自分らしいスピーチ キーワードは「高さ」と「速さ」:表現のプロが教えるスピーチの兵法(2/3 ページ)
話す際、自分はどんな人として見られたいと思っていますか? 親しみ深い人でしょうか? それとも活発な人でしょうか? 声の高さと話す速度を見直して変えていけば、人に与える印象を操作できるのです。
「地声」とは、例えば、仕事で使う電話に、かけてきた相手の番号が表示されないとき、あるいは表示番号に覚えがないときを思い出してください。
恐らく皆さんは、「○○社の△△でございます」と取り澄ました声で電話に出ることでしょう。そして、電話の主が同僚のAさんと分かった瞬間、「なんだAさんか」と一気に声が変わるはずです。その一気に変わった声。それがあなたの地声です。
最初の取り澄ました声は社会性を意識した取りつくろった声で、一般的に地声より高くなる人が多いです(まれに逆になるケースもあります)。その不自然に高い声からは演技性が感じられ、相手はその声の主を信頼しません。
ですから「親しみやすさ」「活動性」を選んだ人は、「○○社の△△でございます」よりは低く、「なんだAさんか」よりは高い声を出すようにしましょう。「社会的望ましさ」を選んだ人は「なんだAさんか」の低めの声がお勧めです。こうした声を出すことで、聞き手はあなたが腹をわって本音を語っているように感じ、信頼します。
次に、話す速度ですが、1分間に300文字を基準に速いか遅いかをチェックします。
アナウンサーがニュースを読むときの目安は1分間300文字です。この速度は初めての内容であっても聞き取りやすく、何か作業をしながらの「ながら聞き」をしていたとしても理解できるゆっくりとしたペースです。
「親しみやすさ」「社会的望ましさ」の人は1分間に300文字、「活動性」の人は1分間に450文字を目指すようにしましょう。
自分の話しているスピーチなどを録音し、文字に起こして数えるのが理想ですが、面倒でそこまでする人は少ないことでしょう。
私のこれまでの経験で多いのは速く話す人です。人前で話し慣れている人、ゆっくり話そうと意識している人であっても1分間400文字になるケースは珍しくありません。
そこで、テレビのニュース番組を見ながら、アナウンサーが伝える内容を後を追いかけるように口に出すなどし、1分間300文字の感覚をおさえてみましょう。
関連記事
- 印象が弱い人の言葉は“響かない”――伝わる人の“キャラづくり”とは
人に話を聞いてもらうときには「好印象を与える」ことが重要です。いくらすばらしいスピーチ原稿を用意しても、これがなければ聞き手に響きません。今回は、“聞いてもらえる人”になるためのキャラ作りを考えます。 - 「あんなこと、言わなければよかった」――不用意発言をなくす3つのポイント
「あんなことを言わなければよかった」「相手を何であんなに怒らせてしまったのだろう」――こんなコミュニケーションの失敗をしたことはありませんか。元NHKの矢野香さんの連載を通じて、「リスクを避ける話し方」を学んでいきましょう。 - なぜ、あの人のプレゼンはうまくいくのか――ポイントは“第一印象”にあり
同じ内容の話をしても、人によって説得力や影響力に差が出ることがあります。そんなとき、「世の中、不公平だ!」とぼやいて終わらせるのは未熟者がすることです。「対人認知」の心理を押さえて、状況を変えていきましょう。 - 自分の話し方を「客観的」に研究する
話し方を改善するには、自分の話が相手にどう聞こえているかを客観的に検証する必要があります。そのために有効な方法は、自分の会話を録音して聞き返すことです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.