多様な働き方の未来――「時間」「組織」「場所」を自由に選ぶという意思:30代からの「次の働き方」(2/3 ページ)
「多様な働き方の推進」は、その重要性が語られ、施策がとられつつあるものの、それほど進んでいない。それは「多様な働き方」という漠然とした概念で語られるからだ。
「組織に縛られない自由」:個人で勝負する働き方がより身近に
企業という枠にとらわれない働き方として、以前からフリーランスやインディペンデントコントラクター(個人事業主や個人でも法人化した人たち)という働き方があります。このような働き方は、少し前までは、クリエイターやデザイナーなど、ごく一部の専門性の高い職業の人しかできない働き方というイメージがあったかもしれません。
また、例えば企業とインディペンデントコントラクターとの間で仕事をする際には、企業側には「業務を発注したいが、個人は信用面で不安が……」、インディペンデントコントラクター側にとっては「業務を受けたいが、この仕事はリスクが大きい……」といったさまざまな不安がありました。その結果、お互いに仕事を外部に発注できない、積極的に個人として仕事ができないということがあるかもしれません。
しかし、インターネットのインフラを活用し、不特定多数の社外の人材に業務を委託する「クラウドソーシング」の普及がこのような状況を大きく変えつつあります。クラウドソーシングを支えているのは、ランサーズやクラウドワークスという企業で、単に仕事と人のマッチングのインフラとなるだけではなく、発注者と受託者の間の金銭のやり取りの保証をしたり、双方にとって妥当な対価でのビジネスが成立したりするような“信頼”のインフラとなっています。
このような環境の整備もあり、「BPO市場・クラウドソーシング市場に関する調査結果2013」(矢野経済研究所、2013年)によると、クラウドソーシングの市場規模は、2011年度の40億円に対して2013年度には246億円と、3年間で6倍も成長しています。
そうはいっても、「クラウドソーシングはITなど一部の業界の話では?」と思う人もいるでしょう。しかし、クラウドワークスがスタートした「メイカーズワークス」のような仕組みにより、ものづくりをする人にも機会は広がりつつあります。
今度は少し目先を変えて、「自分の好きな地域で働く」ことに目を向けてみましょう。
「場所に縛られない自由」:都会を離れて価値を生み出す人々の存在
働く場所を選ぶということは、仕事をする場所を選ぶと同時に仕事以外の生活をする場所を選ぶということです。仕事を優先するのか、それとも生活を優先するのか――この問いはナンセンスなのかもしれませんが、このことについて考えている人は少なくないと思います。
実際、リクルートワークス研究所の「ワーキングパーソン調査」によると、Uターン希望者は2002年の12.1%から2012年には28.1%に増えています。Iターン希望者も、2002年の6.0%から2012年には14.9%に増えています。
Iターンの好事例としてよく取り上げられるのは、島根県隠岐郡海士町や徳島県名西郡神山町です。海士町は、一流企業での勤務経験を持つ若者が移住し、新たな事業を立ち上げたり教育改革などで地域貢献をしたりしていることなどで有名です。神山町は、地域に滞在し、地元の人とともに美術活動をする「アーティスト・イン・レジデンス」にはじまり、町に足りない機能を持つ人に仕事ごと移り住んでもらう「ワーク・イン・レジデンス」やIT企業のサテライトオフィスの誘致などを通じて、創造的な人材を集めていることで有名です。
これらの地域では、自分なりのビジョンを持った人々が、新たな事業や価値を生み出しながら、経済活動、コミュニティ活動、両面で地域貢献をしていることが特徴です。ある土地や地域の特徴を生かし、新たな価値を生み出し、その地域に貢献すると同時に広く社会にも貢献する。私たちも一歩踏み出せば、このようなワクワクする仕事ができるチャンスは広がりつつあります。
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