お勉強モードは終わった――IBMが考える今後のクラウド事業
「日本のCIOは、テクニカルバックグラウンドを持たない、総務部門や業務部門の出身者、兼任者が多い」――日本アイ・ビー・エムが、クラウド事業における自社の強みと今後の施策について説明した。
日本アイ・ビー・エム(以下IBM)は1月14日、クラウドコンピューティング事業に関する説明会を開催し、自社の強みと今後の施策について説明した。
「クラウド“お勉強モード”」からの脱却
IBMでは2009年、世界の中堅中小企業から大企業のCIO(最高情報責任者)に向けて、クラウド導入に関する独自調査を実施。これによると、半数以上の企業から「今後のクラウド導入を前向きに検討している」との回答が得られ、特に日本企業は、世界平均と比較しても導入に積極的な傾向が見られたという。
日本IBMでクラウド・コンピューティング事業を担当する吉崎敏文執行役員は、「2009年の前半までは、クラウドに対して“お勉強モード”、まだまだ様子見という企業が多かった。しかし9月、10月くらいから、『まずは試してみよう』という取り組み方に変わってきた」と説明する。
IBMのクラウド、4つの強み
こうした背景を踏まえ、日本IBMでは企業向けクラウド施策を強化。世界にさきがけて「Team Cloud」と呼ばれる社長直属のクラウド統括組織を設け、製品・技術開発や顧客への提案を行っていくという。
吉崎氏は、IBMの強みを4つの観点から分析する。
- 技術リーダーシップ
40年の実績を持つ仮想化技術を前提とし、汎用機からIAサーバまで異なる機種を混合したマルチベンダー/マルチプラットフォームをクラウド管理対象に置く。「サーバ、ストレージ、ネットワーク、ソフトウェアを組み合わせてワンストップで提供するIBM CloudBurstを利用すれば、数日でクラウド環境の構築が可能だ」(吉崎氏) - ソリューション・ポートフォリオ
社内の数十の業務を分析し、クラウドに向いている分野を分析。自社で使っている50以上のアプリケーションをクラウド環境で試用し、そのデータを基に製品化して、システムのスキルを蓄積しているという。 - 豊富なクラウド導入実績
社内で11万人以上の研究・開発者が2年以上にわたって製品を使用していることを強調。顧客プロジェクトの経験は200以上、公開事例は55件に上るという。 - グローバルの英知とスケールメリット
クラウド検証センターは10カ所、クラウドデータセンターが9カ所と、世界規模のインフラによるスケールメリットも強みの1つと説明する。
導入時の現場の不安を解消
企業導入が加速しているというクラウドだが、中には「まだうちの会社には関係ないだろう」という考えているケースもあるようだ。吉崎氏はこの理由として「日本のCIOは、テクニカルバックグラウンドを持たない、総務部門や業務部門の出身者、兼任者が多い」ことを挙げる。
こうしたケースでは、「CIOよりもさらに現場の業務に近い情報部門担当者に、クラウドの選定が任されている」。情報部門による選定だと、「クラウドの導入に自分たちのリソースを奪われてしまうのではないか」「仕事の仕方が大きく変わってしまうのではないか」という不安が起こりうるという。
吉崎氏は、こうした不安を解決する提案を行えるような「クラウドスペシャリスト」を日本IBM内で育成するため、今後5年間で100億円を投資すると説明。業務の各分野を網羅できるよう、パブリッククラウド、プライベートクラウド、それらをかけあわせたハイブリッドクラウドの各製品を展開し、顧客との関係を強化していくと意気込みを語った。
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