第8回 教える前に「キー・フレーズ・リスト」を作っておこう:新入社員がやってくる──専門知識を教える技術(3/5 ページ)
ガンガン教えてください!!――学習者に学ぶ姿勢ができたとすると、次に問われるのは「教える側」の準備。「先生」の教え方が下手だったら、学習成果は上がりません。まずは「キー・フレーズ・リスト」を作っておきましょう。
キーワードの順番に注意する
キー・フレーズには、たいていそのフレーズを構成する重要な「キーワード」があります。特に、そのフレーズで初めて出てくる新概念を表すキーワードに注意してください。
例えば下記のフレーズでは
- ノードとは、ネットワーク上の機器のこと
- レイヤー1「物理層」は、ノードがネットワークにつながるところまで
1番は「ノード」という新概念を説明しているフレーズですから、「ノード」がキーワード。2番は「物理層」がキーワードです。すべてのフレーズについて、何が新概念キーワードになっているかを確かめたら、下記事項をチェックします。
- 1つのフレーズに、新概念キーワードは1つだけになるようにする
要するに、1つのフレーズに新概念キーワードを2つ以上出してはいけないわけです。一度に2つの「分からないこと」が出てくると、とたんに理解のハードルが上がってしまうので、ここは厳密に守るようにします。ただし、次のようなケースは除きます。
- ○○について大事なのはAとBです
- Aとは……
- Bとは……
この場合、1フレーズ目の「AとB」はそのすぐ後に出てくるA・Bそれぞれの解説の予告をしているだけなのでOKです。しかし例えば下記のケースはいけません。
- レイヤー1「物理層」は、ノードがネットワークにつながるところまで
- ……(途中、何行か別な話があって)……
- ノードとは、ネットワーク上の機器のこと
「ノード」と「物理層」のフレーズを前後入れ替えて、間に別なフレーズをいくつか挟むと上記のようになります。これだと1フレーズ目に「物理層」と「ノード」という新概念キーワードが同時に出てしまい、その上「ノード」の説明がすぐ後にないので理解しにくくなってしまいます。
すでに学習内容を理解している人なら、多少順番が入れ替わったところでなんとも思わないのですが、これから勉強しようとしている初心者にはこういうちょっとした順番が大事なのです。
実際この問題は非常によくあるもので、教え方の下手な人のインストラクションを見ていると、1フレーズの中に新概念キーワードを2つも3つも入れてしまっているケースが多いんですね。
この「キー・フレーズの順番(=キーワードの順番)」を適切にコントロールするためには、やはり事前に紙に書いておかなければなりません。頭の中で考えているだけではチェックすることは難しいので、
- キー・フレーズ・リストを事前に準備して、
- 1フレーズに新概念キーワードが1つ以下しかないようにチェック
してください。ある分野のプロになってしまうと、どのキーワードが初心者にとっての「新概念」にあたるのかさえ、すぐには分からなくなることもあります。ですから、必ず「キー・フレーズ・リスト」という形で明文化しておくことが重要です。
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