安易な転職はしない:選ばれ続けるリーダーの条件(1/3 ページ)
ビジネスパーソンにとって、初めて入った会社は仕事をイチから教えてくれた恩人です。その会社を辞めるのは、裏切りに他なりません。人間関係もそれまでと一緒というわけにはいきません。転職は、それほど大きな喪失を決意してまで実現したいことがあるときに限るべきなのです。
集中連載「選ばれ続けるリーダーの条件」について
本連載は、山元賢治著、書籍『選ばれ続けるリーダーの条件』(中経出版)から一部抜粋、編集しています。
グローバルの波の中で、仕組みや慣習もものすごいスピードで変わっていきます。日本企業のあり方や個人の働き方も、従来のままではいられない。刻々と変化する世界で、変わらず求められる真のリーダーの条件とは何か? 外資系トップ企業で30年活躍した経験を、次世代のリーダーに伝える1冊です。
アップル、オラクル、IBMやEMCなど、30年間外資系トップ企業で働き、ビジネス界の巨人と肩を並べてきた山元賢治氏が大切にするのは、誰からも「選ばれる」人が持っているルールです。
「選ばれる人は、目先のテクニックに走らず、もっとも守るべき“原則”を理解し、日々実践できるかどうかで決まる」
未来のリーダーを目指す人、リーダーとして頼られる人間になりたい人に読んでほしい1冊です。
転職はしないほうがいい。これが、5回の転職を経験した上での私の結論です。
ビジネスパーソンにとって、大学を卒業した入った会社はかけがえのない存在です。何も分からない若者に、仕事をイチから教えてくれた恩人です。
最初の会社で学んだことは、一生涯、自分の血液になります。私も、IBMで教わったことがその後のすべての土台になっています。今でも自分の血液の99%がIBMだと感じるほど、IBMには感謝しています。
そういった会社を辞めるのは、裏切りに他なりません。「立つ鳥跡を濁さず」というのはきれいごとで、まず跡は濁ると思ってください。私が日本IBMを辞めたときにも送別会を20回ほどやってもらいましたが、人間関係もそれまでと一緒というわけにはいきません。必ずどこかが壊れます。一番大切なものを失うと言ってもいいくらいです。
転職をするなら、それほど大きな喪失を決意してまで実現したいことがあるときに限るべきでしょう。
私はIBMに対してまったく不満はありませんでしたが、コンピュータの世界のトレンドが変わりつつあるのは感じていました。IBMは基本的にハードの会社ですが、今後はソフトの重要性が増していく、ソフトが世の中を動かす時代になるという予感がありました。私はもともとソフトのエンジニアです。そこで「地球上のデータをすべてデータベースに入れる」とラリーエリソンが言っていたオラクルに興味を持ったわけです。そのほかにもいろいろな理由がありましたが、ソフトで世の中を変えるというミッションを自分に感じたことが、転職の大きなきっかけになりました。
転職の理由としては、社会経験を積んだ結果、学生のときに考えていたこととやりたいことが変わったというのでも構いません。転職先でやりたいことがある。これが、転職の絶対条件です。
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