“いい人”になれなくていい、“スキル”があればコミュニケーションはうまくいく:田中淳子の人間関係に効く“サプリ”(1/2 ページ)
人とうまくコミュニケーションをするためには、性格がよくなければ、人格者であるべき、などと言われることもあるが、もっと簡単な改善方法がある。スキルを身につけ使ってみれば、おどろくほどコミュニケーションがうまくいくようになる。
田中淳子の人間関係に効く“サプリ”:
職場のコミュニケーションに悩んでいる人も多いのではないでしょうか。「上司にこんなことを言ったら怒られるかもしれない」「部下には気をつかってしまうし」――。
本コラムでは、職場で役立つコミュニケーション術をご紹介します。具体例を挙げながら「なるほど! こういうやり方があるのか」「これなら自分でもできるかもしれない」と感じてもらえるよう、筆者が見聞きした出来事をちりばめています。
明日から……ではなく、いますぐに試すことができる「コミュニケーションのヒント」をご紹介しましょう。
良い人や人格者は確かにコミュニケーションがうまいと思う。しかし、コミュニケーションはスキルでカバーできるものも多いのではないか――。私はこう考えている。
私は以前、コンピュータメーカーに勤務しており、エンジニア向けの技術研修を担当していた。しかし、ある時からコミュニケーションスキルなどのヒューマンスキルやビジネススキルと呼ばれる分野の研修も担当するようになった。1990年のことだ。
当時のエンジニアというと、人と接することに慣れていない人も多く、口下手な人や、人の話を聴くのが苦手な人も多かった。だからコミュニケーションやプレゼンテーションの仕方などを教える研修は需要があるのではないかと考えた。
そんな時、米国で受講したコミュニケーションの研修がまさに「スキル」を学ぶものだった。研修の中に一切「人格を磨け」「資質が大事」「いい人になれ」といった内容が出てこなかったのに驚いた。「聴き方」には、“Active Listening”(アクティブリスニング)というスキルが、「伝え方」には、“Assertion”(アサーション)という態度とスキルがある。人と人との対立については、“Conflict Management”(コンフリクトマネジメント)の考え方とスキルがある、と言うのだ。
目からウロコだった。
そうか! いい人であればそれに越したことはないが、多くの人が「いい人であれ」と言われて苦労し、悩んでいる。性格なんか変えなくてもよいではないか、それより、コミュケーションに関する知識を持ち、スキルを「使って」みればそれでいいじゃないかと確信したのだ。
米国で学んだことの中には、次のようなものがある。
「聴く」時は、Active Listeningを実践する。まずは、「聴いている態度」を取ること。「聴いている態度」とは「話し手が話しやすいと感じる態度」のことでもある。
のけぞって座るよりは、身を乗り出して話を聴く。じっと動かずに聴くより、適度にうなずく。「それは違う」「でも」などと否定するような返事ではなく、「なるほど」「○○ですね」と受容的に聴く。相手の話題に合わせ表情を変化させる――。何をするにもひとつひとつに「スキル」があるのだ。
スキルを使うことで、相手の反応も変わってくる。話が弾んだり、より詳細な内容を聴くことができたりする。聴き手が「聴くためのスキル」を使うだけで、話す側の話しやすさが変化し、その内容も質量ともに向上するのか、と感動した。
性格を変えようとすると、「この歳でそれは無理!」と思ってしまうし、人格者になろうとしてもつらくなるばかりだ。しかし、知識を持ち、スキルを使うのであれば、誰でもさほど抵抗なくできるはずだ。
そう確信し、米国で受けてきたいくつかのトレーニングを日本向けに開催するようになった。
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