仕事の「リアル」をつかめるか:明日を変える働き方(1/3 ページ)
期待を胸に入社しても、自分が希望する部署に配属されるとは限りません。むしろ、希望どおりになることのほうがまれかもしれません。そういうときは、どういう姿勢で仕事と向き合えばいいのでしょうか?
集中連載「明日を変える働き方」について
本連載は、金井壽宏著、書籍『「このままでいいのか」と迷う君の 明日を変える働き方』(日本実業出版社)から一部抜粋、編集しています。
「この仕事は、自分に合っているのだろうか?」
「今のような働き方が、いつまで続くんだろう……」
迷いながら働く人のために、キャリア研究の第一人者が、仕事の本質から会社との付き合い方、キャリアの捉え方まで、読者と一緒に考えていきます。
長い仕事人生にはアップダウンがつきもの。ワクワクしながら前向きに取り組める時期もあれば、失敗や思わぬ異動に落ち込む時期もあるのが当然です。
本書では、一般の企業で働く若手14名へのインタビューをもとに、仕事の「モティベーション」、そして「キャリア」の悩みから抜け出し、成長していくための考え方を紹介します。
・いったい自分は、何のために「働く」のか?
・「組織」とどこで折り合いをつけるか?
・これからの「キャリア」をどうデザインするか?
・もっと仕事に夢中になるためには?
など、キャリアの入口、あるいは途中で立ち尽くしている人が、自分なりの「働き方」をつかむための1冊です。
営業だからこそ得られるメリットとは
若い人がマスコミや広告など、いわゆる「クリエイティブな業種」とされる会社に入ってがっかりするパターンの1つに「せっかく入社したのに営業職に配属される」ということがあります。
自分はもっとクリエイティブな仕事がしたいと思っていたのに、泥臭い営業部に配属されてしまった。商品を売る仕事よりも、ゼロから何かをつくりだす仕事がしたい。そのように考える若い人は少なくありません。
しかし実際に広告代理店などで活躍するクリエイターの人々を見ると、若いときに営業部に配属されていたという人もたくさんいます。
営業というのは会社の仕事の中でも、お客さまと最も頻繁に、直接的に接触する仕事です。それゆえに本気で取り組めば、自社の仕事に必要なあらゆるスキルと知識を得ることができます。
もし不本意な部署に配属されてしまったら、その部でイキイキと仕事をしている2〜3年上の先輩に話を聞いてみるのもいいでしょう。また営業以外の総務や経理などの部署で働く「ナナメ上の先輩」に、営業部についてどう思っているかを聞いてもきっと新たな気付きがあるはずです。
東京の和田中学校で、民間出身者として初の校長を経験した藤原和博さんは自身のリクルート時代の経験も踏まえ、「成長にはナナメの関係がかなり大事だ」と主張しています。
例えばある若者が、ロックバンドを組んでプロを目指したいと思っていたとします。しかし、真面目でロックには無縁のお父さんには相談しにくかったとしましょう。
ところが彼には、サラリーマンを経て独立して、自営業を営んでいる叔父さんがいたとします。その叔父さんがロックバンドの経験者ではなくても、安定したサラリーマンの道を捨て、リスクをとって独立に踏み切った経験があることから相談しやすい、というようなことがあります。
このように、職場でも真上にいる直属の上司よりも、ナナメ上、近いけれど違う部門の先輩や上司のほうが、かえって話しやすいことがあるというのが藤原さんの観察です。
また、はじめて会社に就職して、希望の部署に配属されなかった場合には、逆説的なメリットがあります。それは最初から大きな期待がないだけに、仕事に関してリアリズムの視点で見ることができるということです。
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