人が育つ土壌をつくる:新人・若手担当者のための総務の仕事術(2/2 ページ)
総務担当者に必須の知識や仕事の進め方を紹介する本連載。今回は社員の特性や能力を活かす適材適所の配置と、キャリア教育について考えます。
キャリアプランをつくる基本的なプロセスとは
キャリアプランをつくる際には、次の3つを明らかにする必要があります。
(1)「何が大切か」……仕事に対する姿勢と価値(自分の価値観と会社の規範や価値観との一致)
(2)「何ができるのか」……才能と能力(仕事上での過去の成功体験に基づく)
(3)「何がやりたいのか」……動機と欲求(自己診断と他者からのフィードバックでの気づき)
要するに、過去の職業体験の棚卸を通じて自己を理解し、ありたい自分の将来像を描き、その将来像に向けての目標を設定して、具体的な行動計画をつくる、ということです。
会社の事業が、経営計画という羅針盤に導かれて時代の波を乗り越えながら維持・発展するのと同じように、個人もキャリアプランを立てることで目的意識や問題意識が高まり、ありたい自分に向かって主体的に行動を起こす原動力となります。
以下、キャリアプランづくりを進める際に活用できるツールを紹介しましょう。
以前にも紹介した中央職業能力開発協会が販売する「環境変化自己診断ツール」は、個人が職業人生のそれぞれの節目で、時代の変化に対応できているかを自己点検して、今後の課題を自分で見つけるための指標となります。
この自己診断ツールによって、環境変化に対する「キャリア形成力」と「個人的傾向」を把握することができます。キャリア形成力は、次の5つの尺度で判断されます。
(1)環境変化への関心
(2)変化対応への自信
(3)未来への関心
(4)キャリア形成への志向
(5)ライフキャリアプラン
個人的傾向は、次の3つの尺度で判断されます。
(1)自己効力感
(2)オープンネス
(3)安定への志向
また、やはり同協会が販売する「キャリア開発シート」は、社員が過去の職務経歴・学習歴・資格などを6枚のワークシートに記入する作業を通じて、取得した職業能力を確認し、「今の自分」を自己評価するものです。
その過程のなかで、自分を見つめて自己理解を深め、将来にわたって働きがいがある職業生活を送るためのキャリアプランを考えられるようになっています。
独善的な自己評価ではなく、客観的に自らを見つめて5年後、10年後のありたい自分を考え、キャリア形成のための計画がプランニングできるのです。
働きがいのある職場づくりのために
「働きがい」については、1999年にILO(国際労働機関)の事務局長が掲げた概念=ディーセント・ワークがあり、「働きがいのある人間らしい仕事」と邦訳されています。
次の4点がポイントです。
(1)働く機会があり、持続可能な生計に足る収入が得られること
(2)労働三権などの働くうえでの権利が確保され、職場で発言が行いやすく、それが認められること
(3)家庭生活と職業生活が両立でき、安全な職場環境や雇用保険、医療・年金制度などのセーフティネットが確保され、自己の鍛錬もできること
(4)公正な扱い、男女平等な扱いを受けること
「人」を扱う総務は、この概念を自社の働きがいのある職場づくりに活かすとよいでしょう。
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