チームのサイズ、大き過ぎませんか?:ビジネスチームハック
集団で協同作業を行うとき、1人ひとりが作業に投入する努力の量は、人数が増えるほど低下するという社会心理学の研究があります。社会的手抜きが発生している場合にはどうしたらいいのでしょうか?
企画が遅れがちになっていて、しかも関係者はそれを十分理解しているはずなのに、いっこうに仕事を進める気配がない。そんなときは、関係者の人数をチェックしてみるとよいかもしれません。
集団で協同作業を行うとき、1人ひとりが作業に投入する努力の量は、人数が増えるほど低下するという社会心理学の研究があります。「社会的怠惰(ソーシャルローフィング)」と呼ばれています。
社会的怠惰は、チームの人間が本当は多人数ではなくても、多人数だと思うだけで発生します。ビブ・ラタネという社会心理学者の実験によれば、個人に単独で作業させておきながら、「みんなと一緒に作業している」と思わせるだけで、個人の努力量が下がることが分かりました。しかもその人数が増えるにつれ、努力量は下がっていくのです。
ということは、社会的手抜きが発生している場合、チームの人間を減らすだけではダメで、人間が減ったチームの中に居るということを、メンバー全員に認識させる必要があるわけです。そうでないと、メンバーは相変わらずやる気を出してくれないでしょう。
チームに適当な人数は?
どのくらいの人数がチームとして最適かということに、一般的な答えはありません。プロジェクトの規模にもよるからです。ただし、社会心理学によればチームの1単位として、5人を超えたあたりから生産性は確実に落ちていくという研究結果があります。
従って、大きな組織においてはチームを細分化する必要がありそうです。20人位の集団になってしまっていたら4分割くらいするとちょうどよくなることでしょう。
筆者が小学生だったころには、こういうダウンサイズはごく当然のように行われていました。小学校で「生産性」などを意識していたはずもないですが、教室はまず確実に「班」という単位に分けられ、その人数は5〜6人でした。
チームが大きくなり過ぎると、「他人任せ」になって社会的手抜きが生じやすくなるだけではありません。自分の貢献が他人に認識されにくくなることでやる気を失うという問題も発生します。
この問題は、「綱引き」が例として挙げられます。確かに綱引きでは、自分が力を出しても出さなくても傍目からは分かりませんね。人間は社会的な動物です。承認欲求がかなり強く、人から認められるならやる気が出るものの、認識さえしてもらえないならまったく出ないという人もたくさんいます。
チームの人数が増えれば増えるほど、自分の仕事への貢献度が認識されにくくなるのはやむを得ないところがあります。そういう意味でもチームのサイズが大きくなるのはいいことではないわけです。
チームであるからがんばれる人もいる
だからといってチームのサイズが小さくなればなるほどいい、というわけでもありません。単純に1人ではできない仕事もありますが、そればかりではなく心理的な影響も無視できないのです。
それは、誰もが「自分に注目してほしい」といえるほど自信家というわけではないということです。大勢の前でたった1人でも話すことが大好きという人もいますが、たいていの人は怖じ気づいたり、緊張したりします。
大勢の中に埋没してしまって、自分の貢献に気付かれにくいことを不満に思う人もいれば、自分にだけ責任が集中しない状況に安心できる人もいます。そういう性格の人には、チームで仕事をするという状況が安心できるものなのです。
つまり適切なチームのサイズというのは、そこで働く人の性格によっても変わります。大ざっぱに言えば、目立ちたがりの人が多いなら、なるべくサイズは小さい方がいいでしょうし、そうでもない人が多いなら、多少チームのサイズが大きくなってもいいでしょう。
筆者:佐々木正悟
心理学ジャーナリスト。専門は認知心理学。1973年北海道生まれ。1997年獨協大学卒業後、ドコモサービスに派遣社員として入社。2001年アヴィラ大学心理学科に留学。同大学卒業後、2004年ネバダ州立大学リノ校・実験心理科博士課程に移籍。2005年に帰国。
著書に『なぜ、仕事が予定どおりに終わらないのか?』『先送りせずにすぐやる人に変わる方法』『クラウド時代のタスク管理の技術』などがある。
ブログ「ライフハック心理学」主宰。
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