第8回 教える前に「キー・フレーズ・リスト」を作っておこう:新入社員がやってくる──専門知識を教える技術(4/5 ページ)
ガンガン教えてください!!――学習者に学ぶ姿勢ができたとすると、次に問われるのは「教える側」の準備。「先生」の教え方が下手だったら、学習成果は上がりません。まずは「キー・フレーズ・リスト」を作っておきましょう。
シングル・ミーニングに注意する
もう1つ、これも手軽にチェックできるポイントがあります。それは、
- 同じ単語は1つの意味だけで使うこと
です。例を挙げましょう。図2には下記のような文面がありました。
- 2.レイヤー1「物理層」は、ノードがネットワークにつながるところまで
- 3.レイヤー2「データリンク層」は、隣接するノード間のデータの授受まで
- 4.レイヤー3「ネットワーク層」は、ほかのネットワークにあるノードとも接続できるようになるまで
この中では例えば「レイヤー1」の話が2フレーズ目に、「レイヤー2」の話が3フレーズ目に、という具合でレイヤーの数字とフレーズの番号が微妙にズレています。こういうズレがあると、「2」なら「2」という数字がフレーズ番号を指しているのかレイヤー番号を指しているのか、会話の途中で混乱を引き起こしがちなのでちょっと心配です。
かえって番号が大きくズレているときのほうが混乱しにくく、微妙なズレは紛らわしいものです。そこで例えばフレーズ番号のほうを1、2、3ではなくa、b、cのような別な番号体系を使うことも検討しましょう。「教える」プロはこんなところまで気を使います。
シングル・ミーニングについてはもう1つ、例えば上の事例では「ネットワーク」という用語が危ないですね。
- レイヤー1「物理層」は、ノードがネットワークにつながるところまで
このフレーズでの「ネットワーク」は、厳密に言うとネットワークの通信媒体であるケーブルあるいは無線LANの電波のことです。一方で、
- レイヤー3「ネットワーク層」は、ほかのネットワークにあるノードとも接続できるようになるまで
このフレーズで「ほかのネットワーク」とある時の「ネットワーク」は、厳密に言うとTCP/IPでいうところのサブネットレベルのネットワークのことを言っています。さらに「ネットワーク層」と「層」がつくとまたそれとも違う概念になります。つまり「ネットワーク」という一単語が場所によって違う意味に使われていることになるわけで、これは初心者にとっての理解の負担を著しく上げてしまうため、かなりの問題なんですね。
- どうしてもやむを得ない場合もありますが、できるだけ1つの単語で1つの意味だけを表す
ように気を付けましょう。それが「シングル・ミーニング」です。それが難しい場合には、同じ単語で別な意味を表している部分についてはしっかり説明をすることです。そうしないと初心者は混乱してしまいます。「シングル・ミーニング」の原則も、教えることに慣れていないとなかなか守れないことなので、ぜひ気を付けてください。
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