「やらされ感」は気持ちの毒――「しなければ」を「やってしまおう」に言いかえてみる:田中淳子の人間関係に効く“サプリ”(1/2 ページ)
仕事をしていると、ついつい義務感にとらわれてしまうもの。「しなければ」を、前向きな言葉に言いかえると、気持ちが前向きになり、行動にも弾みがつく。
田中淳子の人間関係に効く“サプリ”:
職場のコミュニケーションに悩んでいる人も多いのではないでしょうか。「上司にこんなことを言ったら怒られるかもしれない」「部下には気をつかってしまうし」――。
本コラムでは、職場で役立つコミュニケーション術をご紹介します。具体例を挙げながら「なるほど! こういうやり方があるのか」「これなら自分でもできるかもしれない」と感じてもらえるよう、筆者が見聞きした出来事をちりばめています。
明日から……ではなく、いますぐに試すことができる「コミュニケーションのヒント」をご紹介しましょう。
以前、「やる気」に関する本を読んでいたら、なるほどと思ったことがある。
正確には再現できないのだが、だいたいこんなことが書いてあった。
「やる気のない赤ちゃんって見たことないでしょう? “ミルク飲む気がしないわ”とか“はいはいするのは面倒だからやめとこう”とか、そういう赤ちゃん、いないでしょ? 人間は本来、やる気のある生き物なんですよ。“あれがしたい”“これがしたい”“挑戦したい”と思うものなんです」――。
確かに! やる気のない赤ちゃんはいない。好奇心や興味、向上心で満ち満ちていて、何にでも挑戦する。自分がやってみないと気が済まないなんてことも多々ある。
だとしたら、人はいつから「何に対してもやる気満々な状態」から「やらされ感」を持ったり、「やる気が出ない悶々とした気持ち」を抱いたりするようになってしまうのだろう。
4歳の甥っ子の言葉を聴いていて気づいたことがある。おば馬鹿を自認し、生まれた時から子育てにも深く関わってきた甥っ子の言葉は実に前向きだ。
「○○ちゃんがする」
「○○ちゃん、これ、やりたい」
「○○ちゃん、これ、やってみたい」
人が何かしていると興味深そうに眺め、「それ、○○ちゃんもやってみたい」と言い始める。何か苦労している時、「おばちゃんが手伝おうか」と声をかけると「○○ちゃんが自分でやりたいの」と断られることもある。
注意深く観察していると、「する」「したい」「してみたい」……こういう前向きな言葉しか使わないのだ。甥っ子に限らない。幼児は基本的に「前向きな言葉」ばかりを使う。
自分がやってみたいこと、自分が取り組みたいこと、自分が試したいことで世界は満ちている。自分が主体となり、何にでも関心を示し、何にでも挑戦する。
大人はどうか。
「これしないといけないんだよね」
「ああ、これがあるから、やらなきゃね」
「これしたくないけど、誰もしてくれないからね」
「しょうがない、やるか」
「できれば誰かがやってくれないかな」
こういう言葉をつい使ってしまう。
もちろん、やりたいこともあるし、「やってみたい」「やります」と前向きな言葉を使うこともあるが、「しないといけないんだよね」といった表現もかなり多用している。私もよく使っていることに気づいた。「明日までに仕上げなければならないんだ」「上司の依頼だからすぐ片付けなくちゃ」「○日までに対応しないと」……。
「やりたい」「やる」「やってみたい」という語彙を使い、様々なことに挑戦してきた子どもだったはずの私たちはいつから「しなければならない」「ああ、しないとね」と義務感に駆られる言葉ばかり使うようになってしまったのだろう。ふとそう思う。
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