反対意見を楽しんでクリアする:困っている人のための企画術(2/2 ページ)
考え抜いて出した企画が広告主に反対されて、悔しい思いをすることもあります。しかし、それを受け入れて順番にクリアしていくと、企画に深みとひねりが生まれてよくなることもあるのです。
反対意見によって企画がよくなった「明日があるさ」
私にはそのときの刷り込みがあるので、広告主からの反対意見は、よく取り入れるようにしています。私の場合、性格的に戦うのが苦手ということもあり、ほとんど抵抗しません。そして、佐藤さんのようにさまざまな意見を見事にクリアしつつ企画もよくなる――ということを毎回目指していますが、私は天才ではないので、そこはうまくいってるかどうか分かりません。ただ、「広告主の反対意見で企画がよくなることがある」というのは、確かです。
例えば、ジョージアの「明日があるさ」シリーズのCM。この企画で、私がもともと主人公として提案したのは、松本人志さんでした。
しかし、広告主から「松本人志さんだと個性派すぎて、多くの人が共感できるサラリーマンの代表、のような存在になれないのではないか」という反対意見がありました。
そこで、主人公を同じダウンタウンの浜田雅功さんに変えて企画をやり直しましたが、そのとき悩んだのが、「松本さんをどうだすか」ということでした。ライバル社員役や会社の会長役など、いろいろ考えましたが、そんなにおもしろくならない感じがする――。
悩んだあげくに思いついたのは、会社という組織の中で、常に前向きにがんばる主人公が浜田さんなら、彼の心の中には「もっと自由気ままに生きたい、もうひとりの自分がいるのではないか」ということです。
同じ人間の、コインの表と裏のような関係にあるもう1人の浜田さんを松本さんに演じてもらおうと考えました。ここから、浜田さんの近くには、いつも職業を転々としながら、自由に生きる謎の男=松本さんが登場する、という最終的の形になった企画が生まれました。
これはおそらく、私が当初企画したように、松本さんが主人公のままでやるよりも、企画に深みとひねりが生まれてよくなったケースではないでしょうか。
もちろん、広告主の意見をなんでもかんでも聞くべきだ、ということではありません。ときには、よりよい広告にするためにきちんと反対したり、真剣にぶつかり合うことも大事だと思います。
しかし私は、よくドラマにあるような「激しくぶつかり合った結果、かえって友情が深まり、最後は肩を組んで笑った」みたいなことはどうも苦手で、どちらかというと、なんとかぶつからないで、反対意見もうまく取り入れてクリアしたい、と思うタイプです。
著者プロフィール:
福里真一(ふくさと・しんいち)
ワンスカイ CMプランナー・コピーライター。1968年鎌倉生まれ。一橋大学社会学部卒業。92年電通入社。01年よりワンスカイ所属。
これまで1000本以上のテレビCMを企画・制作している。主な仕事に、吉本興業のタレント総出演で話題になったジョージア「明日があるさ」、樹木希林らの富士フイルム「フジカラーのお店」、トミー・リー・ジョーンズ主演によるサントリーBOSS「宇宙人ジョーンズ」、トヨタ自動車「こども店長」「ReBORN 信長と秀吉」「TOYOTOWN」、ENEOS「エネゴリくん」、ダイハツ「日本のどこかで」、東洋水産「マルちゃん正麺」などがある。
ACC(全日本CM放送連盟)グランプリ、TCC(東京コピーライターズクラブ)グランプリ、クリエイター・オブ・ザ・イヤー、など受賞。その暗い性格からは想像がつかない、親しみのわくCMを数多くつくりだしている。
著書に『電信柱の陰から見てるタイプの企画術』(宣伝会議)がある。
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ライターの松田然さんは、ベンチャーから大企業まで800社以上の取材・広告制作を経験。起業、フリーランス、上場企業、海外企業などのさまざまな働き方を経験し、「挑戦する人のHubになる」をテーマにこれからのライフスタイルのヒントを発信している。 - あなたの企画を“宝石”にする3つのステージ
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