怒鳴る、見下す、すぐ黙る――“感情的”な相手を制する交渉術:プロが教えるビジネス交渉術 第5回
交渉スキルを教えていて、必ずウケるのが「感情的になる相手への対策」だ。まずは、相手がなぜ感情的に接してくるのか、落ち着いて考えてみよう。これにはいくつかの可能性がある。
交渉スキルを教える際に、必ずウケる“鉄板”ネタがある。それは「感情的になる相手への対策」だ。それだけ、このテーマで悩んでいる人が多いのかもしれない。社会人生活を送っていれば、一度は感情的な相手との交渉で閉口したことがあるはずだ。
そもそも、スムーズに交渉を進めようとするならば、感情的になるべきではない。互いが譲歩できるポイントを交換し、最後までお互いにとってよりよい結果を突き詰めるのが“交渉”だ。論理が通らない要求をしたり、ムキになって相手を否定したりしようものなら、途端に交渉は前に進まなくなり、互いが損をする結果になる。
そういった相手との交渉はできれば避けたいものだが、ビジネスとなればそうも言っていられない。不運にも感情的な相手との交渉に臨むことになった際に、どうすればよいのか考えてみよう。
連載:プロが教えるビジネス交渉術
- プロローグ:「交渉下手」の汚名は返上できる
- 第1回:年収を上げたい! でも、上司とどう交渉すればいい?
- 第2回:「情報開示」をうまく使い、相手を意のままに動かせ
- 第3回:顧客からの“無茶振り”にどう対処すればいいか
- 第4回:「ここだけは譲れない」――そんな“弱点”を抱えた交渉の突破法
- 第5回:怒鳴る、見下す、すぐ黙る――“感情的”な相手を制する交渉術(本記事)
感情的な相手は大きく3パターンに分けられる
まずは、感情的な相手にはいくつかのパターンがあることを紹介しておこう。“感情的”と一口で言っても、その内容は大きく3パターンに分けられる。
1つ目は「威嚇」だ。にらみつけたり、脅すように大声を出すタイプがこれにあたる。怒鳴られれば当然こちらは萎縮するし、場合によってはこちらも感情的になってしまい、状況を混乱させてしまうこともある。
2つ目は「嫌味」。答えられない質問をしつこく繰り返したり、あからさまに軽蔑した態度をとってくるタイプだ。話しているとともかく落ち着かないし、そのうちイライラしてくる。つい感情的になって反論しそうになるところだが、ここはグッとこらえなければならない。
最後は「沈黙」だ。意外に思うかもしれないが、無関心な態度も“感情的な”対応に入る。何をどう示しても、氷のような反応しかなく、共感めいたものは一切示してもらえない。もちろん会話も弾まずに、気まずい沈黙が支配してしまう。
こうした相手と交渉するときは、相手の感情的な態度に屈服して譲歩してはならない。「感情的に接すれば、あなたからより多くのモノが得られる」と思われてしまうからだ。ここで失敗すると相手は味を占めて、次も感情的に接してくるだろう。
まずは、相手がなぜ感情的に接してくるのか、落ち着いて考えてみよう。これにはいくつかの可能性がある。
感情的なキャラをわざと“演じる”戦略
こういったケースでは、実のところ、相手が意図的に感情的な人間を“演じている”場合が非常に多い。社内では「いい人」で通っている先輩が、社外の交渉となると一変する――といった具合だ。
もし、相手が感情的なキャラクターを演じているだけなら、その戦術は意味がないと相手に悟らせることが基本的な方針となる。例えば、相手の反応が冷たく、沈黙が場を支配するなら、相手が話すまでこちらも話さなければよい。沈黙を恐れず、逆に相手が沈黙をプレッシャーと感じ始めるまで待てばよいのだ。
仮に相手が細かい質問を続けてくるなら「なぜその情報が必要なのでしょうか?」と確認しよう。また、嫌味な指摘には「仮にご指摘の点を修正したとして、どうなるのでしょうか?」と聞いてみよう。これらの問いは、相手が質問や細かい指摘を通して、こちらにプレッシャーをかける戦術を止める効果が期待できる。
もし相手が怒鳴ってくるならば、相手が主張している内容をできるだけ冷静にまとめて返すようにしよう。怒鳴り言葉は非常に内容が薄いものだ。それに対し、冷静で公平なまとめを返し続ければ、相手が怒鳴り続けるのはかなり難しくなる。この場合は、できれば交渉には2名で臨み、1人を聞き役、1人をサマリー専門の役割にあてるといい。
ただし、もし相手が本当に感情的な性格だった場合や、こちらへの苦情があって感情的になっている場合は、上で示した方法とは全く異なる対応が必要となる。それらについては、実際にコースを受講して確かめてほしい。
いかがでしたか? 感情的な人は意外と身の回りにいるもの。同僚や上司、場合によっては奥さんとの交渉にも、こうしたテクニックが生きるかもしれません。しかし交渉術というのは頭で分かっていても、実践ではなかなか上手くいかないもの。実際にトレーニングを行い、練習をしなければ身につきません。記事では書けなかったテクニックもたくさんあるのです。
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