多様な働き方の未来――「時間」「組織」「場所」を自由に選ぶという意思:30代からの「次の働き方」(1/3 ページ)
「多様な働き方の推進」は、その重要性が語られ、施策がとられつつあるものの、それほど進んでいない。それは「多様な働き方」という漠然とした概念で語られるからだ。
連載:30代からの「次の働き方」
約15年後の2030年、日本企業を取り巻く環境は、どのように変化しているでしょうか。多くのビジネスパーソンは、先が見えない社会環境の中で、漠然とした不安を抱えながら働いています。
「もし定年まで働くことが前提でなくなったら」「1社だけに属することが当たり前ではなくなったら」――本連載では、近未来である「2030年」に焦点を当て、予測される新たな働き方を提案します。
「国内人口減少」「少子高齢化」「IT化・機械化」「グローバル化」などが進む2030年、私たちにとって「長い期間働く」ことが1つのキーワードになると考えられます。その際、不可欠だと考えられるのが「柔軟な働き方」です。
なぜ「多様な働き方の推進」が進まないのか?
例えば、育児・介護のようなライフイベントへの対応、能力を磨くための社会人大学院などでの学び直し、複数の仕事の掛け持ち、コミュニティ活動と仕事の両立――これらを実現するためには、その時々の自分にあった時間の使い方や場所で仕事ができるか否かが大きな影響を及ぼします。
柔軟な働き方を支える「多様な働き方の選択」は、企業の人事も今後ますます重要になるという認識を持っているようです。「従業員を動機付けるために重要なものは何だと思いますか?」という質問をしてみました。すると、2025年ごろを想定した場合では「多様な働き方の選択」が重要だと答えた人が48.4%。現在を想定した場合は3.2%に過ぎず、きわめて高い値です。
(出典:リクルートマネジメントソリューションズ「RMS Research人材マネジメント実態調査2013」※図中の数値は、現在と2025年ごろとのそれぞれについて、重要だと思われるものを最大3つ選択した際の選択率)
しかし、「多様な働き方の推進」は、その重要性が語られ、さまざまな施策がとられつつあるものの、それほど進んでいないと思う人も少なくないのではないでしょうか。それは「多様な働き方」という漠然とした概念で語られることも要因かもしれません。
今回は、「時間」「組織」「場所」という3つの観点から、多様な働き方についてひも解き、世の中の潮流を確認してみましょう。
「時間に縛られない自由」:オフィスから離れて働く人は増えつつある
時間や場所を柔軟に選べる働き方の最たるものとして、「テレワーク」「モバイルワーク」「ノマドワーク」など、自宅や外出先などオフィスの外で働くスタイルがあります。働く場所をオフィスに固定しないことで自分のペースで仕事を進められる、「時間を自由に選ぶ」新しい働き方と言えるでしょう。
このような働き方は、どの程度一般的になっているのでしょうか?
総務省「平成25年通信利用動向調査」(2014年)によると、企業のテレワーク導入率は現在9.3%です。資本金規模が大きくなるほど導入率は高くなる傾向があり、資本金50億以上の大手企業での導入率は38.0%となっています。
また、国土交通省都市局都市政策課「平成25年度テレワーク人口実態調査−調査結果の概要」(2014年)によると、テレワーカーは全国で1120万人と推定されています。そのなかでも一定時間以上自宅で業務を行っている「在宅型テレワーカー」は720万人です。全テレワーカーのうち、在宅型テレワーカーの比率は2011年度に38.0%であったのに対し2013年度では64.3%と、「自宅で働く」人は急速に増えつつあります。
テレワークの導入率は、まだ「高い」という水準ではありませんし、そのような働き方を選べる人と選べない人がまだ分かれているというのが実情です。一方で、テレワーカーの中で在宅型テレワーカーの比率が増えていることを見ると、育児などの合間を縫いながら時間をコントロールして、ライフイベントと「働く」を両立している予兆を感じます。
続いて、企業という組織の枠にとらわれない働き方に目を向けてみたいと思います。
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