「やりたい仕事」を選ばせれば、部下は“やる気”になるのか?:そのひとことを言う前に(2/2 ページ)
部下に積極的に仕事に取り組んでほしい――。そう思う上司は多いはず。「やりたい仕事を選ばせればいいのでは」と考える人もいるかもしれませんが、そこには意外な落とし穴が……。
相手に「自分が選んだ」と思わせることが大事
もともとAさん自身に計画(Bさんに◎◎社を担当してもらいたい)がある場合、2つのアプローチが考えられます。
まず1つはその計画をストレートに伝えること。コミットメント効果はありませんが、これが一番シンプルです。ここで忘れてはならないのが、「なぜ」Bさんに◎◎社を担当してほしいのか、その理由を添えること。「なんとなくBさん」では説得力も欠けるし、モチベーションも上がりません。Bさんに期待する役割を、相手が望む形に合わせて言うことができれば、それだけで相手のモチベーションを上げることができます。
たとえ事前に計画がある場合でも、仕事を選ばせる余地があるなら、コミットメント効果を使うことはできます。最低限押さえるべきポイントを先に決めておき、残りから選択させるというテクニックです。重要なのは、Bさんに「自分で選んだ」と思わせること。具体的な選択肢を与えることで、Bさんが選びやすくなるというメリットもあります。
成功ケース:具体的な選択肢を提示する
上司A: みんなの担当顧客を新しく割り振ろうと思うんだ。一応、最大手の△△社は私が、○○社は継続している案件があるからCさんに任せようと思ってる。残りの顧客を割り振るわけだ。
部下B: 分かりました。
A: Bさんはそうだねぇ……。技術系の知識に強いから、ここらへんはどうかな?(と3つの顧客を提示)。
B: そうですね。であれば××社を担当したいです。
A: おお。そこならきっと上手くいくと思うよ! 期待してる。
B: はい、ありがとうございます(この3つの中だと一番いけそうだし……がんばろう)
A: じゃあ次はDさんね。Dさんは調整うまいじゃない? ちょっと面倒なんだけどここらへんの顧客を担当してくれると助かるんだけどなー。
このように、仕事を任せる理由として相手の長所を挙げたり、選択肢をしっかりと提示することで、計画にある程度沿う形で、部下の納得感も高い(=コミットメント効果を引き出せる)指示ができるはずです。もちろん、いったん仕事を任せたらぐだぐだ言うのはNG。相手の自主性を刺激することが目的ですから、仕事を任せた部下を最後まで信じましょう。
人によっては、目的を達成できないことが大きなストレスになってしまうなど、必要以上にコミットメント効果に縛られることがあるかもしれません。そうなった場合の対処も忘れずに。
今回のまとめ
Q:部下の自主性を高めようと仕事を選ばせたはずが、逆にやる気を損ねてしまいました。
A:選ばせ方が中途半端だとうまくいきません。具体的な選択肢を提示し、選ばせたら「任せた!」の一言で自主性もやる気もアップするでしょう。
著者プロフィール:岩淺こまき
グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/ヒューマン・スキル講師
大手システム販売会社にて販売促進、大手IT系人材紹介会社にて人材育成、通信キャリアでの障害対応、メーカーでのマーケティングに従事。さまざまな立場でさまざまな人と仕事をし、「ヒューマン・スキルに長けている人間は得をする」と気づく。提供する側にまわりたいと、2007年より現職。IT業界を中心に、コミュニケーション・ファシリテーション・リーダーシップ、フォロワーシップ、OJT、講師養成など、年間100日以上の登壇及び、コース開発を行っている。日経BP「ITpro」で、マナーに関するクイズ形式のコラムを連載中。
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