CATVインターネット完全導入ガイド(5/6)
集合住宅の問題

 集合住宅では,電話回線は,建物の決められた部分から建物内へ引き込まれ,共有部分にあらかじめ敷設されている配線を通って,各部屋につながる。敷設済みの配線は,戸数より多くの本数が用意されているため,複数の回線を引いたり,OCNエコノミーのような専用線を引いたりすることも可能だ。

 ところが,この配線は電話回線用で,CATVでは利用できない。このため,集合住宅の共有部分に,CATVで利用する同軸ケーブルを敷設する工事が必要となる。ある程度,契約の見込みがある場合は,CATV事業者側が工事費用を負担してくれる場合もあるが,いずれにせよ,まず,集合住宅の持ち主・大家の許可が必要となる。加入者増加に力を入れているCATV事業者の場合,事業者に頼めば,持ち主・大家と交渉してくれるところもある。小規模な集合住宅の場合は,自分で大家と相談し,事業者の用意した「同意書」に記入してもらうことになる。

 また,既にCATVのケーブルが敷設されている集合住宅でも,かなり前に敷設されたものは,テレビ放送を下り方向に流すだけで,インターネット接続に使えないことがある。このような場合,上り方向でも通信できるように「双方向化」工事を行う必要がある。

実は光の部分も

 各加入宅を同軸ケーブルを使ってバス型に配線するCATV網だが,各地域のケーブルが集まる幹線では,最近では,同軸ケーブルではなく,より大容量な光ファイバーが使用されることが多い。いわゆるHFC(Hybrid Fiber Coaxial)だ。光ファイバーは大容量だが,加入宅一戸ずつに引き込むのは,なかなか大変である。CATVのケーブル網は,加入宅への配線の部分に同軸ケーブルを使って引き込みしやすくした,一種の光ファイバー網と見なすこともできるのだ。

CATVの課題

 さて,技術的には,なかなか“イケてる”CATVだが,最大の問題は,事業者に莫大な設備投資を強いるという点だ。自前の同軸ケーブル・光ファイバー混在網を構築しないといけないため,大規模なCATV事業者でも,かなりの赤字をだしている場合があり,なかなか提供エリアが広がっていかないのである。

 さらに,膨大な投資が必要ということは,既に別の事業者がサービスを提供し,開拓し尽くしたエリアに,わざわざ新規参入してくる事業者はいないということである。このため,事業者間での直接的な競争はなく,提供されるサービス内容は速度も含め,事業者によって差が大きい。ほかのブロードバンド回線とCATVインターネットを比較する場合は,自分の地域で受けることが可能なサービスについて,内容をよく確認して欲しい。

 このほか,収入を少しでも増加させようと,細かい制約を課している業者もある。例えば,ルータ使用の禁止である。CATVのテレビ放送では,ホームターミナル(=テレビ)の台数ごとに課金しているという背景もあり,インターネット接続に関しても,PCの台数で課金しようと考えたのだろうか。

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[吉川敦,ITmedia]

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