あせらないために「スキマ時間に行う仕事リスト」を作る:あせらない練習
忙しくて余裕がない人は、段取りを考えずに行き当たりばったりの仕事をしていることが多いです。余裕を持ったスケジュールを組み、時間があいたときにできる仕事をリストアップしておけば、「何をしようか」と迷うことはありません。
集中連載「あせらない練習」について
本連載は、斎藤茂太著、書籍『あせらない練習』(アスコム)から一部抜粋、編集しています。
休みなしに働いているわりには成果が上がらなかったり、あれもこれもと欲張ってやるわりには何もモノにできなかったり――。周囲に振り回されて自分自身を見失っている人、あなたの周りにもいませんか? そういう人の心の中には、いろいろな情報や思いがグチャグチャとあるだけなのかもしれません。
・頭のなかのあせりは、脳を休ませるとだんだん消えていく
・「その場しのぎ」をやめれば、あせる気持ちから解放される
不安やイライラは、ちょっとした心の練習でなくなります。あせらないで頭と心さえスッキリさせれば、筋道の通った思考と気持ちの整理もきちんとでき、目的別にゆったりと行動することができるようになります。
本書では、どうしてもあせってしまいがちな人の頭と心をスッキリさせる練習方法を、心の名医であるモタ先生の幸せメソッドにならって紹介します。
あれもやらなくちゃ、これもやらなくちゃと、年がら年中あせっている人がいます。そういう人をよく観察してみると、思いつくままにいろんな仕事に手をつけているか、
「ああ、何から手をつけていいか分かんない!」
と頭を抱えて何もせずにいるか、どちらかのように思います。
本来、やらなければいけないことが山積している場合、手際よくサクサクと片づけていくべきなのに、それができない。段取りの悪さに最大の原因がありそうです。となれば、解決策はただ1つ、
「やるべきことをリストアップして優先順位をつけ、段取りよく進めるためのだいたいのスケジュールを組む」
ことです。
おそらく、段取り下手の人は「スケジューリングする暇があれば、1つでも仕事を片づけたい。そんな悠長なことはしていられない」と反発するでしょうが、その認識は全く間違っています。予定を組むのに必要な10分ほどの時間を惜しんで、その10倍くらいの時間をムダ遣いするのがオチです。
ここで、スケジューリングのメリットを掲げてみましょう。
- やるべき仕事をリストアップすることで、やり残し、やり忘れがなくなる
- 並行してこなせる仕事が一目瞭然に分かり、効率が上がる
- 他のやるべき仕事を頭から排除して1つの仕事に集中できる分、効率が上がる
- ポカッと時間があいたときでも、「何をしようかな」と迷う必要がなくなる
- あせりが軽減され、平常心で仕事に取り組める
ただし、予定を組むときにはあまり詰めすぎないで、ある程度は余裕を持たせた時間割にするのがコツです。
例えば、20分かかる仕事なら30分、1時間を要する仕事なら1時間20分、といった具合に、少々多めに見積もっておくといいでしょう。気持ちにも余裕ができますし、予定外の急な仕事にも対応しやすくなります。
また、時間が浮いたときのために、時間が決まっていなくて短時間ですむ細かな仕事を、「スキマ時間の仕事リスト」にまとめておくのも効果的です。予定より早く仕事が終わったときに、ポンと放り込めます。
さらに欲を言えば、予定は前日のうちに立て、朝ざっと確認し必要に応じて修正するスタイルがベストです。目的は、仕事の準備をきちんと整えて、スムーズに仕事に入れるようにすること。いざ仕事を始めるときに「資料がない」となったり、訪問先の場所を調べるのに手間取ったり、余計な準備仕事を減らすことができます。
こんなふうに予定を立てて行動すると、スムーズかつスピーディに仕事が進み、余暇時間の創出も可能になります。
「忙しくて、アフターファイブを楽しむ暇もない」
という人の大半は、段取りを考えずにあせって行き当たりばったりの仕事をしていることが多いもの。スケジュールを組んであわてないようにするのが先決です。
ちなみに、仕事で段取り上手になるためには、日常生活から矯正していくことも必要です。段取り下手な人というのは、家でもあせっていることが多いのです。夜のうちに忘れ物がないよう出社の準備をするとか、家では頭のスイッチを完璧に仕事モードからリラックスモードに切り替える、可能な限り家事は同時並行で進める、空き時間を利用して雑用を片づける、食品の賞味期限を確認して献立を考える、用事をしている最中にテレビで興味深い映像が流れていてもその場に座り込まず録画しておくなど、目的ごとに行動する習慣をつけてください。
よい習慣がつけば、仕事上でのあせりがなくなると、私が太鼓判を押します。
(次回は、「夢を達成するまでの期限を決める」について)
著者プロフィール:
斎藤茂太(さいとう・しげた)
1916(大正5)年に歌人・斎藤茂吉の長男として東京に生まれる。医学博士であり、斎藤病院名誉院長、日本ペンクラブ理事、日本旅行作家協会会長などの役職を歴任。多くの著書を執筆し、「モタさん」の愛称で親しまれる。「心の名医」として悩める人々に勇気を与え続け、そのユーモアあふれる温かいアドバイスには定評があった。2006(平成18)年に90歳で亡くなったが、没後も著作は多くの人々に読み継がれている。
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