上司がやる気を分かってくれない――そんな部下との“食い違い”解決法:田中淳子の人間関係に効く“サプリ”(1/2 ページ)
上司は部下に「もっと主体的に動いてほしい」と思っており、部下は「主体的に動きたいのに上司がそれを阻害している」と思っている――。こんな不幸な職場の誤解を解決するには……。
田中淳子の人間関係に効く“サプリ”:
職場のコミュニケーションに悩んでいる人も多いのではないでしょうか。「上司にこんなことを言ったら怒られるかもしれない」「部下には気をつかってしまうし」――。
本コラムでは、職場で役立つコミュニケーション術をご紹介します。具体例を挙げながら「なるほど! こういうやり方があるのか」「これなら自分でもできるかもしれない」と感じてもらえるよう、筆者が見聞きした出来事をちりばめています。
明日から……ではなく、いますぐに試すことができる「コミュニケーションのヒント」をご紹介しましょう。
筆者は人材育成という仕事がら、幅広い年齢層のさまざまな立場の人に出会い、話を聞く機会がある。年齢は60代のシニア層から20代の若者まで、立場もマネージャから一般社員にいたるまでいろいろだ。
リーダー向け研修を担当すると、こんな話が出てくることがある。
「うちのメンバー、やる気をなくしていて、こちらが何を言っても反応は薄いし、何を考えているか、意思表示をしないんだよね」
「うちのチームも。やる気があるのかよく分からない。指示したことはやるけど、それ以上でもない」
「いろいろとやる気を刺激する手を打ってみても、なんせ、笛吹けど踊らずで」
「あまり指示しちゃダメだと思うから、自分で考えさせようと最近はあえて口も出さないし、手も出さないで、任せているんだけどね」
「主体性とか当事者意識とか持たせるのって難しいよね」
……こういう話を聴くと「リーダーも大変だなあ」と同情し、「どうやってメンバーの士気を上げればいいか」「メンバーが主体的に前向きに動くようになるにはどうしたらいいのか」といったことをみんなで考えてみる。
ところが、こういったリーダーのもとで働くメンバーと会うと「あれ?」と思うことがある。メンバーの言い分はこうだ。
「うちのリーダーは放置タイプで何も教えてくれないし、仕事も“これ、やって”だけで、何のためにするのか、何につながるのかということを話してくれない」
「聞こうにも忙しそうで、なかなか質問も相談もできない」
「自分で考えろというから、考えて提案したら、“それはダメ”“それはまだ早い”と却下されることが多くて、だんだん、もう言うのはやめようという気持ちになってきた」
「そういうこと、うちもある。“こんな風に考えて、こうしたらいいと思ったのですが”と話してみたら、“あ、それは、こっちで考えて、片付けるから、○○さんは気にしなくていいよ”と言われ、すっかり蚊帳の外に置かれてしまって」
「当事者意識を持てというけれど、そうやって、上のほうで勝手に決めて、決まったことだけ落とされるから、やらされ感も高い」
……。なるほど、メンバーの言い分も理解できる。
リーダーの見方もメンバーの見方もきっと“正しい”のだろう。
リーダーは、メンバーに「もっと主体的に、自律的に動いてほしい。やる気を持ってほしい」と思っている。
一方、メンバーはリーダーに対して「自分たちはやる気を持って、主体的に、自律的に動きたいが、それをリーダーが阻害しているじゃないか」と思っている。
これが、それぞれの立場から見える「現状」だ。人はそれぞれの役割や立場、置かれた場所から周囲を見ている。そして、その見方がつい“正しい”と思ってしまう。「相手の立場になって考えよう」とはよく言われることだが、自分ではない誰かの立場になるというのは言うほどたやすくない。
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