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第4回 相手を説得する──「賛成タイプ」と「反対タイプ」平本メソッド 行動の指針

第4回目は、「賛成タイプ/反対タイプ」です。比較的、判断しやすいタイプですが、複合タイプもあるので、対応に工夫が必要なことも。反対タイプに対応する場合を中心に紹介します。

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平本メソッド 行動の指針
  連載タイトル
1 心の動きに合った会話で相手を説得する
2 相手を説得する──「人の評判タイプ」と「自分の納得タイプ」
3 相手を説得する──「自分のためタイプ」と「人のためタイプ」
4 相手を説得する──「賛成タイプ」と「反対タイプ」
5 相手を説得する──「可能性タイプ」と「必要性タイプ」
6 相手を説得する──「1人でタイプ」と「誰かとタイプ」

 どんな物事にも、そのことに共通点を見出す傾向のある人と、相違点を見出す傾向がある人がいます。例えばクルマを買うお客さんに対応した場合、「このクルマ、いいんですよ」と店員が言ったら、「そうですね」と賛成する人と、「いや、そうは言うけれど、ここが足りないんだよね」「ここはイマイチなんだよね」と反対する人がいます。これが「賛成タイプ」と「反対タイプ」です。

 実は、この「賛成タイプ/反対タイプ」には複合タイプがあって、「反対+賛成タイプ」と「賛成+反対タイプ」があります。反対+賛成タイプの人の場合だと、クルマを買うときでも最初は、アレが嫌だ、コレが嫌だと、さんざん文句を言ってきます。すると当然店員は「この人は買わないな」と思いますね。ところが最後になって「でも結局、このクルマがいいよね」というように賛成で終わります。

 このタイプは会議でもよく見られます。例えば、進行役が「じゃあ、今度のイベントはこれでいくってことで、みなさん、いいですね」と決まりそうなときに、「いや、ちょっと待って!」と差し止めて、これがダメ、アレがダメ、それがダメ、と言い出します。そうすると、「これダメですか。じゃあ、どうしましょう。止めておきますか?」という流れになりますね。すると、「いや、でも、結局はこれだよ」と賛成するという感じです。だったら最初から賛成してよ……と思うんですが、反対+賛成タイプの人は、決める前に一通り反対しておきたいわけです。

 逆に、賛成+反対タイプの場合は、「じゃあ、これをやりましょう!」というと、「おお、それいいですね」「ああ、それもいいですね」と賛成してくれます。しかし、この人、やってくれるな、と思っていた矢先に、「でも、価格を考えると、これはちょっと市場に合わないですね」とかなんとかいって、最後にひっくり返してきます。だったら最初から言ってよ、と思ってしまうのですが、これも傾向なので、仕方がないことなんですね(笑)。

新規事業には「賛成タイプ」、マンネリには「反対タイプ」が適任

 ビジネスの場合、新規事業に力を入れたいときは、賛成タイプの部下や仲間を集めるといいです。これから新しく始めようという場合には、「それいいですね」「面白いかもしれない」「そういう切り口、いいですね」「それで客層を広げられるかもしれない」「こういう人が、いいかもしれない」など、いいですね、といいながら賛成してくれる人を集めたほうが成功します。こう言われると、「そうかな、じゃあやってみようか!」という気になるんですね。

 ところが、この時に「それ、マズイんじゃないの? ウチの評判を悪くしますよ」「いや、それはマズイと思うんですが……」「こんなものを出したら品が下がるから」「だいたい○○さんが、そんなことをやっちゃったら……」という人ばかりになると、「やっぱり止めようかな」と、やる気が萎んてしまいますよね。

 このように、何か思い切って新しいことをやりたいとか、絶対これは成功させたい、という場合には、賛成タイプの人と組んでやるほうがいいです。ところが、事業が長く続いてマンネリ化しているとか、ちょっと停滞気味だとか、物事が動かなくなっている場合は、反対タイプの仲間や部下がいるといいのです。

 「ウチはこの事業で5年、特にヒットはしなかったけれど、それほど落ちもせず、そこそこやってきたけれど、どうだろう?」と聞いたときに、「これはいいと思いますよ!」というように賛成されたら、ダメですよね。こんなときは、「ここがマズイんじゃないか」「ここを変えたほうがいいのではないか」とか「ここは違いますよ」「あれはこうしたら…」というように、反対タイプがいっぱいいると活性化します。

 古い大手企業だと反対タイプの人がたくさんいるほうが活性化します。でも、ベンチャー企業のように「これから事業を立ち上げよう!」「さあ、みんなで夢を実現しよう!」というときに、「いや?、夢ばかり言ってもねえ……」みたいな反対タイプの人がいると、勢いが落ちてしまいますね。

 モノを売る際には、基本的にはお客さんが賛成タイプだと想定して応対していきます。「これ、いいですよ」と言って薦めるとか、お客さんに「いいですね」と言ってもらう接客です。ところが、「どうも、このお客さんは反対タイプだな」と思ったら、買ってもらいたくても、買わせないような応対をする、というテクニックがあります。以下の例は、反対タイプのお客さんにPCを売るという設定です。

