人が育つ土壌をつくる:新人・若手担当者のための総務の仕事術(1/2 ページ)
総務担当者に必須の知識や仕事の進め方を紹介する本連載。今回は社員の特性や能力を活かす適材適所の配置と、キャリア教育について考えます。
月刊誌「企業実務」とは
「企業実務」は、経理・総務・人事部門の抱える課題を解決する月刊誌。仕事を進める上で必要な実務情報や具体的な処理の仕方を正確に、分かりやすく、タイムリーにお届けします。1962年の創刊以来、理論より実践を重んじ、“すぐに役立つ専門誌”として事務部門の業務を全面的にバックアップ。定期購読はこちら。
本記事は企業実務のコンテンツ「疑問、悩みを解消! 新人・若手担当者のための総務の仕事術」から一部抜粋・編集して掲載しています。
総務の最大の仕事は、配置、異動、教育訓練、処遇や評価のしくみを整えて、社員が働きがいを持って職業生活を送ることのできる土壌をつくることです。
なかでも、社員の特性や能力を活かす適材適所の配置と、社員が自律的に能力開発を行なうキャリア教育が重要です。
適材適所の配置の重要性について
「最後の宮大工」として有名な法隆寺の故西岡常一(にしおかつねかず)棟梁によれば、「堂塔の建立には木を買わず山を買え」「木は生育の方位のままに使え」とのことです。
この西岡家に伝わる教えに従い、西岡棟梁は薬師寺西塔の再建にあたって台湾まで建築材の調達に出向き、ひと山の木材を購入したそうです。
そして、山の西面に育った木は堂塔の西側に使い、東面に育った木は東側に使うことにより、木の成育歴、個性を活かした木組みとなり、千年はもつ建物をつくることができると語っています。これらは、まさに人間の適材適所にも通ずる考え方です。
人の能力は、「潜在能力」「保有能力」「発揮能力」の3つから構成されています。
潜在能力は、信念、価値観、性格、特性、動機、使命感からなっています。
顕在する能力でもある保有能力は、意欲と態度(規律性・責任性・積極性など)、慣れることで会得する習熟能力(課題対応力や対人対応力)、修得・習得能力(知識・技能)からなっています。
そして、潜在能力と保有能力が実際の行動として表われるのが発揮能力です。
こうみると、人の能力は実に様々な要素から構成されていることがわかります。
採用にあたって、性格検査やパーソナリティ検査を行なうのも、育った環境からくる個性を活かし、社員を働きがいのある仕事と職場に配置するためです。
キャリア教育の必要性について
次に必要となるのが「キャリア教育」です。
キャリアとは、社員本人が今まで歩いてきた人生の道とプロセスであり、これから歩こうとする道ともいえます。
自らの人生がどうありたいかを考えて、自分自身の職業人生、キャリアについて主体的に構想し、計画を立て、そして実現していくことを「キャリア・デザイン」といっています。
近年、働く人たちを取り巻く環境が大きく変化していることから、キャリアデザインの重要性が増しています。
例えば、私が会社に経理担当者として入社した当時、計算の手段はそろばんでした。しかし、技術革新は働く人たちの環境を劇的に変え、今やそろばんのスキルは求められません。もし私がそろばんに固執してPCの操作技術を習得していなかったら、かなり早い段階で職業を維持することがむずかしくなっていたはずです。
つまり、会社が適材適所に社員を配置しても、社員の側のスキルや能力が時代に適応できなければ、結果として社員は仕事を失うことになってしまうのです。
最近では、キャリアデザインにも「SWOT分析」の手法が採り入れられています。
具体的には、
- 自分の強み(Strength)と弱み(Weakness)を知り、
- 自分を取り巻く外部環境が機会(Opportunity)となるか、脅威(Threat)となるかを分析して自分の進む方向を決め、
- 自分の経験やスキル、ありたい将来像について考えながら、自らの持つ能力を活かす仕事や職務の形成を進めていくという手法です。
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