「なぜ?」「どうして?」と問い詰める前に一呼吸、“こうしてほしい”と素直に伝えてみよう:田中淳子の人間関係に効く“サプリ”(2/2 ページ)
部下に期待していることをストレートに伝えればいいだけの時でも、大げさにいったり、相手を責めるような表現を使ってしまうことはないだろうか。気持ちが伝わる言い方の一工夫をご紹介しよう。
その一方、突然、怒ったような口調で、「どうして?」「なぜ?」と詰め寄るのは、得策ではないとも思った。
こういう時、「どうして?」「なぜ?」という、英語で言えば、Why?を使うのはあまりよくない。語感からどうしても喧嘩腰に聞こえてしまう。
しかも、「なぜ会議の開催時間が日中なのか?」という理由を尋ねたいわけではないはずだ。本意は、「私たちが参加できる時間帯に会議を設定してほしい」とか「会議に参加したい」だろう。であれば、そこをストレートに伝えたほうがよいのだ。
「日中はメンバーが出払ってしまうので、17時以降で会議を開いていただけませんか?」
「17時以降に会議を設定していただければ、ほとんどのメンバーが参加できるはずです」
こんな風に肯定的な表現、自分が望んでいることをきちんと伝える方がいい。「なぜ?」「どうして?」は相手を責めている感じになりやすい。「なぜ?」「どうして?」ではなく、「こういう風にしてほしい」「こういうことを期待している」と言うほうが、相手の感情を揺さぶることなく、自分の希望は通りやすくなるし、気まずい空気を避けることもできる。
第一、「なぜ? どうして?」と尋ねて答えを聴いたところで、それは、すでに過去になってしまった出来事について尋ねているだけに過ぎず、問題はほとんど解決しない。であれば、今後どうしてほしいか、という未来に向けたことを尋ねたり、リクエストしたりするほうが建設的だ。
相手の状況を考えた言い方に変えてみると
他の部署の若手が1カ月ほどある情報を私の耳に入れてくれなかったことがあった。私も多少絡んでいる仕事だったので、後で聞いて驚いた。彼も意図的に隠していたわけではなく、私に「言う必要がある」と気づいていなかったらしい。その情報は、1カ月前の発生時点で教えてくれていれば、彼に対するサポートがもっと手厚くできただろうと思い、少し残念に思った。
この時、頭の中に最初に浮かんだのは、「なんで、1カ月前の時点でその話をしておかないの?」というセリフだった。だが、上記のように、こう表現したところで、何ら問題は解決しないばかりか、若手を責めたてているようにしか聞こえないだろうと瞬時に判断した。そこで、すぐ言い方を変え、口にしたのは、次の言い方である。
「1カ月前に教えておいてもらいたかった。でも、気づかなかったのだから仕方ない。今度、こういうことがあった場合は、その時点で必ず伝えてね。そうすれば、こちらもより適切な対応とかサポートが出来ると思うから」
若手は、「気づかなくてすみませんでした。今後はそうします」と素直に反応した。
「なぜ?」「どうして?」ではなく、「こうしてほしい」という要望として伝える。相手をうまく動かすためには、自分がどうしてほしいか、本来はどうあってほしかったのか、今後どうあってほしいかをもう少しストレートに言ってみる。相手に行間を読み取ってほしいと期待するより、話は伝わりやすいだろう。
冒頭の例に戻れば、「どうしてすぐ連絡してくれなかったの?」は、ストレートに「連絡してほしかったんだけど」「連絡を待っていたんだよ」と言ってみる。そうすれば、聞き手にもっと素直に自分の気持ちを伝えられるように思う。
著者プロフィール:田中淳子
グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/産業カウンセラー。
1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタル イクイップメントを経て、96年より現職。IT業界をはじめさまざまな業界の新入社員から管理職層まで延べ3万人以上の人材育成に携わり27年。2003年からは特に企業のOJT制度支援に注力している。日経BP社「日経ITプロフェッショナル」「日経SYSTEMS」「日経コンピュータ」「ITpro」などで、若手育成やコミュニケーションに関するコラムを約10年間連載。
- 著書:最新の著書は「ITマネジャーのための現場で実践! 若手を育てる47のテクニック」(日経BP社)。「速効!SEのためのコミュニケーション実践塾」(日経BP社)、「はじめての後輩指導」(日本経団連出版)、「コミュニケーションのびっくり箱」(日経BPストア)など。
- ブログ:「田中淳子の“大人の学び”支援隊!」
- Facebook/Twitterともに、TanakaLaJunko
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