「デルは、IT業界全体に対して2000億ドルのIT投資の節約を約束します」――。デルのジム・メリット(Jim Merritt)社長は、同社が目指すクラウド時代の新たな戦略「E3(Efficient Enterprise Ecosystem)」を発表した。
デルは4月1日、2010年代を仮想化技術やクラウドコンピューティング、ユビキタスなデータアクセスによる「バーチャル時代」と定め、「柔軟かつシンプルで、特定のベンダーにロックインされないクラウド関連ソリューションを、より購入しやすい価格で提供する」(メリット氏)ために新たなエコシステムを掲げた。
そのコミットメントとして、既存IT環境を維持するために費用を大幅に削減するとした。そして、そこから得られる原資を技術革新に投資することで、2000億ドルの節約をうたった。
「日本企業のIT投資はIT競争力の成長に見合っていない」――。こう切り出すのは、システムズ・ソリューションズ統括本部長の町田栄作氏だ。25年前に比べてIT投資額は20倍以上に伸びており、IT投資成長率は米国よりも高い。にもかかわらず、世界経済フォーラムがまとめたIT競争力の国際比較(2010年)では、日本は21位に沈む。
町田氏によれば、投資が成長に見合わない大きな理由は、投資の8割を既存IT環境の維持管理に費やしているからだという。しかも、その50%は計画や導入、運用、サポートといった人件費が占めている。つまり、成長のための戦略的な投資は、投資額全体の2割に過ぎず、ほとんどを垂直化かつ硬直化した既存システムが食いつぶしていることになる。
今回発表された「E3」のキーワードは、標準化、シンプル化、自動化だ。特定のベンダーに偏らない業界標準技術を重視し、ユーザーが使いやすいシンプルで柔軟なシステムやサービスをクラウド経由で提供する。例えば、モバイル端末からデータセンターまでを仮想化し、XaaSによりユーザー自身がセルフインテグレーションできる環境の実現を目指すという。
一般にクラウドコンピューティングは、クラウドサービス事業者(クラウドプロバイダー)が提供するソリューションをユーザーが利用するパブリッククラウドと、データセンター内に企業が自社のビジネスに適した形で独自に構築するプライベートクラウドの2種類に分けられる。
デルは、プライベートクラウド向けに、PowerEdgeサーバの「M910」「R910」「R810」および「R815」を投入した。また、パブリッククラウド向けには、新たにクラウド(Cloud)の頭文字を採用したPowerEdge Cシリーズ「C6100」「C2100」「C1100」を発表。サーチエンジン用にフルカスタマイズで生産し、2008年にベストセラーとなったサーバ「Dell XS-23」などから得られたノウハウを活用したシリーズとなっている。なお、同社製サーバは、米サーチエンジントップ5社のうちの3社、中国最大規模のポータルサイトなどに導入実績がある。
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