店員 「いかがですか?」

お客 「軽いし、いいんですけど、ちょっと……最新のものじゃないし」

店員 「確かに最新ではないですねぇ、ちょっと違いますよね。じゃあ、もう、今回は止めておいたほうがいいですね?」

お客 「う?ん……」

店員 「ちょっと考えてきていただいて、今回のこれはもう、ナシってことで」

お客 「それ、他の良いところはないんですかね」

店員 「いや、まあ、最新じゃないってことは、お客さん、よくご存知なので。今回はナシにして、考えてきていただいた方が。また今度、いいな、と思われたときに、来ていただければ結構ですので……」

お客 「でも、値段がずいぶん、安くなっているんですよね」

店員 「いや?、でも、正直、ウチはあまりマケる方じゃないんですよ」

お客 「でも、もうちょっと見たいんですけど……」

店員 「いやいや、これはどうでしょう。もっと最新のものがいろいろあると思いますので、今回のこれはパスして、また探してみられたらどうですか?」

お客 「それも候補の1つなんですよ。もうちょっと見せてください」

店員 「いや、だって、おっしゃってましたよね、これ、最新じゃないんですよ。お買いにならないほうが……」

お客 「いや、買いますよ」

店員 「ひっかかるところがあるのを無理に買わないほうがいいと思うんですよ、私としては」

お客 「いや、買います!」

店員 「そうですか? じゃあ、まあ、ご自身で決められたんだったら……」


 どうでしょうか。この例はかなり脚色してますが、実際にはなかなかニュアンスが難しく、下手すると、本当にチャンスを奪ってしまうことになります。最後の最後の切り札です。また、以下に紹介する例のように、9割がた買うと決めているのに、「いや、でもね?」といっているような場合にも効果的な方法です。

お客 「迷いますね?。Aもいいんですけど、Bも……両方は買えないし」

店員 「Bのどういうところが良いと思われますか?」

お客 「デザインがいいですね」

店員 「じゃあ、Bってことで決まりですね。良さをご存知ですものね」

お客 「いや、でもデザイン以外は……」

店員 「デザインからみたらBってことですね」

お客 「でも、総合的にみるとAかなあ……」

店員 「デザインがいいっておっしゃるとおり、Bだと思うんですよ」

お客 「デザインはいいんですけどね、確かにね……」

店員 「じゃ、こちらを(Bを)どうぞ、どうぞ」

お客 「いや、今はやっぱりAだな」

店員 「あ、そうですか。まあ、じゃあ、ご本人で決められたんだったら、しょうがないです」

お客 「はい」

店員 「諦めます」


 反対タイプの人には、最後に負けてあげることが大事です。「私の負けです、アナタの勝ちです。アナタの意見の方にしましょう」という感じです。最後の切り札として、使ってみてください。

おまけ 反対タイプのあの人をデートに誘う場合

 賛成タイプの人をデートに誘う場合は、「○○に行こうよ」といえば賛成してくれるので、それほど問題はありません。問題は反対タイプの人を誘う場合です。

 まず、デートの候補を2つ用意しておきます。例えば、ディズニーランドと映画にして、反対タイプの彼女を誘うとしましょう。彼女は、もし行くんだったらディズニーランドで、映画館で映画を見るのはあまり好きじゃないだろうという人。普通に考えると、「ディズニーランドに行こうよ」と誘いますね。でも彼女は「ディズニーランドは確かに好きだけど、もう何度も行ったし……」と反対してきます。反対タイプなので、一度は反対するんですね。

 では、どうしたらいいかというと、「ディズニーランドがいい? それとも映画がいい?」と聞くんです。こう聞くと、ディズニーランドの方が好きなので「映画は○○だし△△だし××だし……(だからあまり観たくない)」と言うはずです。そこで「いや、でもこの映画はいいよ」と受けたり、彼女が「でも映画を観るんだったら、ディズニーランドの方がいい」というのに対して、「まあ、ディズニーランドも確かにいいかもしれないけれど、映画も面白いよ」と言ったりして、デートをするかしないかで反対させるのではなく、映画に行くか、ディズニーランドに行くか、で反対させるようにするんです。

 賛成タイプの人を誘う場合は「デートしようよ」でいいんですが、反対タイプだと、「デートしようよ」「嫌だ」「しよう」「嫌だ」……と続いて、「嫌だ」で終わってしまうんですね。そこで、デートをする、ということは前提にして、「じゃあ、映画とディズニーランドだったら、どっちがいい?」「食事と映画だったらどっちがいい?」というように、2つの候補を出して、どちらかに反対させるようにするんです。そうすると、1つを反対して残りを選びます。「じゃあ、しょうがないな、ディズニーランドでいいよ。だって、私、映画が嫌いなんだもん」みたいな感じにもっていけます。イエスかノーではなくて、AかBを選ばせる、という方法です。

 例えば、「カフェに行く方がいい? 飲みに行くほうがいい?」と聞いてみる。すると「私、あまりお酒好きじゃないから」と彼女が答えたとします。そこで、「じゃあ、しょうがないな、カフェにする?」という流れです。

 彼女の方からお酒が好きだ、と言ってくれた場合、賛成タイプなら「じゃあ、飲みに行く?」と誘えば、「うん」といってくれるかもしれません。ところが反対タイプだと、自分でお酒が好きだと言っておきながら、「でも、最近飲んでばかりだし……」と、誘うと反対してくるわけです。そこで、「じゃあ、お酒を飲むのとカフェに行くのだったら、どっちがいい?」と聞くわけです。こうなった時点で、デートをする/しないで反対の余地はありません。飲みに行くか、カフェに行くかの余地しかないわけです。


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