「相談しているはずが、いつの間にか説教されてた……」という恐怖のパターン:そのひとことを言う前に(1/2 ページ)
悩みを持った部下や後輩から相談された経験はありますか。相談をされつつも、相手の本音を聞き出せていない、などと思ったことはありませんか。どうすれば相手からしっかりと本音を聞き出せるか、その方法とNG例を紹介します。
連載「そのひとことを言う前に」
職場で感じるストレスの原因は、うまくコミュニケーションがとれないことによるものが多いようです。本連載では、伝え方や接し方、聴き方に至るまで職場でよくあるエピソードをもとに、仕事や物事がより円滑に進むようなコミュニケーションのヒントをご紹介します。一度、自分が発する言葉について見直してみてはいかがでしょう。
前回の記事では「五月病」疑惑の若手社員や新人を、立ち直らせるきっかけについてお話ししました。今回は、そういった悩みを持った部下や若手社員から相談されたときに、気をつける点について紹介します。
皆さんは、部下や後輩から相談された経験はありますか? 人は誰かに相談するとき、何かしらの助けを求めているもの。こうした相談には、きちんと対応しておきたいところです。しかし、相談を持ちかけた相手が何を期待しているのかということを“読み”違えると、逆効果になりかねません。
例えばこんなシーンを見たことはありませんか?
若手社員:実は最近、あんまりこの仕事に向いていないような気がしていて……
先輩:え、そんな事ないでしょ。だって担当業務も増えたし、頑張ってんじゃん! 俺も若手だったころは、そんなことで悩んだりもしたけどさ……(と、自分の昔話を始める)。たぶんここ超えたら楽になるから、ね?
若手社員:……はい(結局15分近く、私が話聞いた感じ? もういいや。この人に相談するのはやめておこう……)。
先輩:それじゃ、がんばっていこう!(忙しかったけど、後輩だから仕方ないよね。いい先輩だと思われているかなー)
相談に乗るときに「問題解決型思考」はNG
この例では、先輩が自分の話ばかりをしてしまっています。若手社員からみれば、「相談したはずなのに、いつの間にか説教くさい話を聞かされていた……」と思われても仕方がない状況です。もちろん、この先輩に悪気はありません。先輩からすれば、
- 忙しいなかでも
- 向いてないことは無い根拠を説明し
- 自分の経験談を腹を割って話し
- 後輩を励ます
ということをやってのけました。しかしこれでは、相手は心を閉ざしてしまい、本音を話してもらえず、中途半端な対応に終わってしまうでしょう。「相手が悩んでる。何か役に立ってあげたい!」という想いの強い、がんばり屋さんの人がこういうパターンに陥ることが多いです。
またオフィスの中では、無意識のうちに頭の中が仕事モード――つまり、問題解決型の発想になっており、悩みに答えを出そうとしてしまいがちです。今回の例では、先輩が一気に自分なりの対応策まで出してしまったわけです。結果、若手社員は15分も先輩の聞き役になってしまいました。これでは若手社員は本音を出す暇もありません。
若手社員の悩みやグチを聞くときには「すぐ、その場で問題を解決する必要はない」ということを意識しておきましょう。本音を引き出しつつ、十分に話を聞いてあげるだけで、相手がスッキリして解決したり、自分の発言や考えを整理できて自己解決できたりするケースが、現実には多くあります。
このような苦痛の解消法を、精神分析の用語で「カタルシス効果」といいます。日本語で言うと「浄化」という意味です。同僚同士や女子会といった場で、しゃべったり泣いたりしてスッキリした経験を思い出していただければ、伝わるのではないかと思います。
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