラウドソーシングの手法には、不正確な情報のはんらんを引き起こしている側面もあるからだ。
わたしもこの「信頼できるサイト」を試してみたが、機能に問題はなかった。ただし、今のところ対応しているのは健康や環境に関する検索クエリーについてのみだ。金融、法律、旅行などの分野もカバーすべく、Hakiaは現在取り組みを進めているところという。
例えば「片頭痛を予防するには?」といったクエリーを試してみるようプラトコナーク氏に言われたので、実際、試してみたところ、医療機関のMayo Clinicなど専門的な情報を提供しているサイトが幾つか表示された。
Googleで同じ検索を実行すれば、35万件程度の検索結果が表示されるはずだ。Hakiaは、こうした検索結果は「何ら区別されていないものであり、つまり価値は低い」と指摘している。なぜなら、Hakiaの「信頼できるサイト」とは異なり、どのサイトを信頼し、どのサイトを無視すべきかが、ユーザーにはすぐには分からないからだ。
わたしはHakiaの取り組みを評価する。だが、どこかしら、PowersetやWikiaの試みを思い起こさせられるのも事実だ。GoogleやYahoo!などの大手検索エンジンとの差別化を図りたい新興勢力にとって、今やセマンティック技術やタブ、ソーシャル検索は避けては通れない選択肢なのかもしれない。
事実、Ask.comも10月6日、独自のセマンティック検索エンジンを再開させている。だが残念ながら、Ask.comであれ、Hakiaであれ、Cuilであれ、Wikiaであれ、どれだけ目新しいアプローチを示そうとも、Googleという巨大な大砲には太刀打ちできそうにない。
気が済むまで差別化を試みるといいだろう。だがそれを、「検索の戦いでGoogleを負かすためだ」などとは言わないでほしい。「Googleにでもほかの企業にでもいいから、既存の検索技術に対する付加価値として認めてもらい買収してもらいたいからこそ、差別化を図っているのだ」ということを素直に認めてほしい。MicrosoftがまずPowersetを買収したことで、皆、悔しい思いをしているに違いない。
まだご存じないようなら教えて差し上げるが、検索エンジンの戦争はもう終わったのだ。それはYahoo!やMicrosoftにとってだけではなく、Hakiaにとっても、Wikiaにとっても、Cuilにとっても同じことだ。吸収される準備をした方がいい。
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