わがまま→思いやり:先読み『アイデアパーソン入門』
あの『考具』の著者である加藤昌治さんの新刊の一部が発売前に読める先出し『アイデアパーソン入門』。第2回は「わがまま→思いやり」です。この順番、もう絶対の“鉄の掟”なのでした。
わがまま→思いやり。この順番、もう絶対の“鉄の掟”だと思ってます。デザイナー・川崎和男先生の言葉です。ちょっと引用してみましょう。
「自分のわがままを精一杯発揮して、そのわがままな発想を思いやりに変えていく。(中略)デザインというのは、自分のわがままな発想を、社会から『これは思いやりのあるわがままなんだな』って思ってもらえる、そういう形に変えてあげることなのです」
最初にわがまま、それを思いやっていくことで、いいデザインができる。一般的なビジネスパーソンの仕事ではわがまま=アイデアという選択肢をたくさん出すこと、思いやり=選んだアイデアを、企画として整えていくこと、になります。予算、納期、価格設定……などアイデアを具現化していく過程はまさに思いやりの作業です。わがままと思いやりのバランスがいいと、関わる人、対象となる人の全員が楽しくて幸せになる結果が待っています。
順序が逆になった場合を想像してみてください。思いやりから始めるということは、「この予算で何ができるかな?」「単価300円でできるものなんてあるの?」そんな会話がスタートですよ。いきなり現実感ありあり。よっぽどガッツのある人でなければ、無難で普通の、面白くない提案になりそうだな……と簡単に予想がつきます。
アイデア、から始まると結果的に個性的な提案(企画)が増えてきます。当然ですね。途中ではわがままなアイデアが出そろっているはずなんですから。それは提案先にとっても新しいはずです。
最終的に、何が選ばれるかは分かりません。無難なモノに落ち着くかもしれない。それはそれでいいじゃないですか。大事にして欲しいのはそこに至るプロセス。アイデアパーソンであるあなたの仕事は、新しくて個性的な(そしてできれば選ばれるような)選択肢を出し続けることです。だって、そうじゃなかったら、あなたがやる意味ないですよね?
編集部から
今回の先読み『アイデアパーソン入門』、いかがだったでしょうか? わがままというと一瞬自分勝手でネガティブな印象を抱きますが、アイデアは自由奔放であるべきなのでしょう。ただし、提案(企画)段階でもわがまま満点だと実現が難しくなりそうです。現実的な線を探る作業が思いやり――なのかもしれなませんね。
次回の先読み『アイデアパーソン入門』は「自分の記憶を24時間循環風呂にする」です。お楽しみに――。
著者紹介:加藤昌治(かとう・まさはる)
大手広告会社勤務。1994年、大手広告会社入社。情報環境の改善を通じてクライアントのブランド価値を高めることをミッションとし、マーケティングとマネジメントの両面から課題解決を実現する情報戦略・企画の立案、実施を担当。著書に『考具』(阪急コミュニケーションズ刊、2003年)、『アイデア会議』(大和書房刊、2006年刊)がある。
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