嘘はついてないか:困っている人のための企画術(2/3 ページ)
広告というのは、その企業や商品のいいところを描きますが、いいところしかないものなんてこの世の中には存在しません。どんな広告にも嘘はあります。だからこそ、リアルを心がけるのです。
リアルを心がけたダイハツの「日本のどこかで」シリーズ
例えば、私が企画した、ダイハツの「日本のどこかで」シリーズ。
このシリーズは、低価格で、ハイブリッドカー並みの低燃費を実現したダイハツの軽自動車を“第3のエコカー”と名付け、日本のどこかで、さまざまな人が、さまざまな理由で“第3のエコカー”を選んでいくストーリーを描いています。
このシリーズは、かなり嘘が少ないCMになるように心がけました。
第一シーズンでは、主人公の青年を演じる瑛太さんが、派手な都会暮らしをやめ、生き方を変えるために田舎に移り住む。田舎で暮らすからにはクルマがないと不便だし、自然も大切にしたいからエコカーに乗りたい。でも、ハイブリッドカーなどのエコカーは、そんなに安いわけではない――。
そこで、新しい選択肢として“第3のエコカー”を選ぶ、というストーリーを描きました。その選び方が、嘘くさくなく、なるべくリアルになるように心がけました。また、“第3のエコカー”に乗りはじめてからの暮らしも、それで何もかもがハッピーになるわけではなく、主人公の新しい暮らしに、本当に少しだけ前向きな影響を与える、という描き方です。
第二シーズンも同じです。離島で暮らす父が倒れ、息子を演じる吉岡秀隆さんが、家業の醤油づくりを継ぐために、島に戻って来る。
ここでも主人公は、自然のこと、そして、家計のことも考えて、“第3のエコカー”を選び、そのクルマは少しだけ、生活にも主人公の心にも、変化を与える――。
ともすると、CMというのは「これすごーい」とか言いながら、実際にはありえないぐらい積極的に商品を選んでしまったり、商品を使いはじめると、それだけで人生がいいことづくめになってしまったり、そういう描き方になりがちです。
しかし、このダイハツのシリーズでは、ある人生と軽自動車のかかわり方を、なるべく嘘がないように描いてみました。スポーツカーでも高級車でもない、ダイハツの軽自動車を選ぶというのは、こういう感じなのではないかということを、なるべくリアルに描いてみたのです。
かなり地味なCMではありましたので、「大丈夫かな」という気持ちもなくはなかったのですが、オンエアしてみるとけっこう話題になり、企業のブランド力アップに貢献できたとも聞いています。
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