相手の愚痴がピタリと止み、気持ちが切り替わるこんなひと言:田中淳子の人間関係に効く“サプリ”(2/2 ページ)
部下や同僚の愚痴がやまない……。こんな時、アドバイスをしたり、お説教したりするのは逆効果。有効なのは、こんなひと言だ。
コミュニケーションというのは、「人と人との間でメッセージの交換をする」ことである。そのメッセージの構成要素には、「内容」(伝えたい事柄そのもの。事実とか論理とか考えとか)と「感情」(喜怒哀楽など)の両方が含まれている。その割合は、5対5ではなく、時に、内容>感情だったり、内容<感情だったりする。
「内容」>「感情」。至極冷静に報告したり、質問に答えたりしているような場合がこれにあたる。特別、感情が揺さぶられたりはしていない。
「内容」<「感情」。会話の内容そのものより、気持ちのほうが大きい。うれしい、悲しい、憤りを感じているなど。分かりやすいのは、クレームを言ってくるケース。「クレームの内容」自体はある1点に絞られているが、それに感情が絡んでくるので、同じことを何度も何度も繰り返し訴えているような場合がある。これは、「感情」主体で話しているからである。
「内容」のほうが大きい場合は、互いに冷静に対話していけばよい。しかし、冒頭の例のように「感情」が大きくなっている時というのは、まずは感情面を理解してほしいと思うものだ。
以前、ある男性(Aさんとしよう)が話してくれた例。
独身寮に入っていたAさんの部屋には、同じ寮の同期男性Bさんがよなよな晩ご飯を食べにやってくるのだという。そして、このBさんは、ご飯を食べながら、会社や上司、いま手がけている仕事など、あらゆることに愚痴をこぼすらしい。それを毎晩のように聞いているAさんは、Bさんの愚痴も聞き飽きたし、何とか解決策を提示しようと「上司にこう話してみたら」とか「プロジェクトメンバーと協力して……」などと思いつく限りのアドバイスを試みていた。「それは分かるんだけど、実践するとなると難しいんだよ」などとBさんは言い、結局、翌日もまた、夜ご飯を食べにやってきては、愚痴るのだそうだ。
あるときAさんは、「愚痴を言う」というのは、「分かってほしいだけなのではないか」と考え、いつもであればアドバイスをするところ、その晩は我慢して話が途切れるところまで徹底的に黙って聞くことにした。そして、一区切りついた時点で、ただ一言、こう言ってみた。
「おまえも大変だなぁ」
すると、Bさんは、Aさんの目を見つめ、「そうなんだよ。分かってくれる?」といい、急に表情が明るくなって、「あまり愚痴ってばかりいたら飯もまずくなるし、楽しい話しようぜ」と、自分から話題を切り替えたらしい。
いろいろなアドバイスをしていたときには見られなかった反応だ。
Aさんは、こう述懐する。「Bがほしかったのは、共感だったんだなぁ。分かってほしかったんだなあ。毎日、アドバイスばかりしていたけれど、そんなこと必要としていなかったのかもしれない」
気持ち分かる。
大変だなぁ。
こういう言葉だけで相手が救われることがある。
著者プロフィール:田中淳子
グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/産業カウンセラー。
1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタル イクイップメントを経て、96年より現職。IT業界をはじめさまざまな業界の新入社員から管理職層まで延べ3万人以上の人材育成に携わり27年。2003年からは特に企業のOJT制度支援に注力している。日経BP社「日経ITプロフェッショナル」「日経SYSTEMS」「日経コンピュータ」「ITpro」などで、若手育成やコミュニケーションに関するコラムを約10年間連載。
- 著書:最新の著書は「ITマネジャーのための現場で実践! 若手を育てる47のテクニック」(日経BP社)。「速効!SEのためのコミュニケーション実践塾」(日経BP社)、「はじめての後輩指導」(日本経団連出版)、「コミュニケーションのびっくり箱」(日経BPストア)など。
- ブログ:「田中淳子の“大人の学び”支援隊!」
- Facebook/Twitterともに、TanakaLaJunko
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 「田中淳子の人間関係に効く“サプリ”」記事一覧
自分の席でどーんと座っていてはダメ――“社内回遊”のススメ
「部下から話かけてもらいたいのに、なかなか来てくれない」――そんな悩みを抱えている人もいるだろう。では、どうすれば、この問題が解決されるのか。まずは社内を歩き回ることから始めてみよう。
部下やメンバーが気持ちよく発言する方法――簡単なので、お試しあれ
会議などの席で、部下があまり発言しない――。そんな悩みを抱えている上司も多いのでは。どうすれば部下は積極的に発言してくれるのだろうか。簡単な方法を紹介しよう。
仕事のやる気を高めるには、どうすればいいの――捉え方で変わる方法
「モチベーションがなかなか上がらない」といった悩みを抱えているビジネスパーソンも多いだろう。そんなとき、どうすればやる気が出てくるのか。簡単な方法をご紹介しよう。
社内で「ありがとう」と言ってますか? 5文字の効果を試してみよう
「社内で『ありがとう』という感謝の言葉がない」――。人は褒められたり、感謝されたりするだけで、モチベーションがアップするのに、なぜこの5文字を言わないのか。
社内の人間関係に悩んでいる…… “餌付け”作戦を試してみよう
「社内の人間関係に困っていて……」という人も多いだろう。職場で気軽に会話をするには、どのようにすればいいのか。筆者がオススメするのは、名付けて「“餌付け”作戦」だ。- 「田中淳子のあっぱれ上司!」記事一覧


